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7番目のシャルル、聖女と亡霊の声  作者: しんの(C.Clarté)
第九章〈二度目の戴冠式〉編

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9.1 戴冠式のマーチ(1)

 オルレアン包囲戦後の選択肢はいくつかあったが、最終的に「戴冠式を挙行するためランスに行軍する」と決まった。


 ノルマンディーとアンジューの境界で戦おうが、パリ奪還に向かおうが、リスクはつきもの。それぞれを天秤にかけて考えた。ジャンヌとの約束もある。


 パテーの戦い前後のリッシュモンの動向も、理由のひとつだ。

 ランス行軍中の最大の懸念だった「フランス西部の防衛」を任せられると考えた。私は直接対面していないが、ブサック元帥と情報交換しているようだし、こちらの事情はある程度伝わっている。


 それに加えて、リッシュモンの妻マルグリット・ド・ブルゴーニュが里帰りしているという情報も届いていた。

 元王太子妃は聡い。フランス王妃になり損ねた恨みではなく、国の安寧を願う《《王妃の矜持》》を持ち合わせている。以前会った時にそう確信した。

 ランスまでの行軍中、ブルゴーニュ公とブルゴーニュ派の敵意を抑えてくれると期待したい。





 この物語で、私が軍を率いて進軍するエピソードは今回が初めてだったな。


 プレートアーマーとサーコートで完全武装し、王冠を模した兜をかぶると、馬鎧をつけた軍馬に騎乗した。軍資金にそれほど余裕ないが、「戴冠式の行進」と触れ回っているからには、フランス王にふさわしい軍隊を示さなければならない。


「目的地はランスのノートルダム大聖堂だ。一同、進め!」


 1429年6月29日、戴冠式に向かう行進キャンペーンが始まった。

 なお、ランスまでの道中にはブルゴーニュ派の軍隊が駐屯する都市が17カ所もある。


 オルレアン包囲戦勝利の勢いは健在で、フランス軍の士気は高い。

 しかし、ジャンヌ・ラ・ピュセルのカリスマ頼みといった一面もあり、ジャンヌの気まぐれで士気が左右する不安定さも持ち合わせている。行く先々で戦闘する事態は極力避けたい。


 東洋の兵法「兵は拙速を尊ぶ」にあやかり、超高速でランスを往復して戴冠式を済ませることができればいいが、最悪の場合、町と町のはざまで挟み撃ちにされる危険が考えられた。


 武装して大軍を率いるのは、権力を見せつけるようであまり好きではない。

 しかし、非武装でランスへ向かうのは危険すぎる。


 戦闘を回避する策をいくつか用意しているが、行軍のゆくえは、各都市に駐屯するブルゴーニュ軍の出方次第だ。


 ちなみに、ブルゴーニュ派が駐屯する都市17カ所のうち、最大の難所はトロワの町だろう。


 かつて、母妃イザボー・ド・バヴィエールとブルゴーニュ無怖公が対立政府を樹立し、無怖公の死後に、私を廃嫡してイングランドに王位継承権を売り渡す「トロワ条約」を締結した。


 これらのなりゆきから、トロワの町は、シャルル七世に反発する因縁の地と見なされていた。


「大丈夫ですよ。あたしの《《声》》は『また奇跡が起きる』と言ってますから」

「ジャンヌの声は頼もしいね」

「任せてください!」


 ジャンヌはいつにも増して張り切っていた。

 当初の話だと「ランスでの戴冠式」が最終目標だったから、目的地が定まり、私を先導できることが嬉しくてたまらないようだ。


「ジャンヌの願いが叶ってうまくいくように。神の加護を祈ろう」

「それと、大元帥が来てくれるように」

「それはどうかなぁ」


 ジャンヌはリッシュモンの戴冠式出席をまだ諦めてないようだが、そっちの奇跡は遠慮したい。


「それから、ブルゴーニュ公も来てくれますように」

「そんなことまで?」


 ジャンヌは、神だの声だの、天使や聖人だの……、神がかり的なことを言ってばかりだが、現実的な行動力も持ち合わせていたので、口述筆記でブルゴーニュ公に手紙を書き、なんと戴冠式の招待状を送っていた。


 リッシュモンは来ない方がいいが、ブルゴーニュ公が本当に来たら、それは間違いなく奇跡だろう。


 もし、ブルゴーニュ公がランスの戴冠式に出席するとしたら。

 それはイングランドとの同盟を破棄して、シャルル七世のフランス王位継承を支持することを意味する。父王シャルル六世の時代から続くフランスの内乱は終息し、さらに英仏・百年戦争の終戦までもが現実味を帯びてくる。


 これを奇跡と言わずしてなんと言う!


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