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第1話 能力の目覚め

 才能とか、努力とか、聞き飽きた言葉だ。


 この世界にダンジョンが出現して以来、才能といえばユニークスキルだ。

 その質が良いか悪いか。それで全てが決まる。


 無論、ユニークスキルの中にも当たりと外れがある。

 

 超速レベリング。

 テレポートや高速移動、経験値倍増系。

 それを用いて効率よくレベルを上げることをいう。


 この世界はレベルの世界。

 レベルが高いと才能もあって努力もしているといわれる。


 俺の今のレベルは599だ。世界最高レベルが一兆を超えてることからも、そのしょぼさが良く分かる。

 

 かくいう俺も、ユニークスキルを持ち合わせている。

 それもレベリングに役に立つ効率系スキル。

 

 その名も『リセット』。

 ダンジョンのどこにいても、初期位置に移動できるというスキルだ。

 全く、嫌になる程弱い。

 ダンジョンを出てから入るのに五分とかからないのに、何の意味がある。


 そんなくずユニークスキルでも、俺は叶えたい夢があった。

 世界一の冒険者。

 子供みたいな夢だが、俺はなれると信じていた。

 少なくとも最近までは。

 

 それが打ち砕かれたのは会社の後輩だ。ダンジョン挑戦一週間たたずでレベル1000。話に聞いたことある天才タイプ。聞けば経験値十倍スキルらしい。話に聞くのと、背後にいるのでは訳が違う。

 俺は25歳にして布団で泣いた。


 努力はした。

 このユニークスキルでもめげずに毎日コツコツと。

 それでこのレベル。

 ようやく次のランクのダンジョンに挑めるくらいになった矢先に、これだ。

 

 冒険者は趣味だ。職に出来るのはごく一部。

 いつ辞めたっていい。ゲームと同じ。

 むしろ、現実的なことに時間をさけるならその方が良いのかもしれない。


 そんなことを考えて、俺は初心者向けダンジョン『立原ダンジョン』に来ていた。職場から近い東京都品川区にあるため、俺はここを愛用していた。


 別に敵にやられても死ぬわけじゃない。ダンジョンの前にほうり出されて一週間、どのダンジョンにも入れなくなるだけ。だから変に慎重になる必要はないのだが、一週間は俺にとっては大きかったため、気を付けていた。

 

 今日で最後。

 18から始めて7年か。

 俺にしちゃあ続いたほうだ。


 600レベルで切りよくやめる。そう考えていた。


 敵は水色のスライムとちっちゃなゴブリン。倒し慣れてもはや友達。

 三十分ほどでボスまで倒した。

 

《レベルアップ》


 脳に声が響く。

 どういう理屈かは知る由もないが、今じゃ当たり前で気になりもしない。

 でも、最後と考えると、この馴染みの声も感慨深い。


《ステータスが上昇しました》

《新たなスキル『メイヤ・フレイム』を獲得しました》


『メイヤ・フレイム』

脱初心者レベルのスキルではある。だが、それで劇的に俺の冒険者人生が変わることはない。


《ユニークスキル『リセット』が成長しました》


 ……へ?


 ユニークスキルに言及されるなんて、今まで一度もなかった。成長? なんだそりゃ。たまに熟練度によってレベルが上がるユニークスキルがあると聞くが、それとは違うっぽい。

 戸惑う俺をよそにそいつは続ける。


《他冒険者のステータスをリセットできる『ステータスオールリセット』を獲得しました》


 ……ほ?


 なに言ってんの、ステータスのリセット? 他の冒険者のステータスをリセット? オールリセット? 


 疑問符ばかりが浮かぶ。しかしそれきり声は聞こえない。


 なぜか慌ててステータス画面をひらく。

 空中で人差し指と親指をくっつけて話す動きをすると、空中にメニューが現れる。そこからステータスを選んで見る。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 能登のと はじめ 男 25歳 Lv 600


HP:1813

MP:800

筋力:720

俊敏:640

頑丈:700

魔力:830


スキル

『メイヤ・フレイム』

 『レイジ・ライジング』

 『加速:風』

 『探索:並』

 ・

 ・

 ・


 ユニークスキル

 『リセット』

 『ステータスオールリセット』

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 2個ある。

 リセットはそのままらしい。

 

 効果も分からないまま、俺はそのスキルを使ってみる。


『ステータスオールリセット』


 その瞬間、文字通り歴史に残る大事件が起きた。

 冒険者全員のステータスがレベルが1の時の値になったのだ。

 レベルの高いダンジョンに挑んでた者たちはたちまち敵にやられ、ダンジョンの前には訳も分からないまま棒立ちする冒険者で溢れたという。

 

 しかしその原因である男は、初心者ダンジョンで一人、首を傾げていたという。

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