第18話「旧友との再会」
関東大瑞穂高校
神奈川県西部の山の上にある学校で、関東大学と併設されている。
サッカー部のグラウンドは、大学サッカー部との共同使用のため、とても充実している。
アウェイチームにまでロッカールームがあるほどである。
「ここが今日の試合会場だ。」
相手校の施設の充実に驚愕している選手に声をかける。
「監督。どっかのプロチームと試合するみたいですね。」
苦笑いをしながら宮本が声をかけてくる。
「そうだな。」
うちの土のグラウンドを思い出す。
「すいません。」
後ろから見慣れないジャージ姿の男の子に声をかけられる。
そちらに振り向くと
「今日はお越しいただいてありがとうございます。
関東大瑞穂サッカー部1年の志波と言います。
ロッカールームにご案内しますのでついてきてください。」
とても礼儀正しい。
「ありがとうございます。」
こちらも一礼し、選手ともどもロッカールームへ向かった。
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<関東大瑞穂視点>
「監督。今南東京高校の皆さんをロッカールームに案内していきました。」
先ほど案内を終えたことを監督に報告した。
「おう、ありがとう。
じゃあ、準備にもどってくれ。」
そう声をかけると戻っていった。
「おまえの弟も礼儀正しくなったじゃん。」
今日指揮を揮う予定のアシスタントコーチの志波に声をかけた。
「まぁ、あいつもそれぐらいはできるよ。」
兄として返事をしているようだ。
「ところで、今日なんで俺が指揮するんだ?」
純粋な疑問。
「それは、さすがに鳥海も俺が指揮をするとしんどいかなって思ってな。
あいつとはもし勝ち上がってくるようなら、もっと上のステージでやりあいたい。
だから今日は任せるわ。」
そんな未来をもちろん期待してる。
「そいつはいいけど、俺がやっても負ける気はないぞ。」
志波ももちろん負けず嫌いだ。
「そりゃ当たり前だ。」
そんなの相手に失礼だしな。
「今日お願いしたいことは、さっき伝えた通りだ。
それ以外に関しては、どう修正しようが自由にしてくれ。
ただ、負けることは想定してないからな。」
真剣な顔で志波を見て言う。
「もちろんだ。
お前が注目する鳥海という男を見極めてやるよ。
まぁ、負けるつもりは毛頭ない。
じゃあ、準備に取り掛かるわ。」
そう言うと志波は選手たちのもとに歩き始めた。
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「鳥海監督」
宮本が声をかけてきた。
「なんだ?」
「そろそろアップを始める時間ですよ。」
時計を見ながら選手が準備が整ったことを教えてくれた。
「おう。
じゃあアップする前に話したいことがある。
聞いてくれ。」
選手がこちらをしっかり見てくる。
「今日の相手は、1軍ではないが実力的に格上だ。
最後まで走り、気持ちで負けないことはとても重要だ。
だが、まず頭は冷静に。事前に決めている約束事を忘れず。
そのうえで、ピッチ上でしか感じられないことを自分たちで考えて修正してくれ。
いいな。」
「はい!」
「じゃあ、アップを始めてくれ。
宮本頼むぞ。」
「みんな行くぞ!」
宮本の声でロッカールームからグラウンドへ出て行った。
そんな選手たちの後ろ姿を見送った俺は、
「さぁ、俺も準備するか」
あとを追いかけるようにロッカールームを出た。
監督として初戦。
グラウンドのピッチ状態、ベンチから見える景色
色々な確認を行っていた。
そんな俺に旧友が声をかけてきた。
「よう。久しぶりだな。」
栗林だ。
「出た。イケメンが。」
皮肉たっぷり、中学時代に戻ったかのように返事してしまった。
「相変わらずだな。」
手を差し出してくる。
「今日はありがとう。」
その手を握り、感謝を述べる。
「いや、たいしたことはしてないさ。」
握り返しながら、気にしていないと首をふる。
「ところで今日は、おまえは監督しないのか?」
アップを指揮しているのはアシスタントコーチ。
戦術の確認もしていたため、なんとなくそう思っていた。
「俺が監督やったら、試合にならないだろ?」
笑いながらでもまんざらじゃない。
「そうか。まぁ、練習試合を受けてもらってる身だからな。
まずは、彼を倒すとしよう。」
ボスの前に中ボスを倒すのはセオリーだからな。
「じゃあ、またあとでな。」
栗林はそう言うと去っていった。
試合まであと5分になろうとしていた。
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