第22話「後半3分、空気が変わる」
「あ〜っと、ゴールバーにはじかれた〜!!」
木村の声がグラウンドに響く。
ボールは無情にもバーを叩き、ゴールラインの外へ。
だが――
南東京の選手たちは、
“助かった”というより “震えた”。
あのクロス。
あのスピード。
あの一瞬のキレ。
(なんだ……あいつ)
(前半の選手とレベルが違う)
(やばい……)
そんな声が、選手たちの心の奥でざわついていた。
■ 実況席の温度が変わる
「いや〜惜しかったですね!
交代で入った志波選手、いきなり存在感を見せつけました!」
木村は興奮を隠せない。
栗林は、腕を組んだまま淡々と答える。
「もちろん、あれくらいやってもらわないと困りますね」
その声は冷静だが、
どこか“確信”を含んでいた。
「今のプレーをきっかけに試合が動きますよ。
南東京高校の選手の顔を見ればわかりますね」
木村が画面を見つめる。
「確かに……驚きを隠せていません。
まだ後半3分。このままではいかないでしょう」
■ 南東京の動揺
「やば……今の何だよ……」
「速すぎる……」
「クロスの質、前半の選手と全然違う……」
守備陣の間に、
小さなざわめきが広がる。
その中心で、
宮本が歯を食いしばっていた。
(落ち着け……落ち着け……!
ここで崩れたら終わりだ……!)
柏木も同じだった。
(最初の5分……ここを耐えれば……!
ここを耐えれば流れは戻る……!)
だが、心臓の鼓動は速くなるばかり。
■ 鳥海の表情
ベンチで鳥海は腕を組んだまま、
じっとピッチを見つめていた。
表情は変わらない。
だが、その目は鋭い。
(来たな……
“個で崩せる選手”
瑞穂が唯一欠いていたピース)
控え選手が震える声で聞く。
「鳥海監督……
あの10番……やばくないですか……?」
鳥海は短く答えた。
「想定内だ。
だが――ここからが本当の勝負だ」
■ 瑞穂ベンチの空気
志波(兄)は胸を押さえていた。
(凌馬……頼む……!
お前しかいない……!)
その横で栗林が静かに言う。
「ほら、志波。
お前の弟、ちゃんと“流れ”を変えたぞ」
志波は息を呑む。
「……はい」
■ ピッチ上の“異変”
南東京の選手たちがポジションに戻る。
だが、誰もが落ち着かない。
佐藤が小さく呟く。
「……やばいな、あいつ」
加藤も同じだった。
「一瞬で空気変わったな……
これが……強豪の“切り札”かよ」
橋本は汗を拭いながら言う。
「正直……縦に行かれたら止められねぇ……
中に切られても……クロスの質がエグい……」
宮本が叫ぶ。
「落ち着け!!
最初の5分耐えるぞ!!
ここが勝負だ!!」
だが声は震えていた。
■ そして――試合が動き始める
瑞穂の選手たちが一斉に前へ出る。
凌馬が再びボールを受ける。
南東京の守備ブロックが揺れる。
観客席の空気が変わる。
実況席の木村が叫ぶ。
「さぁ、後半3分!
関東大瑞穂高校、完全に流れをつかみ始めました!!
南東京高校、ここが踏ん張りどころです!!」
栗林は静かに呟いた。
「さぁ鳥海……
ここからどうする?」
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