第35話「レギュラー組VSサブ組⑤」
『ここで前半終了~
なんとサブ組が2点リードで前半を折り返しました。
個々のスキルを考えるとまさかの展開だと思いますが、
鳥海監督、前半を振りかえっていただけますか。』
『前半の印象としては、サブ組はしっかり準備をしてきたことを実行してましたね。
反対にレギュラー組は、やはり油断が見え早い時間帯での失点にバタバタした印象を受けました』
『ありがとうございます。
ここからはサブ組監督として、前半のゲームプランを教えていただけますか。』
『レギュラー組とのスキルの差はやはりありますから、
受けて守備をしてしまうと厳しいですね。なので前からの守備を選択しました。
具体的には関東大瑞穂を参考にボールの取りどころをはっきりさせました。』
『確かに守備からの攻撃が上手くはまった印象を実況からも感じました。
では、後半の見どころをお願いします。』
『サブ組は特に変える必要はないので、
レギュラー組がどう変更してくるか楽しみにしたいと思います。』
『はたしてレギュラー組は追いつくことができるのか。
後半開始まであと少しです。』
2点リードに成功したサブ組。
ベンチメンバーも含めて雰囲気は最高だった。
「監督が言った通り。面白いぐらい上手くいったな。」
キャプテンの宮本がメンバーに話しかける。
鈴木と柏木が頷く。
FW佐々木の弱点。
それは、動き出しがすべてDFの視野に入った状態であるということだった。
どんなに早くても自分の視野で動いてくるのであれば対応も可能だ。
ただ、それでも佐々木は早かった。
実は鈴木はわかっていても何度かやられそうだった。
やられなかった要因は、2点あった。
1点目は、水樹がいないことで、
パス出しのタイミングが2テンポぐらい遅く、追いつくことが可能だった。
2点目は、佐々木が動き出すタイミングで鈴木はわざと体をぶつけて、
動き出しを遅らせていた。
この2点は監督から事前に言われていて対策していたことだった。
宮本の話が続く。
「後半も守備は前から行こう。
ここで受けにまわったら、逆にレギュラー組を助けることになると思う。」
全員が宮本の話をしっかり聞いている。
「攻撃は監督に言われた通り、これから森山を狙う。
頼むぞ。佐藤、加藤」
「まかせろ」
佐藤が返事をする。
「玉木、佐々木の弱点は監督の分析通り。次は森山だ。
レギュラー組自慢のセンターラインを崩壊させてやろう。
後半もいくぞ!!」
宮本がそう言うと、サブ組のボルテージは最高潮に達する。
絶対に手は抜かない。徹底的に最後まで攻める。
サブ組に慢心はない。
対照的なのがレギュラー組ベンチだ。
雰囲気は最悪。
お互いを罵りあっていた。
攻撃陣は、守備陣のビルドアップでの失点を。
守備陣は、チャンスを作れないことを。
そんな雰囲気の中、キャプテンの森山が口を開く。
「どっちもうるせ~よ」
全員がものすごい顔で森山を見る。
「2点返せばいいだけだろ。
守備陣はもう失点はしない。前半だって崩されたわけじゃないんだからな。」
「玉木」
副キャプテンを呼ぶ。
「どんな対策をしてきているかわからないが、
おまえのところが取りどころと考えているのは嫌でもわかる。
でもおまえならなんとかするよな。」
「あたりまえだ」
玉木は二度と取られないとでも言うような態度をしている。
「佐々木」
攻撃の要を呼ぶ
「いくらでも外せ。
ただ、最終的に3点取ってこい。
わかったな。」
「もちろんです。」
佐々木も言われるまでもない顔をしていた。
「俺らセンターラインは、絶対に負けてはいけない。
そんな姿を見てみんながついてくる。
全国目指すんだろ。
後半は逆転するぞ!!」
レギュラー組の最悪の雰囲気を
キャプテン森山の圧倒的なプライドの高さでかき消す。
自慢のセンターラインの躍動が後半のレギュラー組の運命を決める。
もう慢心はない。負けたくない気持ちはサブ組の比ではない。
レギュラー組でいるプライドが後半サブ組に襲い掛かる。
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