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Doubt common sense ~名選手が必ずしも名監督とは限らない~  作者: ぷやっさん


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17/72

第17話「前日」

試合前日の夜。

ミーティングルームの照明は落とされ、

スクリーンに映るのは昨年の南東京高校――ベスト16の試合映像。

志波が腕を組んだまま、ため息をつく。

「監督、これ……やる意味あります?」

昨日と同じ質問。

だが、今日の声はさらに冷めていた。

栗林は肩をすくめる。

「まぁ、ないな」

映像の中の南東京は、

センターラインの個の力こそあるものの、

チームとしてはバラバラだった。

「確か前監督は元Jリーガーだったよな」

栗林が言うと、

志波がスマホを見ながら答える。

「そうですね。

“南東京の躍進は監督のおかげ”って記事が出てます」

栗林は鼻で笑った。

「いやいや……ひどいなこのチーム。

選手任せ、コンセプトゼロ。

これで勝てるわけがない」

映像を止める。

「こんなチームが監督交代だけで変わりますかね」

志波が呆れたように言う。

栗林は少しだけ考え、

そして静かに言った。

「変わるだろ。

俺たちがそうだったようにな」

志波が黙る。

「ただ……今回は時間が短すぎる。

あいつでも、さすがに間に合わないかもしれない」

“あいつ”

その言い方に、志波が気づく。

「監督……その“鳥海”って人、そんなにすごいんですか?」

栗林は笑った。

「サッカーは下手だよ。

万年補欠。

でも――戦術だけは天才だった」

志波が目を見開く。

「中学の時、東京都を優勝したって……」

「そうだ。

そして戦術を組んでいたのは、監督じゃなくて鳥海だ」

志波は絶句した。

栗林はスクリーンを見つめながら言う。

「だからこそ、面白いんだよ。

あいつがどんなチームを作るのか」

志波が気を取り直して聞く。

「で、明日のゲームプランは?」

栗林は迷いなく答えた。

「基本は前からのプレスとショートカウンター。

だが今回は――ポゼッションを試す」

志波が眉をひそめる。

「それと……ウイングに“あいつ”を使う」

「あいつ……ですか」

不安が隠せない。

「うちがプリンスに上がるには、あいつが覚醒するしかない」

志波は苦笑しながら、スタメン表を差し出した。

「では、このメンバーでいきましょう」

栗林は頷いた。

「鳥海……明日、楽しませてくれよ」


■ <南東京高校・鳥海視点>

瑞穂の直近の試合映像を見終え、

俺は深く息を吐いた。

「……やっぱり手ごわいな」

当たり前の感想だ。

映像の中の瑞穂は、

二軍とは思えない完成度だった。

「明日はメンバーが違うとはいえ……

このチームと試合をするのか」

頭が痛くなる。

だが、唯一の救いがある。

「向こうが分析してるのは“前監督の南東京”だけだ。

今の俺たちの姿は、まだ誰も知らない」

栗林の顔が脳裏に浮かぶ。

(どうせ“ひどいチームだ”とか言ってるんだろうな)

だが、それでいい。

その油断こそ、唯一のチャンスだ。

「多分、あいつはポゼッションを試したくなる。

だが……うちにそれを防ぐ力はない。

時間がなかったからな」

だからこそ――

「確実にやってくるショートカウンターを防ぐ。

そこだけは……びっくりさせてやる自信がある」

もし、もしも先制できたら――

試合は一気に面白くなる。

「ただ……逆転されるとしたら……」

口に出すのはやめた。

言葉にした瞬間、現実になりそうだから。

俺はホワイトボードに目を向ける。

明日の試合。

その先にあるレギュラー組との決戦。

「この試合を経験すれば、

サブ組は劇的に成長する。

個の力に戦術が乗ったチームがどれだけ強いか、

身をもって知るだろう」

そして、静かに呟いた。

「栗林……頼むよ。

お前のチームで、うちを成長させてくれ」

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!

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