第13話「絶対的な選手」
面談2日目
今日も選手たちが各々一生懸命考えてきたことが
感じられてとても嬉しく思っていた。
ふと次の選手との面談の空き時間に練習風景を覗いていると、
これから行う選手のプレーが目についた。
絶対的選手。
レベルは違えどどのチームにも必ずいるであろう存在。
うちのチームでは、この選手になる。
高橋航
さわやかなイケメン
身長は178cm
ポジションはGK。
シュートストッパーとして圧倒的なスキルを持つ。
そして最大の持ち味は・・・
「柏木、左から寄せろ。」
「橋本、中に絞れ」
監督室からでも声が聞こえる。
声の主はもちろん、高橋だ。
各DFに声をかけ、シュートコースを限定させ、
フリーのFWを作らないようにポジション修正も行っている。
さらには自分自身も小刻みなステップを踏み、適格なポジションチェンジを行っている。
「さすが高橋だな」
CFの加藤が呆れたように言う。
「味方の時は頼もしいが敵だとしんどいな。」
OMFにいる佐藤が全員の意見を代弁する。
今やっている練習は、攻撃陣と守備陣に分かれて4対4の局面の練習を行っていた。
「だいぶ攻撃陣は苦労しているようだな」
監督室から見ている俺でも状況が手に取るようにわかった。
「なかなかこのレベルにいるようなGKじゃないからな。
ゴールを奪うのも至難の業だ。」
高橋は自分の能力にあぐらをかかず、周りと協力することができる。
彼の最大のストロングポイントは、周りを使えることだ。
それをあいつほどの能力の人間ができれば、なかなか攻略はできない。
コンコン
扉をたたく音がする。
「入れ」
「失礼します」
高橋が入ってくる。
そこから10分課題に関して話し合った。
「ところで来週練習試合をしたいと思う」
ふいに俺がそう言うと
「どことですか?」
驚いた顔でこちらを見てくる。
「関東大瑞穂高校だ」
さらっと爆弾発言。
「あの~去年の神奈川県を制覇した高校ですよね?」
半信半疑どころかかなり疑っている。
「うちが相手になると思いますか?」
ごもっともな意見だ。
「まぁ、現状だと難しいのはもちろんだが
いい勝負はすると思うぞ」
そう言う俺に
「その自信はどこから来るんですかね」
苦笑いで返事をする高橋。
「だってお前が無失点で抑えるんだから、負けはないだろ」
真剣な眼差しで高橋に言うと
「ずるい言い方ですね。
わかりました。期待に応えてみせます。」
覚悟は決まったみたいだな。
「まだ誰にも言うなよ。
後日みんなに発表するからな」
「わかりました。」
高橋が部屋を後にする。
「高橋がいれば、試合としては成り立つからな。
あとは、どう組織的に戦えるか。」
「これから忙しくなるな」
気合を入れた俺は、強豪との試合をイメージしながら
GKの欄に高橋の名前を記入した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
<4-2-3-1>
CF:加藤
OMF:佐藤
DMF:
SB:橋本(LSB)
CB:
GK:高橋
「あの~俺忘れてません?」
宮本が部屋に入ってきた。
「おう、忘れてたわ」
がっつり忘れてた。
「一応キャプテンなんですけどね」
そう言う宮本に
「まぁ、おまえなんてそんなもんだ」
苦笑いな俺。
「じゃあ、ラストやるか」
「お願いします!」
就任して1週間。
あっという間に時間は過ぎていった。
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