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第47話「雰囲気の矛盾」

前半15分に北川学園が先制。

残り時間はまだまだある。


南東京高校はやるサッカーを変えずに戦う。


水樹と川辺のマッチアップは一進一退。

宮本と佐治は宮本が優勢であった。


この試合は、キープレイヤー以外の働きが勝負を分けそうな雰囲気が出ていた。


それでも川辺と佐治にボールを集める北川学園。

水樹と宮本にボールを集めなくても機能している南東京高校。


南東京高校の同点は時間の問題に思えた。

実際にグラウンドでも雰囲気は対象だった。


「佐藤」

柏木からパスが入る。


今南東京高校の攻撃の中心は佐藤だ。

水樹とは違い相手DFを何枚も抜くことはできないが、パスセンスは一級品だ。


「加藤頼むぞ」

裏に抜け出すCF加藤にスルーパスを出す。


絶妙なタイミングだ。

北川学園DF陣は完全に裏を取られている。


「ピィー」

主審の右手が上がる。


「オフサイド」

副審の旗が上がっている。


「う~ん」

加藤が首をひねる。


「確かにDFラインを見ていたんだけど」

加藤がオフサイドになるのはなかなかめずらしい。

それを知っている南東京高校メンバーもとまどいを隠せない。


もう今回で5回目だった。


「加藤、タイミングが遅いか?」

佐藤が加藤に声をかける。


「いやそんなことはない。

相手CBを見て走っているから問題ないはずだ。」


「そうか、じゃあ気にせずいこう」

佐藤も加藤もいったん棚上げにして自分のポジションに戻っていった。


「鳥海監督」

マネージャーの長峰が声をかけてくる。


「わかっている。何かしているな」

鳥海も感じていた。


「加藤くんがあんなにオフサイドにかかるのを見たことありません。

でも相手DFラインに不審な動きはなかったです。

むしろ相手SBのめちゃくちゃな動きが目立つぐらいで。」


「そうなんだよな。

うちの動きにつられてスペース空けまくってるもんな」

何かはしている。

でもそれが何かはまだわからない。


「それにしても相手は先制している雰囲気ではないな。」

何かしているという違和感と相手の雰囲気があっていないのもまたこちらを混乱させる。



「おまえら何してるんだ。裏取られまくってるだろ」

今日何度目かの怒号がとぶ。


声の主は川辺だ。


「相沢。おまえも相手に自由にパスを出させすぎだ。」

同じボランチの相沢が特に言われている。


北川学園は川辺と佐治以外は下級生だ。

この二人の精神状態がチーム状態に直結している。


今はまさに最悪だ。

周りの下級生が委縮しまくっている。


「川辺それぐらいにしておけ」

もはや声をかけた佐治ぐらいにしか抑えられなかった。


「おまえら頼むぜ」

そう言い放つとポジションに戻っていった。


「監督」

北川学園ベンチもこの雰囲気は伝わっていた。


「なんだ。長瀬コーチ」

鋭い眼光で声がする方を向く北川学園の監督である北沢。


「いくらなんでも川辺の態度はやりすぎです。

相手の攻撃を防げない原因にあいつも入っているはずです。」

サッカーはチームスポーツだと言いたげだな。


「長瀬よ、川辺は相手のOMFを抑えてるじゃないか。

確かあいつをキーマンにあげたのはおまえだよな。

十分な働きだと思うが。」


「確かに川辺のマンマークは機能しています。」

表面上は・・・

喉まででかかるこの言葉をぐっと飲みこむ長瀬。


「じゃああいつのせいではないだろ」

めんどくさそうに言い放つとそのままグラウンドへ視線を戻す。


「あんたがそんなんだから、川辺と佐治はつけあがるんだよ」

決して聞こえない声量で吐き捨てるしかなかった。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


北沢 肇 48歳

強豪北川学園を指揮する監督。

今年で就任20年目の大ベテラン。

昨年の不祥事は行き過ぎた指導による体罰。

その結果、半年の謹慎となり復帰。

最上級生の川辺と佐治のみ残ったため、この二人への信頼は厚い。


長瀬 敦 30歳

北川学園コーチ。

就任1年目。

昨年の不祥事後の新チームからチームに加わる。

下級生の兄貴分的な存在としてチームを支える。

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