第58話「両者」
『ここでタイムアップ!!
南東京高校が6対2で北川学園に勝利!!』
<南東京高校サイド>
結果ほどの余裕はなかった。
相沢を中心としたサッカーが北川学園のサッカーになっていたならば
まったく違っていただろう。
それに長瀬というコーチのほうがよっぽど監督に見えた。
まだまだ発展途上だった北川学園になんとか勝てたって感じか。
「監督」
水樹が声をかけてくる。
「よかったんですかね」
相沢への対応を言ってきた。
「当たり前だ。
彼がいなくなればそれまでのチームだったんだから誰でもそうする。
うちで言えばお前がいなくなることと同様だ。」
勝つためにできることはする。
「じゃあ、みんな集合してくれ」
クールダウンを終えた選手たちに声をかける鳥海。
「明日1日オフにする。
ゆっくり休んでくれ」
選手たちがあからさまに喜ぶ。
「来週からは1次2次と本選が始まる。
しっかりリフレッシュしてくれ」
「はい!!!」
北川学園に勝利した南東京高校はHグループを優勝し、
本選へ進出した。
<北川学園サイド>
「長瀬」
低くどもった声がベンチに響く。
「はい」
結果が全ての世界。
長瀬はこれからのことを甘んじて受け入れようとしていた。
「負けたな」
鋭い眼光で長瀬を見る北沢。
「すいません。」
素直に頭を下げる。
「私が移籍するのは知っているな」
まだ長瀬しか知らない情報
「はい」
「おまえは私のことをどう思っているかは知らないが、
このチームの未来について考えてはいた。
実際に後任の選出を任されていたのでな。」
それは北沢しか知らないこと。
「近くにいい指導者がいたことに今日気がついたよ。
相沢はあんなにいい選手だったんだな。」
北沢の顔が急に優しくなった。
「これからはお前が北川学園のサッカーを作っていくんだぞ。
長瀬監督」
手を差し出す北沢。
それに応える長瀬。
「ありがとうございます。
北沢監督の後任として恥じないように頑張ります。」
北川学園の引継ぎはスムーズに行われ、相沢を中心としたサッカーは
冬の選手権東京予選において台風の目になることは言うまでもなかった。
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