責任と罪悪感と威光
誤字脱字あったらごめんなさい
アリシアが来て、話が終わった後、リーシアとアリシアの分のご飯を準備してこれからの方針を決めた。夜たちはラージア国の王都に戻るのだが、アリシアはここに1人で残り孤児院を再開してくれるとのことだ。
だが、女性ひとりで心配だ。そう思いそのことをアリシアに聞いたのだが、以外に強いらしい。リーシアがアリシアのステータスを鑑定して紙に書いてくれたのだがとても凄かった。ほんとにシスター?
これである。
名前:アリシア・シーリス
Lv76
年齢:74歳
種族:半人半エルフ
性別:女
HP:5,470
MP:56,970
固有スキル:天性,天恵
スキル:【治癒魔法Lv11】【光魔法Lv4】【水魔法Lv2】【風魔法Lv2】【祈りLv10】【願い事Lv8】【裁きLv3】【魔力操作Lv8】【精神統一Lv11】【飢餓耐性Lv1】【精神擁護Lv3】【護りLv5】【並列処理Lv4】
【家事Lv4】【料理Lv2】【癒雨ノ歌Lv7】【奇跡Lv1】
加護:無し
称号:聖女となる者(聖女候補)、癒しの歌姫
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スキルLv11が2つも…、超越者だったのか…。
【祈り】―神に祈る。レベルが上がるほど恩恵を得る。―
【願い事】―【祈り】から生まれた派生スキル。発動すると2分の1の確率でいい事が起こる。このスキルは1日1回のみ発動可能。とても稀なスキル。―
【裁き】―発動対象に試行し、真実を述べているかを判断する。虚言だった場合そのものに何らかの裁きを与える。また、そのものが犯した罪の重さに比例し、苦しみを与える。―
【精神統一】―無心になり己を律する。能力の向上。スキル魔法の精度の向上。―
【精神擁護】―自分の精神を護る。―
【護り】―発動対象に魔力が続く限りシールドを張り続ける。―
【癒雨ノ歌】―たちまちになんでも癒し、浄化し、昇華する。歌は3つある。願いを具現化する。―
【奇跡】―滅多に発動しない。どんな苦しい場面であってもたちまち好転する。―
確かにこれは凄い。戦闘用のスキルは無いが【裁き】は悪党からしたら絶対発動して欲しくないスキルだ。1回でも生き物を殺した場合それと同様の苦しみが待っているからだ。ほんの一瞬の苦しみだが精神的には長い。これは怖いな。
恐ろしい実力の持ち主だなぁ…。
それに固有スキル…天性と天恵。
確か天性はあらゆるスキルを取得しやすくなるで、天恵が幸運が来る・スキルの経験値上昇だったっけ。
そんな事を思いながらアリシアの方を見ると、彼女は夕食前の祈りを終えたところだった。70年もそんなに祈ってたらそりゃ10にもなるよなぁ。
うん、これなら安心かな。
「あとのことはすべてありしあにまかせる。」
(後のことは全てアリシアに任せる。)
そう言って机の上に金貨を500枚ずつ入った袋を8袋出した。そして大勢で食事をとる机に沢山の肉と野菜、調味料。毛布や衣類、食器具など生活に必要なもの全てを机に出した。机からこぼれおちそうなほど出したが夜の魔法鞄にはこれの20倍の食べ物や日常品が眠っている。一ヶ月前に暇すぎまで魔力を無駄遣いした残骸達だ。
「ありしあこれでだいたいなんにちもつ?」
「前と比べると節約して大体2ヶ月くらいは…。」
驚きながらアリシアは答えた。
「そうか、ならいっかげつにいっかいりーしあにこれをとどけてもらう。おねがいしてもいい?」
「はい、お任せ下さい!」
口の中のものを飲み込んでからリーシアが返事をする。頬にソースが着いている。それを見て夜は可愛いなぁ。うちの子はと思った。
(通信器具は確かあまりがあったはずだから…。定時連絡や緊急時にはこれでしてもらって。)そう考えながら夜はせっせと予備の魔法鞄に机の物を片付けていく。
夜は水晶の置物をアリシアに手渡した。
「こちらは?」
「つうしんようのまどうぐだよ。まりょくをそそげばぼくのところにれんらくがくるからそれでれんらくしてほしい。」
(通信用の魔道具だよ。魔力を注げば僕のところに連絡が来るからそれで連絡してほしい。)
「分かりました。何から何までありがとうございます。」
「いいよ、これは、いままでしてあげられなかったつぐないだから。だいたいのことはきめたし、ふたりともおふろにはいっておいで。ぼくはようじがあるからあとではいるよ。」
(いいよ、これは、今までしてあげられなかった償いだから。大体のことは決めたし、2人ともお風呂に入っておいで。僕は用事があるから後で入るよ。)
「分かりました。行きましょうアリシア。」
「はい、リーシア様。」
ご飯を食べ終わり2人は食器を片付けてお風呂へ向かった。
それを見届けて夜は街中の上空へと来ていた。
「さむっ…うわぎきてくればよかったなー。」
(寒っ…上着着てくればよかったなー。)
そう思いながら夜は魔法鞄から宝石を取り出す。魔力を込めた宝石だ。その宝石を手のひらに置き、魔法を想像しながら魔力を込める。魔力不足になるのは困るので、リーシアが作ってくれた首飾りからも吸い出し自分の体を伝わせ宝石に込める。
風が花びらを攫っていくように悪いものや邪気、死体が花びらとなって天に昇り浄化されるイメージ。
そして新たな魔法を創り上げる。
―花飛浄化―
魔法を発動した瞬間宝石は砂となり弾け空気に揺られ風に乗り街を駆けていく。イメージ通りに邪気や死体が花びらとなって消えていきその花びらも浄化が終わると消えていった。
「これでよし…。」そう思い気が抜け魔力を使いすぎたせいもあるだろう。体がフラフラと揺らぐ。
(急いで降りないとやばい…)
夜は急いで教会に戻り芝に足を着いた。尻もちをつき息切れを起こしている。冬なのに汗が首を伝う。
「はぁはぁ…、このからだであれはきついな…ははっ…」 夜は魔法をやり切ったことに喜び1人笑う。それを見守っていたように星々はキラキラと光っていた。
(これで疫病とかが流行ることもないだろう。アリシアの願い通り子供の亡くなる数も減るはずだ。もっと早く来てあげればああやって死ぬ子も減ったのに…ほんと僕ダメだなぁ…ははっ…)夜は自分の行いを悔いて目元を腕で隠し涙を流した。
「ごめん…ごめんなさぃ…」
この小さな肩にのしかかる大きな責任…一体誰が想像つくだろうか。
「なよなよしてちゃだめだっ!」
そう言って夜は涙を拭ってお風呂へ向かった。
お風呂へ入ると黒豹族の男の子と猫族の男の子がお風呂に入っていた。
(そこは楽園ッ!ケモノパラァダァィス!!!……コホンッ…おっと失礼。)
「しぜ、るくあいっしょにはいろー。」そう言って2人に駆け寄る。
ルクアは黒豹の男の子だ。黒髪に金の目少しガーディルに似ている雰囲気を持っていた。
シぜは「いいよ〜。」と言う。ルクアは嫌悪感むき出しで風呂場から出ていこうとした。
(ほんとにあの黒猫に似てるなぁ〜。よーし!)
「るくあー?いっしょにはいろーよ〜!」そう言って手を引っ張ろうとした。その手に脅えたようにルクアは吠えた。金色の瞳が一瞬赤くなった。
「ッ!!…やめろッ…!!」
それがいけなかったのだろう。叫び声と共にルクアの爪は空を斬り夜の目を裂いた。ほんの些細な出来事だったのだ驚いて振り払っただけそれが幼い自分の目に当たってしまっただけの事だった。
「ゔっ…ぅぅぅ…!」
痛い…。痛い…痛い…ッ…。
夜は痛みで地べたに這いつくばった。
全身の熱が裂けた目元に集中していく。痛みに耐えかねて目を手で覆う。指、手、肘を伝って赤い血が風呂場の床に滴り落ちる。流れている湯と血とが混じり辺りには血の匂いが漂っている。
「ハァ…ハァ…ッ!!……!!?…おっ、俺…っ…。」
ルクアの爪からは血がぽたぽたと落ちていく。その指を見てルクアは動揺する。口をパクパクさせるが混乱して言葉を発せない。恐怖の余り喉から唸り声を出していた。
(大丈夫…って言わなきゃ…ルクアに…)
シゼは驚いて泣いている。
叫び声に気づきアリシアとリーシアがお風呂場へ来た。
「大きな音がしましたが…どうしたのですか…?……ッ…!…主神様ッ…!!!」
「主様ッ…!!…主様しっかりしてください!!主様…!!」
2人とも夜の姿を見て血の気引いている。
「大丈夫…。大丈夫だからどっちか治してくれると助かるな…」痛みに耐えながら口元だけ口角をあげて言った。
2人が同時に治癒魔法をかけた。
夜の目は瞬時に元通りになったが場の空気は凍ったままだった。
夜は少し落ち着き、深呼吸する。
隣でリーシアは空気がピリつくほどに怒りを顕にしている。
(僕が怪我したらこうなることも分かってたのにな…。)また自分の浅はかな行動について考える。でもそれより今大事なのはルクアの方だ。今も狼狽え夜の目が治り安堵したように見える。安堵と恐怖、罪悪感のような感情が入り交じった顔をしている。
こういう時一番最初に言わないといけないことは一つだけだ。
血を失ってまだ血が廻りきってないのだろう。よたよたと夜はルクアに歩み寄り血まみれの手を握った。
一呼吸おいて、「ルクア…こわがらせてごめんね。大丈夫だよ。大丈夫。」その瞬間その場にいた全員が夜に聖母のような存在を重ねた。
また拒否されたらどうしようとルクアを握る夜の手は震える。それに気づき少し安堵し呆れたように「ヨル様…手…震えてます…。」と泣きそうな顔で笑った。
そんなルクアを見て夜も「えへへ…」と安堵し笑ったのでした。
その後リーシアとアリシアにはこっぴどく叱られた。
リーシアはあの時すごく怒っていた夜がルクアを許したことでその怒りもどっかへ行ったらしい。
でもその後3日ほどは片時も夜から離れなかった。その3日の間に孤児院を増築し帰りの馬車の手配を終わらした。馬車の手配をする時に金貨100枚と足下を見て大金を吹っ掛けられリーシアが脅し…もとい交渉をして通常の値段の金貨25枚で手を打った。10人の団体だからその値段が妥当だろう。
朝方手配した馬車の場所までみんなで歩いていく、外は寒くくしゃみが出てしまう。
(あー。またおしりが痛い日々が続くのか…でもリオ達に会えるっ!)
「じゃぁ、ぼくたちはいくね。」
「はい道中お気を付けて。」アリシアが手を組みながら胸の前で祈っている。
「アリシアばいばい!」
「ばいばーい」
シルとシゼは手を振りアリシアは振り返した。
全員馬車に乗り込んだのを確認して夜たちは王都へ向かった。
整備されていない場所を通るとガタガタと揺れおしりが痛い。休憩を挟みながら馬車はどんどんラージア国に向かっている。
2時間も経つとさすがに暇になる。
よし、ルクアからかおう。あんな事があったが夜はまだルクアと仲良くなる事を諦めてなかった。
「るーくーあー!」
そう言ってルクアの膝に座る。
「なっ…何してるんすか…ヨル様…。」
「ぼくなりのあぷろーちだよ〜」
「あ、アプローチって…」
内心満更でもなさそうに耳が揺れている。頬も少し赤い。とても可愛い。つい笑顔になってしまう。そんな笑顔の夜を見てルクアはさらに頬をあからめる。1時間ほどずっとこの状態だ。
リーシアがこちらを見ているが気にしないでおこう。
馬車に乗っている間夜はずっと魔法を使って馬車を浮かしていた。その方が馬も早く王都に着いてくれるからだ。昼ごはんになったらサンドイッチを食べ、暇な時はシルやシゼ、ルクアやフェリテに数字や文字を教えた。
シルやフェリテの髪をアレンジして遊んだり魔力の使い方を教えたりした。
日が落ち夜になり寝ていると遠くから狼の遠吠えが聞こえた。微かな音だったが夜は起き上がる。森の奥がなんだか騒がしい。
耳を澄ますと金属の鳴る音が聴こえた。
「りーしあ…」
夜の声にリーシアがすぐさま反応し起き上がる。
「はい。」
リーシアは夜の異変に気づいていた。あの事件から夜は夜中によく目を覚まし、まるで別人の…神の威厳に満ち溢れるようなオーラを出す時がある。そしてその時は決まって目が金色に光るのだ。目の奥には模様が浮かび神聖なものを彷彿とさせる。リーシアはそれに気付いていた。
『神としての自覚がそれを無意識的に呼び起こしているのだと。』
「向こうに連れて行って…」
「あちらは…分かりました。」
リーシアは夜を抱き野営地に結界を貼り音の鳴るほうへ飛んだ。
10kmほど進んだ当たりで音が鮮明に聞こえてきた。
森の開けたところで狼と冒険者が向かい合っているのが見えた。
『貴様らか…!!この森を穢しているのはッ…!!』
そう狼は吠えていた。狼と言うより狼型の魔物だった。その声は夜とリーシアにしか聞こえない。特別なスキルを持たない限り魔物との会話などできないのだ。
ただ唸っているようにしか聞こえない。冒険者達はピリピリとした空気の中武器を構えるしか無かった。
「あそこに下ろして…」リーシアは指示通り夜を狼と冒険者が向かい合っている真ん中に下ろした。夜は後ろを振り返り冒険者達に「あの子達が警戒してる武器を下ろして…」と一言言った。それは凪いだ水のように落ち着いた声だった。
「だめだっ…!危険だ…ッ…!こいつらがいつ手を出すかわからねぇ!お前も危ないから早くこっちに来い!!」夜の言ったことを流し夜たちを心配して冒険者はこちらへ来いと言った。
そんな冒険者を見て「いいから言う通りに…大丈夫…。」
夜が微笑みそう言うと納得いかなそうに一人一人冒険者達は渋々武器を収めた。
夜は前を向き狼型の魔物の群れに近づいていく。
リーシアはそんな夜の行動を動かずじっと、見届けているだけだった。事の顛末が終わるまでをただ見守るだけだった。
『君の事情を教えてくれないか…』
1番大きな狼に近づき金色の瞳を真っ直ぐ向けて夜は話しかけた。
『何だ貴様は…貴様も奴らの仲間か…忌々しい…食ってやるッ…!!』
そう言って夜に噛み付こうとしたが…それは叶わなかった。狼の大きな口は夜の小さな手に止められていた。夜は狼の鼻をそっと触り、自分の魔力を少し流した。
狼は突然流れてきた魔力に驚いたがその心地良さに開いた口を閉じその魔力に意識を集中させた。
『なんだ…この…心地よい感覚は…汝…一体…そうか…貴方様が…。失礼をお許し下さい。我はこの森の魔物を統べているドューウォンと申します。』ドューウォンはそう言い夜の前に伏せたそれを見た後ろの冒険者たちは驚き立ち尽くしていた。夜は後ろのことなど気にせずドューウォンとの話を続けた。
『ドューウォン…何があったか教えて欲しい…』
『はい、実は…』ドューウォンが話してくれたのはここの森に最近変な者がやって来た。その者が出入りするようになってから森の邪気が一気に増えそれに影響され暴走している仲間が増えていると言う話だった。
『邪気が体に堪り暴走するというのは我々の天命だと承知しております。我々は空気中の魔力吸って生きる糧にしている。魔力が邪気で穢されれば我らも穢れ暴走していく…だが我はここの統治者として同胞が苦しみ死んでゆくのが耐えられぬ…。どうか…貴方様のお力をお貸し願いたい。』
そういいドューウォンとその後ろにいた狼型の魔物達は一斉に夜に頭を垂れた。
夜は微笑み目を細め『君たちの願い受け入れます…』と言った。その姿はまさしく神その者だった。
『感謝致します…。』
夜はドューウォンと話し終えたあと森へ帰るよう指示しリーシアに「上に行こう…」と言った。
リーシアはまた夜を抱きかかえて空へ飛ぼうとする。
「待ってくれ…!!君たちは一体……」
後ろで叫ぶ冒険者を気にもせずリーシアは夜の指示に従い空へ飛んだ。
「今から魔法を使う…リーシアの魔力も借りるよ…」
「どうぞお使いください…。私達は貴方様の為に存在するのです。貴方様の思うがままを成してください。」
夜は深く呼吸をしポケットから魔力を貯めた宝石を5個取り出す両手にのせたそれに魔力を注ぎ首飾りからも取り出しリーシアからも魔力を吸い取った。魔力の玉が夜の手から徐々に膨らみ気球のように上へ上がった。
そして夜は魔法名を口にする。夜はこの魔法を作っていない。作ったのは今。覚醒し直感的に作った魔法だった。その魔法は森全体に広がる。
―極大邪気浄化―
(これが覚醒している主様の魔法…。)
キラキラとした夜の魔力がリーシアの魔力と混ざり会い空気に溶け込んで風に流れ駆けていく。魔力が通った場所に金と紫のカーテンのようなゆらゆらとした光が揺れている。地平線まで広がったそれが降り注いだ部分から黒い邪気の霧が解けるように消えていった。
心から綺麗だと思った。きらきらとして威光に満ち溢れていて全てを包み込むようにただすごいと思った。
リーシアの心は震えた。魅せられた。たった一瞬1回の魔法でこの規模この強大な力…全てに魅せられた。
魔力の半分を一気に吸い取られリーシアは少しふらつく。下では冒険者と違う場所から狼達がこちらを見ていた。冒険者は突然現れた綺麗な光景に目を奪われている。
狼たちは、とても心地が良いよと言うように遠吠えをしていた。『ありがとう』とドューウォンの声が聞こえた気がした。「どういたしまして…」満足そうな声で夜は呟きリーシアの胸の中で意識を落とした。
夜の口元からはスースーと寝息が聞こえる。
ただ寝ただけど安堵しリーシアは野営地に戻った。
リーシア達が飛んでいった方向を見ながら「一体なんだったんだあいつらは…」と下で見ていた冒険者は呟いた。
まだ馬車の旅は長いですね




