第17話「前日」
<関東大瑞穂視点>
明日に南東京高校との練習試合を控えて、
ミーティングルームに志波と二人、
なんとか手に入れた昨年のベスト16の南東京高校の試合映像を見ている。
「監督、やる意味あります?」
志波が先日と同じことを言ってくる。
「まぁ、ないな」
率直に言ってひどい出来だな。
確かにセンターラインを形成しているメンバーの実力は高い。
でも全然チームが機能していない。
「確か監督は元Jリーガーだったよな」
そう言うと
「そうですね。南東京高校の躍進は監督のおかげって書いてありますよ。」
志波がネット記事を見ながら答える。
「いやいや、ひどいなこのチーム。
選手任せにしか見えないな。コンセプトがまったくない。」
もう試合を見るのをやめようかと思っていた。
「こんなチームが監督が代わっただけで、どうかなりますかね。」
志波が呆れて言ってきた。
「そりゃ変わるだろ。俺たちがそうなんだから。
ただ、今回はあまりに時間が短いから期待外れに終わることは否定できないな。」
いくらあいつでも時間がないからな。
「今回どんなゲームプランで行きますか?」
志波が気持ちを切り替えて質問してきた。
「もちろん基本は前からプレスをかけてのショートカウンターだけど、
今回は相手との力関係を利用して、ポゼッションを試してみたいと思ってる。
それとウイングにあいつを起用して成長を促したい。」
「あいつですか?」
不安そうな志波。
「うちがプリンスリーグに昇格するためには、あいつに一皮むけてもらうしかない。」
ラストピースである選手を思い浮かべる。
「不安しかないです。」
苦笑いを浮かべながら、
「では、このメンバーでいきましょう。」
志波がスターティングメンバーを提案してきた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
関東大瑞穂高校の直近の試合を見た俺は、
「やっぱり手ごわいな。」
当たり前な感想を口にしていた。
「明日にはメンバーが違うとは言え、このチームと試合をするのか。」
圧倒的な戦力差。わかっていたが頭が痛い。
「むこうがもしこちらの分析をしていたとしても、前チームの映像しかないだろう。
どうせ栗林のことだからひどいチームなんて言ってる姿が目に浮かぶな。」
でもそれだけが唯一救いな部分。こちらのチームをつかめていない。
「多分、あいつはポゼッションを試したくなるはず。
といってもうちにそれを防ぐことは難しい。時間がなかったからな。
やはりやるかどうかわからないものを防ぐより
確実にやってくるショートカウンターを防ぐしかないし。」
その点に関しては、びっくりさせる自信はある。
「万が一こっちが先制するようなことがあれば面白くなるんだがな。」
勝利するには絶対条件。
「ただ、そうなっても逆転されるとしたら・・・」
口に出すとそうなりそうだから、ここで言うのはやめておく。
「この試合の後、レギュラー組との大事な一戦。
今回の練習試合を経験して、個々の実力に戦術を上乗せしてくるチームがいかに強いか
サブ組は感じることで、劇的に成長してくれるだろう。」
「栗林、頼むよ」
勝手に他力本願してみた。
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