表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Doubt common sense ~名選手が必ずしも名監督とは限らない~  作者: ぷやっさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/72

第15話「伝わったのかもな」

「集合!」

いつものようにミーティングが始まる。

だが、今日の空気はどこか違う。

鳥海の声に、選手たちの背筋が自然と伸びる。

「今日は重大発表がある」

ざわつくサブ組。

そのざわつきが、期待と不安の入り混じった音に聞こえる。

「今週の土曜日に練習試合を行う。

相手は――関東大瑞穂高校だ」

……沈黙。

あれ? 反応がない。

聞こえていないのか?

「もう一度言う。対戦相手は――」

「聞こえてます!!」

宮本が叫ぶ。

「じゃあ反応してくれよ。寂しかっただろ」

「できないっす!!」

全員が揃ってツッコむ。

緊張が一瞬でほぐれた。

鳥海は笑い、そして真顔に戻る。

「昨年、神奈川を制覇した相手だ。

そのあとに待っているのは――レギュラー組との試合だ」

空気が一気に引き締まる。

「今回の試合で、色々な経験をしてほしい。

もちろん負けるつもりはない。

相手の情報は揃っている。

しっかり対策して臨む」

鳥海は一歩前に出る。

「関東大瑞穂高校の特徴、わかるか?」

静寂を破ったのは佐藤だった。

「自分、結構サッカー見るの好きなんで……わかります」

「じゃあ教えてくれ」

「はい。

昨年とコンセプトが変わっていなければ、

“相手にボールを持たせるチーム”です。

ビルドアップにプレスをかけて奪い、ショートカウンターで仕留めるタイプです」

鳥海は満足げに頷く。

「ありがとう。そのとおりだ」

佐藤が下がる。

「今回はこちらにボールを持たせるかは不明だ。

それに、うちにはまだビルドアップの形がない。

だから――つなぐことは捨てる。

まずは守備から構築する」

鳥海の声が、グラウンドに響く。


■ 守備の要を呼ぶ

「高橋、柏木」

「はい!」

二人が前に出る。

「ディフェンスラインは下げていい。

向こうは高さがない。

ショートパスでつながれて裏を使われるほうが厄介だ」

「ボールを奪ったら、まず佐藤へのパスコースを意識しろ。

無理なら加藤への裏。

それだけでいい」

二人は力強く頷き、列に戻る。


■ 実戦形式の戦術練習

いつもの練習が終わり、鳥海が声をかける。

「集合!」

選手たちが集まる。

「まずは守備の局面からだ。

一番警戒すべきはショートカウンター」

鳥海は地面に図を描く。

「サイドバック、もしくはボランチでパスコースを潰され、

ボールを奪われる。

その瞬間、相手は最大で3対5の局面を作ってくる」

「柏木」

「はい!」

「この局面で一番危険なのは?」

柏木は少し考え、答える。

「両CBの間に通されて、GKと1対1になることです」

「正解だ」

鳥海は続ける。

「だから、うちのやり方はこうだ。

“奪われた瞬間、まず裏のケアを優先する”

ボールフォルダーへのプレスはその後だ」

柏木が深く頷く。

「ただし――問題が一つある。

なぁ、高橋」

「そうですね。

自分が頑張らないといけないですね」

鳥海は笑う。

「DFラインが下がるということは、バイタルが空く。

ミドルシュートが打ち放題だ。

だが――うちには東京都でも指折りのGKがいる」

高橋は静かに胸を張った。


■ 3対5の実戦練習

「攻撃陣は加藤への裏、ダメなら佐藤のミドル。

守備陣は加藤の裏ケアを最優先。

いいな!」

「はい!!」

練習が始まる。

目的が明確だから、動きに迷いがない。

声も具体的で、連携が生まれている。

「柏木!」

高橋が呼ぶ。

「なんだ!」

「裏ケアは完璧だ。

そのうえで……ミドルのコースぎり、もう少し意識してくれ。

佐藤のクセは読めるが、何度か危なかった」

「わかった、やってみる!」

柏木が走り戻る。

高橋は心の中でつぶやく。

(前はこんな会話なかったよな……

文句ばっかりで、誰も“どう改善するか”なんて言わなかった。

これが……コンセプトの力か)


■ 最高の守備

「柏木裏ケア!」

「わかってる!」

加藤の走るスペースを消す。

「佐藤!」

攻撃陣が佐藤に横パス。

「次こそ決める」

佐藤がトラップ。

「柏木!左を切れ!」

「了解!」

柏木が角度を消す。

「ちっ……!」

佐藤は右にシュート。

「よくやった」

高橋が真正面でキャッチ。

その瞬間――

「ブラボー」

鳥海の口から、思わず言葉が漏れた。


■ 鳥海の胸に灯るもの

一番やられたくない攻撃を、

“意図”を持って防いだ守備陣。

まだ準備期間は短い。

まだ未完成だ。

だが――

「伝わり始めたかもな」

鳥海は嬉しさを隠せなかった。

南東京高校は、確実に変わり始めている。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ