第26話「決着 サイド:関東大瑞穂高校」
<名も無きCF視点>**
「マジで決めやがった。」
思わずそう呟いた。
いや、正確には――“決める未来を知っていたかのように”決めやがった。
そう感じた理由は、後半20分頃の会話にあった。
あの時、俺はずっと気になっていた疑問を志波にぶつけた。
「なぁ、凌馬。
なんで右足で蹴れば決まりそうな場面でも、左足しか使わねぇんだ?」
志波は両足で蹴れる。
それがあいつの武器だ。
なのに、今日は徹底して左足だけ。
志波は少し笑って、肩をすくめた。
「同点までなら左足だけで十分なんですよ。
でも“右足が使えない”と思わせておかないと、逆転までは辿り着けない気がして。」
「そんなもんか?
相手がおまえ止められるとは思えねぇけどな。」
実際、この時はマンマークもなく、志波は無双状態だった。
だが志波は、俺の背後――南東京の最後の砦を見据えていた。
「あのGKはレべチですよ。
DFは抜けても、その後ろが問題なんです。」
「そんなにか?」
俺には想像もつかない。
あのGKにシュートが入るイメージなんて、正直一度も湧かなかった。
志波は、まるで未来を見てきたかのような目で言った。
「右足でシュートを打つ瞬間が来るはずなんです。
それが“逆転の場面”だと思ってます。
なんとなくですけどね。」
そう言って、軽く手を振りながらポジションへ戻っていった。
――そして今。
「あいつが言った通りになっちまったな。」
預言者かよ。
そう思いながら、俺は逆転弾を決めて走り出した志波を追いかけていた。
「逆転ゴーーーーール!!!!!」
AT。
背番号10番、志波凌馬。
右足から放たれた弾丸シュートは、
南東京高校のゴール右上へ突き刺さった。
その瞬間――
主審のホイッスルが重なる。
試合終了。
「2対1!
関東大瑞穂高校、劇的勝利!!」
実況の木村が叫ぶ横で、
栗林監督は鳥海監督と静かに目を合わせていた。
(鳥海、まだ俺たちには勝てない。
またやろう。)
言葉にせずとも伝わる。
旧友同士の、静かな火花だった。
志波凌馬、歓喜の走り
「よっしゃぁぁぁ!!」
自分の右足から放たれたボールがネットを揺らした瞬間、
胸の奥から熱が溢れた。
気づけば、無意識にベンチへ走っていた。
待っていたのは兄――志波コーチ。
「約束は守ったぞ。」
「ありがとな。」
兄弟の短い会話。
だが、その一言にすべてが詰まっていた。
1軍、帰還
「いや~ドキドキしましたよ。」
声の方を見ると、
ベンチ裏に14名の選手が立っていた。
関東大瑞穂高校1軍。
昨年の神奈川王者。
今年プリンスリーグ昇格を狙う精鋭たち。
「凌馬がマンマークで苦しんでるとこから見てました。
声かけられる雰囲気じゃなかったんで、逆転してから来ました。」
その中の一人が志波コーチに近づく。
「そっちの試合はどうだった?」
「いや~なんとか引き分けです。
FC横浜、やっぱ強いっす。」
「そっか。」
志波コーチは想定内といった顔で頷く。
「じゃあ栗林監督に挨拶して帰ります。」
1軍は解説席へ向かう。
栗林監督と1軍
「栗林監督!」
「お疲れさん。
結果は……まぁ、引き分けってとこか?」
「頑張って引き分けでした。」
「悪かったな。
凌馬をこっちに出したから、おまえらの司令塔がいなかった。」
「そうですよ!
攻守の柱がいないんですから。
しかもこっちの試合見たら、凌馬がウイングやってるし……
目を疑いましたよ。」
そう、志波凌馬の本職はウイングではない。
「2軍の試合に出すのに、なんでボランチで使うんだよ。
あいつには“自分で突破してゴールを奪う”意識を持たせたかった。
だからウイングで使ったんだ。」
栗林は笑いながら言う。
「まぁ、兄貴の方は最後まで悩んでたけどな。」
そして、次の戦いへ
「来週からプリンスリーグ関東が始まる。
気を引き締めていくぞ。」
「はい!!」
関東大瑞穂高校にとっても、
南東京高校にとっても、
この試合は“ただの練習試合”ではなかった。
それぞれの未来を変える、
大きな意味を持つ一戦となった。
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