第32話「レギュラー組VSサブ組②」
レギュラー組からのキックオフ。
後方に位置するボランチの玉木がボールを受け取る。
「じゃあ、ゆっくりまずは攻めよう」
玉木は周りにそう声をかけると、CBの森山へとバックパスを送る。
レギュラー組はまずサブ組がどのようなサッカーをしてくるか、
どんな強度で守備をしてくるかを体感したいと考えていた。
その為に慎重なゲームの入り方を選択していた。
ボールを受け取った森山は、簡単に右にいる前田にパスをする。
ここぐらいでサブ組のCF加藤が迫ってくる。
もちろん前田は慌てることなく、森山のパスコースを消しながら寄ってくる加藤を気にせず、
低い位置で外に張っていた林にパスを送る。
するとサブ組のキャプテンのDMF宮本が声を張り上げる。
「よし、練習どおりいくぞ!」
いっせいにサブ組がプレスの強度をあげた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
<宮本視点>
関東大瑞穂戦終了後の最初のミーティング。
レギュラー組との紅白戦にむけた大事な話があると集合していた。
そこで鳥海監督からレギュラー組の弱点を3点聞かされた。
1点目は、誰もが驚愕していた。佐藤だけは納得してたみたいだけど。
まさか水樹がいないことがそんなに大きいなんて全然感じていなかった。
2点目が至極当たり前だが、サブ組をいつまでも下に見ているはずということだ。
いくら気を引き締めようが体感していない以上、本質は変わらない。
「まず、レギュラー組は様子をみてくるはずだ。
イメージとのギャップを埋めたいと思うのが普通だ。
よって後方でパスを回しながら徐々にギアを上げてくる。」
「そこでディフェンスラインでパスを回すようであれば、
加藤がプレスをかけながら様子見だ。
パススピードが遅いようなら、どちらか左右のSBにボールを出させるように
コースを切りながらプレスをかけてくれ。」
「宮本」
唐突に自分の名前が呼ばれる。
「もし、SBが低い位置で外に張っているようだったら、わかるな」
どこかで聞いた話だ。数秒考えるとあるチームの姿が浮かび上がる。
「はい、ボールの取りどころと判断して、チーム全体全力でプレスをかけにいきます」
関東大瑞穂のように。
「そういうことだ。
よって前から行うプレスの練習に力をいれる」
鳥海監督からレギュラー組への最初の対策を伝えられた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『レギュラー組が様子見のごとく玉木から森山、前田とゆったりとパスを回していますね。
サブ組の加藤がプレスをかけ始めますが、問題なくそのまま林へとパスが出ます。
おっと、サブ組が一気にプレスをかけはじめた~』
林が低い位置で前田からボールを受け取った瞬間、
サブ組が一気に前からプレスをかけ始めた。
林からの景色は、加藤が前田へのパスコースを切りながらプレスに来るため横には戻せない。
GKもビルドアップに参加していなかったからかバックパスのコースを作っていない。
そうすると前にいるMF石原に出すしかないが、後ろからぴったりマークにつかれている。
一瞬でパスコースを切られた林を始めレギュラー組は、
入りも慎重という名のゆったりペースであったために全くついていけていない。
横から加藤、前から山下。
そんな時、玉木への斜めのパスコースが空いているように見えた。
「玉木頼む」
林が唯一空いているように見えた玉木へ斜めのパスを出す。
「まずい、俺に出すな」
玉木が声をかけるも時すでに遅く、
そのパスコースを呼んでいたOMF佐藤にパスカットされる。
「よし、練習通りだ」
パスをカットした佐藤はそのまま、加藤へスルーパスを送る。
完全に後ろを取られる前田。
ボールを受け取ったCF加藤の前には、GK金沢のみ。
ボールを取れられると思っていなかったのがわかるぐらい準備ができていない。
「この1点でサブ組への認識も変わるだろう」
加藤は、がら空きになっているゴール左サイドに丁寧なインサイドキックでシュートを放つ。
金沢は横っ飛びを試みるがまったくボールに届かない。
サブ組が開始30秒。
レギュラー組がどうしても隠し切れなかった慢心をつき、
先制点を決めることに成功した。
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