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Doubt common sense ~名選手が必ずしも名監督とは限らない~  作者: ぷやっさん


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23/72

第23話「南東京、最後の砦が立ち上がる ― 宮本、覚醒**」

「マジかよ……」

誰かが呟いた。

その声は、南東京高校のDFライン全体の本音だった。

(ドリブルだけでも手に負えないのに、

クロスの精度まで化け物かよ……)

志波凌馬。

1年生にして、完全に試合の主役だった。

彼がボールを持つたびに、

南東京の守備ブロックは揺れ、

スタンドの空気が震え、

ベンチの鳥海でさえ息を呑む。


■ 止まらない“嵐”

「志波!」

まただ。

ボランチからの鋭い縦パスが、

南東京の2ラインの“隙間”に吸い込まれるように入る。

志波は完璧なファーストタッチで前を向く。

「橋本頼む!」

柏木の声が飛ぶ。

「わかってる!」

橋本は必死に食らいつく。

だが――

前を向かせないように寄れば、

志波はワンタッチで落としてワンツー。

前を向かせれば、

ドリブルでぶち抜かれるか、

精度抜群のクロスが飛んでくる。

(どうすりゃいいんだよ……)

橋本の心が折れかけた、その瞬間。


■ “股抜き”の衝撃

志波がアウトサイドでボールを減速させる。

(よし、クロスだ)

橋本は読み切ったつもりだった。

右足を伸ばし、

クロスのコースを完全に塞ぐ。

「ナイスだ橋本!」

DF陣がそう思った次の瞬間――

スッ。

志波の左足インフロントが、

橋本の足の下を通してきた。

「なにぃ!!」

股抜き。

完璧すぎるタイミング。

完璧すぎる技術。

橋本は完全に置き去りにされた。

志波はそのまま右サイドを疾走。

カバーに来た柏木すらスピードでぶち抜き、

ペナルティエリアへ侵入。

(終わった……)

南東京の誰もがそう思った。


■ しかし――

「これで同点だ!」

志波が左足でファーサイドへ巻いたシュートを放つ。

完璧な軌道。

完璧なコース。

GKでも触れない“プロのコース”。

だが――

バチィィィン!!

ボールの軌道が変わった。

「1年なめんじゃねえよ」

その声は、

ゴール前の守護神・高橋のものだった。

彼はまるでそこに吸い寄せられたかのように、

完璧なタイミングで飛び、

完璧な手の角度で弾き出した。

「こんな甘いコース、誰でも止められるぜ」

平然と立ち上がる高橋。

(いや、誰でも止められねぇよ……)

南東京の選手たちは心の中で全員ツッコんだ。

志波は頭を抱える。

「そこ止めるかよ……

うちのGKなら入ってるぞ……」

(こりゃ……手ごわいな)


■ 10分間の地獄

その後も志波は止まらない。

ドリブル。

クロス。

カットイン。

ミドル。

ワンツー。

スルーパス。

南東京のゴールは、

まるで嵐の中の小舟のように揺れ続けた。

だが――

そのたびに高橋が立ちはだかった。

何度も。

何度も。

何度も。

「柏木、さすがにしんどいぞ……」

「わかってるよ……」

限界は近い。


■ そして、覚悟の時間

「宮本」

柏木が声をかけた。

その声は震えていたが、

覚悟が宿っていた。

「もうやるしかない」

宮本は短く答えた。

柏木はベンチの鳥海にサインを送る。

鳥海は静かに頷き、

二人に向かってグッドサインを返した。

(頼んだぞ……

抑えるべきポイントは一つだ)


■ そして――その瞬間が来る

「ボールをください!」

志波が要求する。

「頼むぞ!」

ボランチが即座に縦パス。

志波がライン間で受ける。

(次こそ決める)

志波がドリブルを開始した瞬間――

スパァン!!

ボールがタッチラインを割った。

「???」

志波は理解できなかった。

(今……何が……?)

足元から声が聞こえた。

「もうやらせないぞ、1年坊」

志波が視線を落とす。

そこには――

スライディングでボールを刈り取り、

ゆっくりと立ち上がる男がいた。

キャプテンマークを左腕に巻き、

坊主頭を汗で光らせながら、

真正面から志波を睨みつけている。

宮本だった。

「ここから20分よろしくな。

これから自由にできると思うなよ」

その目は、

“絶対に負けない”と語っていた。

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