第12話「そんな奴いたわ」
「じゃあ、早速自分で考えた長所と短所を教えてくれ」
そう声をかける。
佐藤があれだけしっかり考えてきた余韻があり、
期待値があがってしまっていた。
「監督、わかんなかったです!」
笑顔ではっきりと透き通る声でそう加藤は言い放った。
「はぁ?」
すっとんきょな声が出てしまった。
「精一杯かんがえました。自分の良いところや悪いところ。
他人にも聞いてみましたし。」
「でもしっくりこなかったんですよね。例えばオフザボールの質が高いと言われても、
空いているスペースに走っているだけですし、シュートが正確だと言われても、
逆にGKとの1対1をどうやって外すのって思っちゃいますし」
「そ、そうか」
苦笑いな俺。
そういえばいたな、こういうタイプ。
一言でいえば天才タイプ。感覚で選択するプレーが合理的な結果を生むタイプだ。
「なのでわかりません。
でも足りないところは少しあります。」
「どこだ」
気持ちを切り替えて話を聞く。
「経験です」
「どんな経験だ?」
「難しいと感じるDFとのマッチアップ経験が少ないんですよね。
うちのチームで一番は森山だとは思いますし、外からの評価もそうだと思うんですが、
あいつフィジカルだけで穴が多いんですよ。
まぁ、高橋が最終的に止めるので問題はないんですけど。
俺も止められますし。」
驚愕している俺がいる。
まさかそんな風に森山を見れていたとは。
これはいい意味で加藤の印象が裏切られたな。
「そうか。よくわかった。
今日はこれぐらいでいいぞ。」
拍子抜けした顔でこちらを見てくる加藤だが、
「わかりました。」
と言って部屋を出て行った。
ここから半分のメンバーとの面談を終えた俺は、
みんなの努力が見えたことに喜びを感じていた。
「よし、これから俺がやらないといけないことは・・・」
電話を手に取るととある所に連絡をする。
「もしもし」
そう言う俺に
「久しぶりだな」
電話口から懐かしい声が聞こえる。
「とうとつで悪いんだけど、練習試合の相手になってくれないか?」
急な提案にびっくりしているようだ。
「うちがか?」
とまどいを隠せていない。
「まぁ、何軍で相手してくれるかは任せるから」
そう言う俺に
「自信があるんだな?」
電話口で気迫を感じる。
「まだまだだよ。
でも原石はいるから、ちょっと刺激が欲しいってところだな」
「わかった。さすがに一軍は無理だが、期待にこたえるように頑張らせてもらうわ」
「ありがとう。来週の土曜日でお願いしたい」
「了解した。
じゃあ、またな」
そう言うと電話が切れる。
「さぁ、次のステップだ。」
気合を入れる俺。
忘れないうちにCFの配置に加藤の名前をそっと記入した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
<4-2-3-1>
CF:加藤
OMF:佐藤
DMF:
SB: 橋本(LSB)
CB:
GK:
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