第44話「片鱗」
トータルスコア10対0
決して気持ちが折れることはなかった南東京工業。
その姿勢がなおさら10失点も喫するようではなかった。
純粋に南東京高校が強かった。
試合展開は一方的だった。
水樹を中心に攻撃のスイッチを入れる。
彼がボールを持つと全員が約束事を持って動き始める。
CFの加藤はまずは、裏抜けを開始する。
そこに水樹からの一発のスルーパス。
これが2点目だった。
得点以外にもポストプレーをこなし、ボール回しにも参加。
自ら仕掛けるCFではないが、リンクマンとして抜群な働きを見せる。
3点目は、そんな加藤が空けたスペースに走りこんだ左MF佐々木の得点だ。
オフザボールの動きが悪い点が改善された。
CFにいたときは、オフサイドラインのギリギリから走り始めていた為
佐々木はいつもオフサイドにひっかかっていた。
しかしMFのポジションからの走り出しは適切な助走を与え、
相手DFは誰一人ついてこられないスピードで裏抜けを可能にした。
そこに水樹からのスルーパス。
問題なくゴールを決める。
右MFにポジション変更した佐藤は、その正確なクロスを武器に
4点目と5点目を演出。
アーリークロスを低い弾道でCFの加藤に合わせる。
これを加藤はなんなくワンタッチで決める。
ディフェンスが加藤につられるようになると、
それを囮に佐々木へハイクロスを上げる。
2アシスト目を記録する。
後半は、水樹に変え佐藤をOMFに変更。
DMFの玉木のロングシュート
OMF佐藤のフリーキック
左SB橋本のオーバーラップからのDMF宮本のゴール。
CKからCB森山のヘディング。
『最後はロスタイムに途中から入った斎藤のボレーシュートで10点目。
南東京高校が初戦を最高の形で終えました~!!』
後方からのビルドアップ。
適切なポジショニングで南東京工業にほとんどボールを触らせない。
ボールを失っても前からのハイプレスの同サイド圧縮。
ボールポゼッションは82対18。
南東京工業シュート0。
まさに何も出来なかった南東京工業。
彼らはこれより数時間の間。
そんなに強くない南東京高校に大差で敗れた弱小高校のレッテルをはられるが、
それもすぐに間違いだと証明される。
北川学園戦まで残り数時間。
南東京工業が弱かった結果の10失点ではなく、
相手が悪かったことに周りが気づくまであともう少しの辛抱だった。
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