表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Doubt common sense ~名選手が必ずしも名監督とは限らない~  作者: ぷやっさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/72

第5話「言語化」

キーンコーンカーンコーン。

午前の授業終了のベルが鳴る。

「昨日は考えすぎてあんまり寝れなかったな……」

窓の外をぼんやり眺めながら、思わずつぶやいた。

胸の奥がずっとざわついている。

昨日、鳥海監督に言われた“課題”が頭から離れない。

「よぉ」

隣の席のクラスメイトが声をかけてきた。

「なんか元気ないな」

やっぱり、顔に出てるらしい。

「そんなことはないんだけどな。

ちょっと昨日、新しく来た監督から出た課題が難しくて」

「どんな課題が出たんだ?」

そう聞かれ、俺は昨日の出来事を思い出した。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

■ 昨日の練習後 ― 鳥海監督の“衝撃の課題”

「いきなり言われて驚いていると思う。

少し説明をしたいから聞いてくれ」

鳥海監督の声は落ち着いていたが、

その言葉の一つひとつが胸に刺さるようだった。

俺は一言も聞き漏らすまいと、息を呑んでいた。

「言語化というのは、起きた事象や感覚を言葉で説明することだと認識してほしい。

サッカーは足を使うスポーツだ。

だからミスは圧倒的に多い。

“ミスをするな”なんてナンセンスだ」

監督の言葉は、これまでの価値観をひっくり返すようだった。

「トラップ一つでも、なぜミスしたのかを考える必要がある。

足の接地面が悪かったのか、最後までボールを見ていなかったのか、

相手のプレッシャーが強かったのか。

原因はいくらでもある。

その思考のプロセスを常に意識してほしい。

それが状況判断の早さにつながる」

俺たちは息を呑んで聞いていた。

“考えるサッカー”なんて、初めて聞いた。

「その第一ステップとして、自分の長所と短所を言語化して説明してほしい。

俺もみんなの長所と短所を把握して、答え合わせをしたいと思っている。

期限は一週間後。

各自面談を行うから、それまでにしっかり自分と向き合ってくれ」

サブ組全体がざわついた。

もちろん俺も例外じゃない。

“自分の長所と短所を言語化する?”

そんなこと、考えたこともなかった。

その時――

「監督、生意気な言い方ですけど言ってもいいですか」

後ろから声が上がった。

「いいぞ」

「やっぱ、監督面白いですね。

そんなアプローチで教わったことないですよ。

早速、自分と向き合ってみます」

声の主は高橋だった。

俺は思った。

――こいつ、本当に同い年か?

落ち着き、理解力、覚悟。

全部が俺より一歩も二歩も先を行っている。

「よし!」

気づけば声が出ていた。

「監督、期待に応えられるように頑張ってみます!」

俺の言葉に続くように、他のメンバーも声を上げる。

「よろしくお願いします!」

「期待しているぞ」

鳥海監督の笑顔とともに、その日の練習は終了した。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

■ 翌日 ― 宮本の葛藤

「という感じで家に帰るまではテンション高かったんだけど……

いざ考えてみると難しいことに気づいて、あまり寝れなかったってわけだな」

俺は頭をかきながら答えた。

「サッカーって自由な感じがするよな」

クラスメイトが言う。

「あ、そういえばお前、野球部だったよな。

野球はどんな感じなんだ?」

興味本位で聞いてみた。

「野球は結構きっちり決まってるぞ。

どこに打球が飛んだら、どのポジションがどこに動くか。

小さいころから“なぜそこに動くのか”を考えてきたし、理由も説明できる。

そういう意味では、お前らの課題は、俺たちがずっとやってきたことなのかもな」

そう言って、友達に呼ばれたクラスメイトは教室を出ていった。

「……確かに」

俺は思わずつぶやいた。

サッカーは動き回るスポーツだ。

“なぜそこに動くのか”なんて考えたこともなかった。

ましてや、その理由を説明するなんて。

ただボールを追いかけていただけだった。

胸の奥がじわりと熱くなる。

「とはいっても、やるしかないよな。

まずは長所から考えてみるか」

少し前向きになって、俺は昼食を取り出した。

――鳥海監督の課題は、俺のサッカー人生を変えるかもしれない。

そんな予感がしていた。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ