第37話「レギュラー組VSサブ組⑦」
<CF加藤視点>
数日前、鳥海監督からレギュラー組大黒柱の森山の弱点が伝えられる。
言われてみればとも思わなくなかったが、
その圧倒的なフィジカルのおかげで
大事には至らなかったらしい。
もちろんサブ組は遠慮なくやらせてもらう。
ここから攻撃陣は、前からのプレスと並行して
森山の弱点を突く練習が始まった。
後半開始とともに森山の弱点がまだ弱点であるかの確認作業を行う。
OMFの佐藤とアイコンタクトをし、サイドからのクロスを増やす。
佐藤はボールを受けると斎藤もしくは山下へ早めにパスを送る。
レギュラー組もワントップの俺が相手な為、
サイドを上げることへのチェックは厳しくない。
クロスを中ではじけばいいそんな守備陣形だった。
何本かサイドからのクロスがあがり、案の定森山にクリアされる。
レギュラー組守備陣からはなんなく対応したように見えたことだろう。
「加藤」
佐藤から声をかけられる。
「どうだった?」
弱点がどうだったか気になるようだ。
「鳥海監督の言うとおりだ。
まったく直ってない。
次のクロスは速いスピードのボールをニアサイドに頼む。
今までゆっくりとしたボールのクロスに慣れた分より対応できないはすだからな。」
「了解。斎藤と山下に伝えておく」
そう言うと佐藤は両サイドMFに伝えにいった。
準備が整ったサブ組はこの後3点目をゲットする。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
レギュラー組の怒涛の反撃をしっかり守備陣が防いでいる中で単発でのサブ組の攻撃。
そんな風に見えていた試合展開だったが、サブ組は単発な攻撃の中でしっかり準備していた。
サブ組がボールを奪い、佐藤がキープをする。
少しボールを運んだ以外は後半何度も繰り返された攻撃と一緒である。
今回は右MFの斎藤へ佐藤からのパス。
レギュラー組はまたかと思いながら守備陣形を整える。
ただ、後半も終盤に差し掛かっている。
その分焦りは増していた。
「ここで奪ったらカウンターだ。もう時間がないぞ。」
レギュラー組キャプテンの森山から激がとぶ。
斎藤から今までと違う質のクロスがあがる。
速いボールがDFとGKの間に入ってきた。
森山は一瞬驚くが、すぐGKの位置を確認し
GKが直接キャッチをできないことを察する。
悩む森山。
簡単にクリアすればコーナーキック。
ボールをフィールドの中に残す場合、セカンドボールが中途半端に相手にわたると
絶好なシュートチャンスになりかねない。
ただ、逆転するにはリスクを取らないと。
そう判断した森山はMF陣にセカンドボールを拾うように声をかける。
「MF陣クリアを拾ってくれ」
後は迫りくるこのクロスをクリアするだけだ。
ボールが森山の少し前でバウンドする。
森山はこのバウンドするボールに合わせて体を捻りながら、左足でクリアしようとする。
すると自分の右側の視界から選手が一人飛び出してきた。
飛び出した選手は、森山がボールを触る前に
バウンドしたボールを右足で振りぬき、レギュラー組のゴールに突き刺した。
『後半18分、サブ組加藤のハーフボレーが決まり3点目!!
試合を決定づけるゴールが決まりました!!』
「森山」
失点しうなだれる森山に声がかかる。
「おまえフィジカルが凄いだけで、全然なってねぇな守備」
声の主はゴールを決めた加藤だった。
「早く自分の弱点に気づかないと残り時間少ないがまだまだ点取れそうだわ。」
そう言って立ち去る加藤。
森山は加藤の言葉があまり入ってきていなかった。
なぜだ。
クロスが入る前に加藤の位置は確認していた。
俺より先にボールを触れるわけがない。
この失点で事実上レギュラー組の負けが決まった。
後半残りロスタイム。
右MF斎藤からこの試合10本目の最後のクロスは
敵陣深くからのマイナスボールだった。
自分の弱点がわからない森山はこのボールを一生懸命クリアしようと動き始める。
「今度こそクリアする」
マイナスに入ってきたボールをクリアするために足を出そうとする森山。
「その守備じゃ先に触れないぞ」
またしても加藤が足を出そうとする森山が触れる前に体をしっかり入れる。
「お前はボールばかり見ているな。
自分だけでサッカーをやっているそれがお前の最大の欠点だ。」
加藤がこのボールを右足で振りぬく動作を始める。
「もう簡単に決めさせるか!!」
森山が決死の思いで体ごと投げ出す。
その驚異的なフィジカルに
「やっぱりおまえは凄いな」
ぼそっと加藤がつぶやく。
加藤はそのボールを振りぬくことはなかった。
そのまま触らずに後方へボールは転がっていく。
ちょうどペナルティエリアの真ん中へ転がったボールの前に
走りこむサブ組キャプテン宮本。
「森山、
鳥海監督のもと、もう一回一緒にやろう!!」
そう言い放ち右足を振りぬく。
サブ組の4点目。
そしてどちらが正しかったか。
残酷にもはっきりした瞬間だった。
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