第16話「攻撃の形」
守備の形がある程度できたことを確認。
次は攻撃の形だ。
「じゃあ、次は攻撃面での形を説明したい。
これも後ろからのボールのつなぎ方になるから、守備陣に約束事を覚えてもらう。」
「ボールを運ぶ形を一つ。ダメだった場合が一つ。
それもだめならボールを捨てることにする。」
選手たちが真剣に聞いている。
「一番ダメなことはプレーの選択が遅くなり、相手のゲーゲンプレスにはまり、
ショートカウンターからの失点だ。」
「では、ビルドアップの形を説明する。
GKもしくはDFがボールを確保したら、まずはボランチにパスを出せるか確認してほしい。ボランチは、ボールを受けたら前を向けるポジショニングを意識してくれ。
前を向いたら、佐藤に預けるか加藤への裏抜けのパス、あとはミドルシュートってところだな。」
ボランチまでの選手が一生懸命理解しようとしているのがわかる。
「佐藤」
「はい」
佐藤が前に出る。
「そこから先は任せる。
ただSB橋本の上りを使う場合だけ、ボランチがスペースを埋めているかの確認だけしておいてくれ。」
「わかりました。」
理解して下がっていく。
「よし。じゃあこの形の練習をする。
始めてくれ。」
選手たちが各々のポジションにつき、一連の流れを練習していく。
15分も立つとだいぶ慣れていく。
これで次の練習に移れることを確認し、選手をまた集める。
「じゃあ、次はこの形が上手くいかないときの練習だ。」
「はい!」
選手たちは明確なコンセプトがあることに手ごたえを感じている。
「ボランチにボールを入れられない場合は、サイドバックが重要になる。
縦にボールが入れられないCBは、どちらかのサイドへボールを動かしてくれ。
その際、SBは外にはりすぎないことを意識してくれ。」
「外にはりすぎない・・・ですか?」
右SBの坂崎が質問してくる。
坂崎は、左SBの橋本と違ってフィジカルよりインテリジェンスで対応するタイプで、
頭でしっかり考えられる選手だ。
「そうだ。よく日本では外へはれと教えられる。
ただ、低い位置で外にはるとパスコースが限定される。
サイドハーフへの縦パスのみになる。
そうなるとパスをもらう方も後ろ向きになるし、
パスコースが一つだけだから、プレスにはまる。
良いこと一つもないな。」
「確かにそうですね」
坂崎は苦笑いで答える。
「続けるぞ。
SBは高い位置で外にはって、CBからロングボールをもらうか、
ある程度中にポジショニングを取って、
ボランチ・サイドハーフ・佐藤への3つのパスコースを確保してショートパスを受けてくれ。」
「中にポジション取るんですか?」
またしても坂崎だ。
「そうだ。SBだからって外にいなきゃいけないわけじゃないぞ。
中に入ってパスの中継地点になることも重要だ。」
「はじめて聞きました」
まさに目に鱗状態になっている。
「では、この形を練習する。」
坂崎・橋本がこの練習でSBの新たな動きを習得することが重要になる。
この練習には、1時間を要した。
SBが中でポジションを取る時は、一歩違うだけでパスコースの数が変わってしまう。
橋本と坂崎は知恵熱が出そうな顔をしてるな。
「よし、ここまでにしておこうか。」
そう言う俺に、二人は安堵の顔を浮かべている。
「最後にボールを捨てる判断だが、今の形を行ってもボールを前に運べない場合は、
逆サイドにボールを迂回させて同じ形を行う。
たいていはそれで前にいけるはずだが、それでもダメならGK高橋に戻して、
CF加藤への裏か両SMFへロングボールを蹴ってくれ。」
「攻撃の形は以上だ。」
短い時間だがこれだけできれば十分だ。
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