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第48話「ぼんやりと」

鳥海は頭の中を整理していた。

現スコアは0対1。

やっているサッカーはこちらのほうが圧倒的に良い。

同点は時間の問題と感じている。


でもここぞとばかりにFWがオフサイドにかかり、チャンスは潰れる。

相手は何かをやってきているはずだが、その様子が見えない。


しかも相手は目論見通りに勝っている雰囲気ではない。

バラバラに見える。

中心の二人と下級生の間に溝がある。

下級生がどんどん委縮している。


でも前半ももう残り15分。

結局うちが負けている状況が変わらない。


「長峰さん」

うちのマネージャーを呼ぶ。


「はい」


「今水樹を囮にしてるけど、やっぱりあいつに頼ろうと思うんだけどいいかな?」

なるべくみんなで解決したかったが。


「もちろんです。裕馬はチームが勝つことが一番って考えますから」

自分のことのように返事してくる。


「わかった」

早速水樹を呼ぶ。


鳥海のそばまで水樹が寄ってくる。


「監督何ですか?」


「次のチャンスで周りを囮に自分でドリブルを仕掛けて、

点を取ってきてほしい。

そろそろ同点にしておかないと嫌な予感がする。」

なんとなくそう思っている。


「わかりました。やってみます。」

さわやかな笑顔で水樹は戻っていった。



宮本が佐治からボールを奪取し、いつも通り水樹へ渡る。

今日の試合で違うのは、ここでいつもは佐藤へすぐパスを出すところだが

自分でドリブルを開始する。


センターサークルからぐんぐんスピードをあげる。

マークに付いていた川辺は、いままでの水樹の動きにあわせていたため

まったくついていけなかった。


「DFそいつを止めろ!!」

川辺が後ろから叫ぶ。


北川学園のDFラインはこう思った。

そんな簡単に振り切られているのに・・・


「くそ~」

でもしょうがない。やらなきゃ怒られる。

北川学園DFラインは、はっきりバランスが崩れているのがわかる。

水樹しか見えていない。


「これで同点だな」

ベンチから見ていて鳥海はそう感じた。

水樹は俺の本当の意図がわかっている。

何も全員を抜いてこいなんて言っていない。


今完全にCF加藤が空いている。

次のDFをかわせばラストパスを出せる。


水樹もわかっているようだ。


「止められるもんなら止めてみろ」

一目散に飛び出してきた相手CBをあっさりかわす。


加藤と目を合わす水樹。


「あとは頼むぞ」

ていねいにパスを出すだけ。


「ドン」

水樹が何かに押される。

バランスをくずし、その場に倒れる。


センターサークルとペナルティエリアの間ぐらいだ。


「ピィー」

すかさず主審が笛を鳴らす。


「いてぇ」

水樹は、また川辺に倒されたのかと思った。


「すいません」

そばで一緒に倒れている選手が声をかけてきた。


声の主は、さんざん川辺に怒られていた相沢だった。

どうやら足をもたつかせ、倒れかかってしまったらしい。


「君、わざとじゃないのはわかるけど危険だよ。」

主審はそう相沢に声をかけるとイエローカードを提示した。


「はい、すいません。」

相沢はそう主審に謝ると水樹に手を差し伸べる。


「すいません、怪我はなかったですか?」


「大丈夫。」

水樹はそう答えると手を取り立ち上がる。


「相沢何してんだよ」

後ろから怒号がとぶ。


やれやれと川辺の方にむかっていく相沢。

また怒られにいった。


「水樹大丈夫か?」

佐藤が声をかける。


「体は大丈夫だけど、絶好のチャンスが潰れたのがいたいな」

あともう少しだった。


「相手のボランチが俺を気にしないで真っ先に水樹を追いかけに行ったから、

よっぽど川辺が怖いんだな。すごい必死だったし。」

佐藤から見た感想を伝える。


「まさかな」

なんか見えたような気がしたがまだぼやけている。


「とにかく早く同点に追いつこうぜ」

佐藤はそう言うと前線に上がっていった。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


この試合初めて落胆の顔をした鳥海。

水樹のドリブル突破も加藤のポジショニングも完ぺきだった。


「タクティカルファウル」

マネージャーの長峰がつぶやく。


「まさか。相手のボランチはこけただけに見えたぞ」

事実を言う鳥海。


「もちろんそうですよ。私から見てもそう見えましたもん。」

何を当たり前のことをという顔をする


「でもそれを除くと絶妙なファールですよね。」


「確かに・・・」

今日一番の失点につながるシーンだったはず。


鳥海も少し見えないものが見え始めていた。


しかし、サッカーはそんな時こそ気をつけなければいけないスポーツだった。

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