六、ワム
ワムが来た。
「すみません、肉と野菜のはもう少しお時間いただくんですが、こちら先に、肉のワム2つです。」
キョウとミヤマの目の前に肉のワムが並んだ。
木の皮をめくる前からものすごい匂いだ。
目の前でアイザックが滝のようにヨダレを垂らしていた。
ミヤマのお腹が盛大に鳴った。
しかし二人とも手を付けない。
「気にしないで。僕のもすぐ来るから先に食べて。」
アイザックの喉がゴクリとなった。
キョウとミヤマは顔を見合わせると同時に木の皮をめくった。
煙と、薫り付いた肉の匂いが顔めがけて広がった。
一口食べるなるほど超柔らかい。水分も肉汁も全てが閉じ込められている。みずみずしくふわふわだ。華やかな香木の香りが肉に染み込んでいる。味付けは塩だけだが十分だった。
あまりの美味しさにミヤマを見る。
ミヤマのほっぺは本当に落ちそうだった。ミヤマ自身も落ちそうだった。
「美味しい〜」
二人の声が重なった。
アイザックはもう空腹に泣きそうだった。
「肉と野菜のワムです〜」
女性の一言に思わずアイザックは手を合わせた。
肉と野菜のワムに使われている香木はキョウとミヤマのとは違うようで、華やかというよりはさっぱりした柑橘系のような香りがしていた。
「肉はみずみずしいのに野菜はシャキシャキだ〜しなってない!全然しなってないよ!」
アイザックが野菜を食べて声を上げた。
「肉と野菜を一緒に食べたときの食感…最高だよ。シャキシャキとふわふわ、シャキフふわ!タレも効いてる〜」
アイザックは再び手を合わせた。こちらは塩ではなく甘じょっぱいタレがかかっていて、それがまた香りに合うのだと彼は力説した。
三人とも黙々と食べ続け、ものの5分強で食べ終えた。
全員の顔が満足感に溢れていた。
人生初のワム体験は三人の中でリピート確定案件となった。