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世界を創った神様は人界で隠居します。  作者: ヒカゲ
人界にて
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真っ暗闇の記憶

遅くなりすみません

物心が着いた時には…もう、ひとりぼっちだった。

覚えていないけど両親は事故にあって亡くなったと聞かされた。両親を愛していた。両親がいればそれで良かった。たった2人自分の事を愛し、護り、大切に育ててくれた両親…。それだけは覚えていた。何故なら自分を温かな目で見て、話をしてくれたのは両親だけだからだ。村の人達は気持ち悪いものを見てしまったというような目で自分を見る。両親からも『あなたはなるべく外に出てはだめ…』と悲しそうに言われた事がある。あの時は何故だか分からなかったが今となっては分かる。


両親が居なくなった自分はとても無力だった。


両親が居なくなってから自分は隣の家に引き取られた。違う。引き取られたと言うよりは押し付け合いの結果ここに来ることになったのだ。ここでの暮らしは、ごみ溜めのようだった。小屋に監禁され小さな窓からしか外の様子は分からない。1日1回あるか分からない残飯のような食事。水浴びもさせてもらえない。ここの家主が機嫌が悪い時には何回も何回も『お前さえ居なければ』と暴言を吐かれ蹴られた。長い長い監禁生活の中高い小さな窓が自分の心に余裕をくれた。小さな窓からは色んなことが分かる。音、匂い、温度、光。この4つだけが自分の心を保つ唯一の方法だった。時が経ちここの家主は自分を外に出した。外に出ると自分とは違う変な生き物がいた。

()()()()というのだと言う。家主はニンゲンから、金をもらいニンゲンは自分を馬車に入れた。自分は売られたのだと確信した。売られてからも散々な扱いだった。いや。まだあの小屋の方がマシだったのかもしれない…。


自分は変な貴族に買われた…。

その貴族はコレクターで変なものが家中にあった。獣の剥製や爬虫類が黄色い液体に付けられていた。でも1番右変なのは自分と同じような種族の腕や足、尻尾があった。奥へ段々と進んでいく。部屋に入るとそこには眼球が並んでいた。自分は本能的に逃げないとと悟った。だが首の拘束具がそれを許してはくれなかった。

激痛が走り押さえつけられ薬を飲まされた。


(痛”い”ッ!!痛いッ…イタイ”!!痛イッ!!痛い”ィ!!痛い!痛い!痛い!痛い!!痛い”!痛”い”!!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い…ッ!いだ”ぃ!)



目が覚め意識がはっきりし声にならない音が部屋に響く。



視界が無い。目元にはあるはずの膨らみがなくあるのは窪みだけだった。包帯が巻かれている。


抉られた。

どうしてこんな目に会わないといけないんだろう…。どうして…。

涙なのか血なのか分からないものが頬を伝う。


すぐ側で貴族の男は高揚に満ちた声で何がを言っているが、雑音のように聞こえて何を言っているのか理解できない。自分は目を抉るためだけに買われたのだと理解した。目を抉られた後返された。しばらくして別の商館に移った。匂いや温度が全く違う…。


これから自分はどうなるのだろうか。虫けらのように死んでいくのだろうか。不安と恐怖…絶望で頭がいっぱいだった。


そんな中小さな男の子が来た。その小さな男の子は自分を欲しいと言った。


一体何なのだ。また酷いことをされるのだろうか。どうかあの貴族と同じような心の持ち主で無いことをと祈るばかりだった。そう思っていた。でも本能的にこのニンゲンは酷い事をしないかもしれないと思った。なぜかは分からない。何故だろう。匂いでも音でも温度でもない。気だろうか。何故だかこの男の子からはすごくポカポカした様なものを感じた。


自分が他の奴隷たちと一緒に男の子に買われたあと、掃除をしていたらしいが自分は目が見えないので手伝える事は全く無かった。男の子からそこで休んでてと木陰らしき所に連れられ待機を命じられる。



待機している間一緒に買われたであろう奴隷達の声が聞こえた。木漏れ日だろうか体の所々が温かい。待っている間少し肌寒い風が体を撫でていた。





一体何なのだこのニンゲンは。

奴隷にこんなに親切にするなど変わっている。










掃除が終わったあとニンゲンの男の子は奴隷達の傷を治していった。奴隷達の反応からして治癒に長けているのだろうか。正直この男の子の意図が分からない。



自分の番が回ってきた時死の宣告のように恐怖を感じた。もし目を治されたら…またあの時のように侮蔑の目を向けられ嫌悪され戻されるかもしれない。怖い怖い怖い…。


治して欲しいでも治されたくないその葛藤の中…、男の子は大丈夫だよと言った。このニンゲン知っているのか…???



最後の希望を託すように男の子の治療を許した。目が戻って行く感覚が気持ち悪いでも確実に元の形に戻っているのが分かった。すごく繊細に戻してくれているのがわかる。普通の子供にこんなことが出来るのだろうか?そう思いながら治療が終わりゆっくりと目を開ける。前のニンゲンは侮蔑のような目を向けずなにかに見惚れるように…『綺麗…』といった。




『綺麗』



その言葉を聞いた途端…涙が溢れた…。


どうして…。どうして、どうして、どうしてッ…!

何かがこみ上げてくる。目頭が熱くなり口を歪に噤む。頬に涙が落ちる。そんなこと言われたのは何年ぶりだろう。愛してくれた両親にしか言われた事の無い言葉。皆この目を嫌った気持ち悪いと。



何故だか分からない。



でも、本能的に感じる。この()()()()は嘘をつかない。信用出来る。この呪いのようなものから解放されたように救いの手を差し伸べるように彼は『綺麗』とそう言った。彼に分かるだろうか。その言葉が、その微笑みが、()という個人をどれほど救い癒してくれたか分かるだろうか。生まれてからこれには嫌な思い出しか無かった。村の人に嫌悪され目を抉られた。私の人生はこれのせいで滅茶苦茶だった。なのに彼はそれを覆す言葉をくれた。別の価値を与えてくれた。その時から私は本当に生を受けたように感じだ。そしてこの方に永遠の忠誠を捧げたいと強く思ってしまった…。

ヤギの子視点でした。

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