第14話「お相手は」
関東大瑞穂高校
神奈川県西部に位置する学校で関東大学の付属高校の一つ。
サッカー部は創立80年以上で、部員数は各学年100名をも超える。
一軍はプリンスリーグ関東への昇格を目指し、二軍以下も県リーグに所属するなど
県内でも常にベスト8以上の実力を有する。
昨年は15年ぶりに神奈川県を制覇し、冬の高校選手権に出場。
2年前より新監督を迎え、ゲーゲンプレッシングからのショートカウンターを武器に
神奈川の頂点にたった。
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<関東大瑞穂視点>
「監督」
廊下を歩いていると後ろから声が聞こえる。
「栗林監督」
やはり呼ばれていたようだ。
後ろを振り向く。
「そんなに慌ててどうした」
走ってくる人物にぶっきらぼうに言い放つ。
「どうしたもなにも聞きましたよ、今度の練習試合の相手。
南東京高校ってよくわからないチームじゃないですか。
うちは、今年こそプリンスリーグ関東に行くって頑張りはじめてるところですよ。」
顔が真っ赤だ。
この真っ赤な人物は、俺のアシスタントコーチを務めている志波だ。
手前味噌だが俺と志波が就任してから、このチームは劇的に飛躍していると言っていい。
昨年の優勝で今年は各チームからの警戒がより一層強くなる中、
試行錯誤しているのだから怒っても無理はない。
「まぁ、落ち着け。
何も一軍を出すなんて言ってないだろ」
「当たり前です!!」
食い気味に言ってくる。
「なんの意味があってやるんですか?」
まだ顔が赤い。
「う~ん、頼まれたから」
頭を掻きながら答える。
「・・・」
無言の圧力。
「正直に言うと、面白そうだからだよ。
今回の相手は俺の旧友で、サッカーをしっかり勉強しなければと思わせてくれた存在なんだよ。」
「栗林監督に影響を与えた人物・・・」
考えこんでいる志波。
「だって栗林監督は、怪我がなければプロにもなれましたし
年代別の日本代表でしたよね。
相手もその時のチームメイトですか?」
さぞ凄いんでしょとでも言いたそうだ。
「そりゃそうなるか」
思わずあいつを思い出し笑ってしまった。
「いやいや、サッカーなんてやらせたらど下手だよ。
万年補欠だったからな。」
「名前は鳥海っていって、小・中のチームメイト。
下手なんだけど、監督そっちのけで戦術を提案してくるんだよ。
それが毎回当たるもんだから中学の時なんて最後には、監督の横で監督やってたそんなやつだよ。」
「えっ・・・」
志波が驚いている。
「確か監督、中学生の時に東京都で優勝したって言ってませんでしたっけ?」
「そうだな」
したり顔。
「じゃあ、その時ももちろんその人が監督してたんですか?」
まさかという顔だな。
「そりゃそうだな。」
だいぶ理解してくれたようだな。
「なぁ、面白い相手だろ。
しかも向こうからのお誘いだ。
どんなサッカーをするか楽しみになってもしょうがない。
やっぱり受けちゃダメだったか?」
申し訳なさそうに聞いてみた。
「いや、是非やりましょう!」
志波が間髪いれずに答える。
そりゃそう言うよな。
俺らは、この好奇心と柔軟性が武器なんだから。
「さっそく南東京高校との試合にむけて練習を始める。
さすがに日程的に一軍は難しいから、二軍を中心に行う。
それでも戦力的にはかなり上なはずだ。
気を引き締めてあと1週間やっていこう。」
「はい!」
「こちらに慢心はないからな。
鳥海、どんなサッカーをするのか。
楽しみにしているぞ。」
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栗林 圭太
身長180cm
すらっとした体躯
高校生まで年代別日本代表に選出され、ゲームメイカーとして将来を嘱望されるが
海外遠征の際の怪我で現役引退を余儀なくされる。
2年前に弱冠20歳で関東大瑞穂高校監督に就任。
翌年に神奈川県を制覇する。
志波 幸之助
身長191cm
坊主頭が特徴な男。
栗林監督の右腕として絶対の信頼を得ている。
主な役割は相手の分析と選手のコンディション管理。
現役選手時代に栗林と出会い、相棒としてプレー。
栗林とともに関東大瑞穂の強豪復活を成し遂げる。
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