第49話「結果を出す奴が偉い?」
先ほどのチャンスもファールでつぶされた南東京高校。
なかなか同点にすることができないまま
残り10分を迎える。
南東京高校はとてもいいサッカーをしている。
後ろからのビルドアップも上手くいっている。
この会場にいる観衆は、どっちが強豪校か見間違えるぐらいだ。
逆に北川学園はチームがバラバラで上手くいっていない。
川辺と佐治の二人がサッカーをして周りは息をひそめているようだ。
しかし、スコアは北川学園の1対0。
この事実が少しずつ南東京高校イレブンを焦らせる。
見えない焦りがとうとう形に現れてしまう。
「佐治頼むぞ」
今日のお決まりパターンである川辺から佐治へのロングパス。
もはやワンパターンと言ってもいいこの形に南東京高校は完ぺきに対応していた。
していたがゆえにすこし油断してしまう。
早く攻撃にうつりたいという気持ちもプラスして。
佐治が左サイド深くでドリブルを開始。
対応する宮本は早くボールを取りたい為に、先に足を出してしまう。
そこを見逃さない佐治はダブルタッチで宮本をかわし、
今日初めてファイナルサードへ侵入する。
慌てた南東京高校DF陣は体を投げ出して対応。
佐治のシュートを間一髪体に当ててCKへと逃げる。
なんだかんだ北川学園初めてのCK。
キッカー相沢。
もちろんターゲットは川辺だろう。
マークに付くのは森山だ。
蹴る前からポジション取りが過熱する二人。
「よし来い!!」
川辺が走りながらニアサイドに入ってくる。
それに負けじと森山がしっかりついていく。
キッカーの相沢は川辺をめがけてキックする。
「あ、やべ」
川辺へめがけたボールはニアサイドどころか、ファーサイドにいる選手を超えていった。
南東京高校DF陣はそのボールの軌道を見て一瞬集中を切らす。
「またこっち来た」
そこになぜか走りこんできた右SBの軽井沢。
ペナルティエリアの角でボールの落下地点に入るとそのままダイレクトで折り返す。
サイドからサイドへボールを振られた形になった南東京高校は、
相手のマークを外してしまう。
なんとか川辺のマークは森山のその身体能力で対応はできていたが、
もう一人が完全にノーマークになってしまった。
「やるじゃん」
軽井沢のクロスを蹴りこむのはもう一人のキーマン佐治。
この距離を外す選手ではない。
GK高橋は一歩も動けず、北川学園が追加点。
同点に追いつくどころか2点目を奪われてしまう南東京高校。
前半30分のことだった。
『前半30分、なんと北川学園に追加だ~!!
決めたのは北川学園の中心佐治選手!!!』
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「長瀬、やっぱり結果を出す奴が偉いんだよ」
北沢は勝ち誇ったようにコーチである長瀬に言い放つ。
「そうですね。確かにこれでたいぶラクになりますね。」
肯定しか許されない雰囲気。
追加点が決まってもどこかチームに一体感がない原因でもある。
「うちは川辺と佐治がいる限りこんなところでは負けるはずがない」
盲目的な信頼。
「だといいですね。」
長瀬はそう言うしかなかった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「やられましたね」
長峰にもさすがに焦りの顔が見える。
「プロでもあの揺さぶりをされたらマークを見逃すからな」
よく練られたセットプレイだった。
北川学園イレブンの驚いた顔を見ていなければ。
「結果は完ぺきなプレー。
でもやっている選手たちは自分たちでも驚いている。」
ますます深まる謎。
着実に南東京高校に敗北が近づいている。
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