第28話「交錯する思い」
「今日はみんなよく頑張った」
ベンチで待っていた選手たちにまずはねぎらいの言葉をかける。
言葉を受け取っている選手たちの顔を見渡すと悔しさがにじみでている。
「結果は残念だったが、手ごたえを感じられたと思う。
途中まではばっちりプラン通りでいくことができた。
最後は相手のスペシャルな選手にやられたが、それは現時点ではしょうがない。」
個々のレベルアップの時間はこれからだからだ。
「この試合で感じてもらったことが何かはみんなに任せる。
俺が感じたことは明日以降の練習メニューに反映していくつもりだ。
とりあえず、おつかれさん。解散しよう」
疲れが見えている選手に長々説明してもしょうがない。
今日は自分たちで感じてもらいたいことだけ伝えて終わりにした。
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<森山視点>
鳥海監督に呼び出され、この試合を見るように言われた。
俺たち南東京高校レギュラー組は、鳥海監督の就任に反対をし
今まで自分たちで練習をしてきた。
あと1週間後にサブ組との紅白戦。
これに勝てれば俺たちが思ったようにこの1年間を戦える。
相手は、サブ組。しかも監督はサッカー素人に近い。
まず負けるわけがない。
俺たちは前監督のもと去年ベスト16までいった。
その自信が揺らぐわけがない。はすがなかったが・・・
「森山」
唯一同行していた副キャプテン玉木が声をかけてきた。
「なんだ」
「これ、本当にサブ組か・・・」
サブ組と知らなかったら、普通に東京都の中堅高校のレベルと遜色ないと
玉木は感じていた。
「ひょっとしたら、やばいんじゃないか」
思わず口走ってしまった。
「大丈夫に決まってるだろ!」
つい大声を出してしまう。
玉木が感じていたことを森山自身も感じていた表れだった。
後半、関東大瑞穂の10番が出場するまでのサブ組は完ぺきだった。
DF陣のビルドアップからの先制点、守備の連動性。
それに各個人が見違えるようにレベルアップしていた。
佐藤も宮本も柏木も急激にレベルが上がっていた。
いったん受け止めるには時間がかかりそうだ。
「帰ってみんなと対策を話し合わないといけない」
少し冷静にならなければいけない。絶対に負けたくないから。
この試合を見たことによりレギュラー組の意識が変わり、
残り1週間の練習の強度は上がっていった。
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「森山と玉木だけか。」
帰っていく二人の姿が見えた。
レギュラー組全員に来るように伝えたが、素直に来るわけないか。
あいつらにこの試合がどう映ったのか。
「もちろんレギュラー組への対策も考えている。
いつまでも自分たちがサブ組に比べてスペシャルな存在であるか。
そう感じているうちは絶対にサブ組に勝てない。
スペシャルな存在とは、志波凌馬みたいな選手を言うんだよ。」
「ただ元Jリーガーが決めたレギュラーなんて、スペシャルじゃない。
それを結果で示してやるからな。待ってろよレギュラー組」
南東京高校の運命を決める紅白戦まで残り1週間になった。
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