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Doubt common sense ~名選手が必ずしも名監督とは限らない~  作者: ぷやっさん


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27/72

第27話「決着 サイド:南東京高校」

<高橋視点>**

これが――

多分ラストプレーになる。

ここさえ抑えれば、最低限“同点”で終われる。

勝利は難しい。

だが、負けなければ十分だ。

そう自分に言い聞かせながら、俺は一度だけ後ろを振り返り、

ゴールの位置を正確に確認した。

前目に取っていたポジションから、

ゆっくり、しかし確実に後方へ下がる。

その間にも、迫ってくる。

関東大瑞穂――背番号10。

志波凌馬。

俺の前に残された味方は、ただ一人。

CB柏木。

(練習通りだ。焦るな。)

柏木はペナルティエリア手前で後退を止めた。

それは“ミドルは任せろ”という合図。

俺はその意図を受け取り、

柏木が左足のコースを切るのを確認する。

本来なら、ここは両コースにシュートがある。

だが――今日は違う。

(右足を使ってない。

必ず左足で撃ちに来る。)

だから俺は、ほんのわずか右側へポジションをずらし、

前へ出る準備を整えた。

志波が近づく。

柏木も同じ読みなのか、左足側を完全に封じている。

それでも志波は縦へのフェイントで柏木の逆を取り、

左足でのシュート体勢に入る。

(来い。そこしかない。)

俺の視界には、左のシュートコースは存在しなかった。

柏木の右足が伸び、残されたコースも消える。

「ナイス柏木――」

止めた。

そう確信した。

……だが。

ボールは飛んでこない。

柏木の足にも当たらない。

(まさか――)

キックフェイント。

志波は柏木を抜き去り、

俺が右に寄っていたせいで空いた“左側の大穴”へ向かっていた。

「まずい!」

慌てて左へポジションを修正し、前へ出る。

柏木も後ろから必死に食らいついている。

左足でのシュートはもうない。

(右足で撃つかどうか……

無理やり撃ってくるなら、ゴロだ。)

俺は体勢を低くし、

右足の弱いシュートに備えた。

「さぁ、止めてやる。」

志波がシュートフォームに入る。

その瞬間――

世界がスローモーションになった。

左足と同じフォーム。

同じ軌道。

同じ体重移動。

(嘘だろ……)

次の瞬間、

俺の想像を遥かに超えるスピードでボールが飛んだ。

右斜め上。

俺の手が届かない高さへ。

ただ、見送るしかなかった。


終了の笛と、空を仰ぐ

ボールがネットを揺らした瞬間、

主審のホイッスルが鳴った。

逆転。

そして試合終了。

俺は天を仰いだ。

(逆転を許す可能性があるとしたら……

“個で打開できる選手”がいて、

その選手が俺を上回る技術と知性を発揮した時――

そう考えていたが……まさにその通りになった。)

「……これも経験だな。」

気持ちを切り替えるしかない。

ベンチの選手たちに顔を上げるよう促す。

選手はよく戦った。

反省すべきは俺だ。

南東京高校の初陣は敗戦。

だが、得るものは多かった。


試合後の握手

「お疲れさまでした。」

関東大瑞穂コーチ――志波が近づいてくる。

「お疲れさまでした。」

握手を交わす。

「いいチームですね。

一歩間違えたら負けていたのはうちでしたよ。」

「勝ちたかったですけどね。

そちらは2軍でしたし……悔しい結果です。」

志波は少し笑い、

ふと真顔で尋ねてきた。

「そういえば弟さん。

2軍にいるレベルじゃなかったですけど……入学したばかりだからですか?」

「いやいや、もう1軍のレギュラーですよ。

今回は試したいことがあって、あえて2軍で起用しました。」

「普段と違うポジションを経験させたってことか?」

俺は最後の右足シュートで違和感を覚えていた。

左右両足で蹴れる。

それも高次元で。

その事実を隠し、逆転まで持っていく知性。

なのに、宮本のマンマークに苦しんでいた。

スキルとポジションが噛み合っていない。

絶好のカウンターで佐藤からボールを奪った動き――

あれは“ボランチの動き”だ。

「えっ……」

志波は驚いた顔をした。

「そうです。

凌馬はボランチのレギュラーです。

中高一貫なので中3から飛び級で練習に参加してました。

もう中心選手ですよ。」

志波は頭を下げた。

「いえいえ。

うちも去年のサブ組ですからね。

レギュラーは別で練習してます。」

(つまり……今日の試合は“2軍同士”だったのか。)

「そうでしたか。

次はお互いベストメンバーでやりたいですね。

もちろん次も勝たせてもらいます。」

志波は笑ってベンチへ戻っていった。


旧友との再会

「鳥海。」

聞き慣れた声。

「栗林。」

勝ち誇った顔で旧友が歩いてくる。

「どうだ?うちは強いだろ。」

「志波コーチから聞いた。

そちらの10番は別格だったな。

しかも違うポジションで2ゴール……立派だ。」

「まぁ悪いとは思ったけどな。

うちにも事情がある。」

「そりゃそうだ。練習試合だしな。

じゃあ、選手とミーティングしてくる。またな。」

栗林との会話を終え、

俺はベンチへ向かって歩き出した。

今日の敗戦を、どう生かすか。

選手たちの顔が浮かぶ。

――南東京高校の再出発は、ここからだ。

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