第33話「レギュラー組VSサブ組③」
『あっという間の先制点だ~
前半30秒、サブ組加藤が左スミにシュートを決めた!!』
「やられたな」
森山は天を仰ぎながらそうつぶやいた。
関東大瑞穂がやっていたプレッシングにまんまとハマった。
どれだけ気をつけていても中々気を引き締めるのは難しかった。
「さすがに林がすぐボールを外に蹴って捨てるって判断は難しいよな。
しかもサブ組相手に」
玉木が近寄ってきて、失点場面を振り返ってきた。
「そうだな」
相手が強豪であればあそこまでハマったらボールを捨てる判断ができたかもしれない。
でもサブ組が相手であれば、セーフティファーストは難しい。
むしろそこを狙われたといってもおかしくない。
「やられたものはしょうがない。
気を取り直していくぞ!!」
森山が声を張り上げてレギュラー組を鼓舞する。
「おう!!」
もちろんレギュラー組は黙っていない。
『鳥海監督、まさにサブ組の狙いがハマったように見えましたが』
『そうですね。やはりレギュラー組がサブ組相手にいきなり集中力を
MAXにすることは難しかったみたいですね。』
こんなに簡単にハマるとは思わなかった。
サブ組全員が感じたことだ。
関東大瑞穂との練習試合、自分たちはSBが低い位置を取らず、
ボランチ付近まで中にポジショニングを取ることでプレスを回避して先制点を奪う。
今回はレギュラー組がプレスに対応できずにカウンターから先制点を奪う。
同じ局面でも得た結果はどちらもサブ組。
違いは全員わかっている。
「宮本、やっぱり監督が代わるってこうも違うんだな」
佐藤がサブ組全員の意見を代弁するかのように声をかけてきた。
「そうだな。
はっきり言ってもうレギュラー組に負ける気しねぇ~よ。
だってこれ以外にも俺らは戦術をさずかってるんだからな。」
サブ組だってこれで手を抜くつもりはない。
レギュラー組のキックオフで再開。
レギュラー組のパススピードがあきらかに違う。
しかし、各々のポジション取りに約束事がないため、上手くボールが前に進まない。
ボランチの玉木からのショートパスで攻撃のスイッチが入ることぐらいしかないレギュラー組。
もちろんそれをいつまでも許すサブ組ではない。
「玉木、また頼むぞ」
CBからのボールを受け取りに行く玉木。
首を振り自分の後方の敵を確認する。
玉木の長所は、プレス耐性が強い点。
事前に後方を確認し、前をむく方向を的確に判断。
後ろから体をぶつけられても体勢がゆらがないフィジカル。
ボールもしっかり足元に止められる。
レギュラー組は玉木がボールを運ぶことで各々が動き出す。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
<宮本視点>
レギュラー組との紅白戦まで残りわずか。
鳥海監督から、最後の弱点が伝えられる。
「レギュラー組の個々のスキルはサブ組に比べて高い。
しかし、彼らは使いどころをわかっていない。
3点目の弱点は、個人戦術が著しく低い。」
「レギュラー組は玉木を中心に前に運ぶ戦術しかない。
周りからのサポートはほぼない。あったとしても場当たりてきだ。」
「そしてこの玉木を中心にしたビルドアップの最大の欠点は、
その玉木の戦術理解度の低さだ。」
ここで俺は疑問に思ったことを口に出した。
「監督、とはいっても玉木からボールを取るのは至難ですよ。」
実際にわかっていてもボールを取れずに前に運ばれた経験しかない。
「何も玉木からボールを取れとは言っていない。あいつのプレス耐性は相当なものだ。
でもな、ボールを前に運ばせなかったり、縦パスを防ぐことは簡単だ。
玉木にボールが入ってもリズムを作らさなければいい。」
つまり何をすればいいのか、まったくわからない。
横を見てもサブ組全員きょとんとしている。
「答えをまず伝えてもわからないだろう。
トレーニングを通して理解してもらう。
ただ、玉木の戦術理解の低さが引き起こす事態は・・・」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
またしても宮本が合図を送る。
「加藤、佐藤、斎藤、山下頼むぞ」
森山からボールを受け取る際に首を振って玉木が確認した景色は、
広いスペースが空いている左側からCFの加藤がプレスをかけに来ている。
追いつかれる前にターンすることができると感じて前をむく玉木。
いつもなら広いスペースが見えて、空いているスペースにドリブル、
もしくは縦パスを前線に入れることでスイッチを入れられる。
しかし、今は
「スペースがない」
前をむけた玉木が驚愕する。
空いているスペースにはもちろんCF加藤が寄ってきている。
よって狭いスペースにボールを運ぶしかない。
1m・2mとボールを前に運ぶが、右MFの斎藤が左サイドのMFへのパスコースを切りながら、
徐々に近づいてくる。
縦パスをいれようにもすべてのパスコースが相手DFによって後ろからぴったりマークされている。
「くそ~」
戻してやり直すしかないと感じた玉木は、後方にターンをして森山にバックパスを選択。
ここでまたしても宮本から声がかかる
「いくぞ~!!」
ボールを受け取ろうとした森山に、
さっきまで空いているスペースをつぶしていた加藤が一直線に寄っていく。
ボールを止めた森山に、加藤からものすごいプレッシャーがかかる。
ここで前線にロングキックをしてボールを捨てることができていたら、
結果は違ったに違いない。
でも森山はボールをトラップした後にワンタッチ狭い方にボールを動かしてしまった。
その瞬間、斎藤はSBへのパスコースを切りながらプレスをかけてくる。
佐藤は玉木へのパスコースを切りながら寄ってくる。
3人同時にプレスがかかり、森山にはもうGKへのバックパスしか選択肢がなかった。
「金沢頼む」
1点目と同様に森山には金沢へのバックパスのコースが空いているように見えた。
ボールを戻した森山は、ものすごい勢いでボールを追いかける姿を確認してしまった。
「なんでおまえがそこにいるんだ。」
姿の主は、逆サイドにいるはずの山下だ。
サブ組はチーム全体で右サイドに寄っていたのだ。
このボールに追いついた山下は、バックパスを受け取ろうと前にでていた金沢を難なくかわし、
2点目のゴールを決めた。
玉木の戦術理解度の低さが生み出す事態。
それはボールを受け取るポジションが悪すぎで、実は前に運べない原因を作っていた。
今回の2点目も、玉木が森山からボールを受け取るポジションが
森山から前線に一発でパスを通せるパスコースの邪魔をしていた。
それのおかげでサブ組のプレスが間に合った結果だった。
サブ組の次の戦術は、同サイド圧縮での守備。
玉木のポジショニングの悪さを利用して、2点目をなんなくゲットしていた。
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