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7番目のシャルル、聖女と亡霊の声  作者: しんの(C.Clarté)
第一章〈逆臣だらけの宮廷〉編

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1.9 逆臣だらけの宮廷(2)シャステルの処遇・改訂版

 これほどの無礼は初めての経験だ。


「リッシュモンはイングランドとブルゴーニュにいた時間が長いからこちらの事情を知らないんだ!」


 私はいてもたってもいられず、リッシュモンに食ってかかった。

 もはや会議どころではない。


「かねてより殺害を計画していたと聞きました」

「そんなわけがないだろう! 無怖公は王弟オルレアン公を殺害した前科がある。だから、モントロー橋で私を守ろうとしてあんなことに……」


 ちなまぐさいあの惨劇がまた脳裏に浮かんできた。

 酸っぱい胃液が込み上げてきて袖で口元を覆ったが、さらにめまいまで襲ってきた。大勢の前で倒れることだけは避けようと、私は玉座に戻って腰を下ろし、ぐったりと背もたれに体を預けた。


「シャステルは私の恩人だ」

「犠牲者の遺族からすれば憎き敵です。犯人をかばうなら、陛下も敵とみなされるでしょう」


 冷徹な声に身がすくむ。自分が責められているようだ。

 犠牲者の遺族、つまり無怖公の子どもたちのことだ。現当主のブルゴーニュ公フィリップとリッシュモンは幼なじみだと聞いている。


 ああそうか、わかったぞ。

 リッシュモンは私を断罪するために来たのだ。

 だから、私のことを嗅ぎ回っていたのだ。そうとしか思えない。


「そこの大元帥を罷免するべきだ!」


 断罪を要求されたシャステルは、居合わせた重臣たちが守るように取り囲んでいた。全員がリッシュモンへの敵意を隠そうともせず、口々に非難していた。


「私は大元帥として公正な正義を下そうと思ったまで。貴公らに非難する資格はない」


 騒ぎから逃れようと耳を塞いだ。

 脳裏にはあの日の光景が浮かび、いっそ意識を手放したくなる。

 気分が悪い。頭がぐらぐらする。私はどうしたらよかったんだ。


「静粛に!」


 紛糾する場を収めたのは、断罪されているシャステル自身だった。


「王の御前であるぞ。これ以上、陛下を嘆かせるな!」


 老いを感じさせない声を張り上げ、一堂に睨みを効かせると、次にリッシュモンに向き直った。


「そうだ。私がこの手で無怖公を殺した。王弟とアルマニャック伯の報復をしたのだ」


 怒るわけでも、媚びるわけでもない。

 シャステルは落ち着いた口調で告白した。


「罪を認めるのだな?」

「神に誓って認めよう。自分がやったことを後悔していないが、大元帥が『罪を贖え』と言うなら従おう。貴公にはその権利がある」


 当初、リッシュモンは処刑も辞さないつもりだったようだが……。


「連れて行け」

「待て! 待ってくれ……」


 私は目の端ににじむものを押さえながら、拘束されて連れていかれる罪人を引き留めた。


「彼は自白しました。王は罪人と話してはなりません」

「くっ……!」


 私は怒りを抑えながら、非情なリッシュモンをにらみつけた。

 涙ぐんだ目で睨まれても迫力に欠けるだろうが、精いっぱい虚勢を張った。


「貴公に話すなら構わないだろう……」


 玉座から見上げたリッシュモンは、憎らしい尊大な態度でいるかと思いきや。


(あれ?)


 眉間にはいつも以上に深いしわが刻まれていたが、恐ろしげな形相ではなく、感情をこらえているように見えた。引き締まった口元も、何か言いたいことを堪えているようで、喉元まで出かかっていた非難の言葉が消えてしまった。


 そのとき、ふと思いついた。リッシュモンとシャステルは同郷で、私の兄が王太子だった頃はともにパリの宮廷にいたはずだ。


「大元帥とお呼びください。陛下から賜った称号です」


 リッシュモンは玉座の前で膝をつくと、「話を伺いましょう」と私を促した。


「シャステルとは知り合いだったのか?」


 少し間を置いて、リッシュモンは「いいえ」と否定した。


「ですが、どこかですれ違ったことくらいはあるかもしれません」

「頼む。ひどい処遇はしないでくれ……」


 最終的にシャステルの財産没収と宮廷追放が決まったが、私は生涯にわたってひそかに生活費を送り続けた。




(⚠️追記で余談。リッシュモンに無怖公殺害の件で断罪されたシャステルと他数名。シャルル七世は当初反発するが、ブルゴーニュ公フィリップが提示した和解の最低条件だったため、シャステル自身が断罪を受け入れ、シャルル七世も泣く泣く折れる。シャステルは本来受け取るはずだった年金も没収され、王と完全に縁を切ることが決まったが、シャルル七世はひそかに私財から生活費を送っていたとか)

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