襲撃と不思議な感情
第3王子が襲われたという情報を聞き、鍛錬場前の通路に来た僕たちは、人が集まっている所へ向かった。
そこには襲撃されたであろう9歳くらいの金髪碧眼の男の子がいた。傍にはリーシアがおり、リーシアは僕らに気づいて軽く会釈をした。
「ノア大丈夫か!?」
家族の事が余程大切なのだろう。着いた途端ルーメン陛下はすぐさま王子に駆け寄った。近くに来て分かったのだが第3王子は美少年だった。ルーメン陛下もルナ王女も整った顔つきだからそうだろうなとは思ったけど……。うん、ほんと美少年。髪の毛は肩ぐらいで切りそろえられ顔は男なのに可憐と言う言葉が合うかのように整っていた。一瞬女の子かと思ってしまった。
「…はい。父上大丈夫です。そこにいる方に助けて頂いたので…。」
そう言いながら王子は助けてもらった人に顔を向けた。王子の向ける顔の先にはリーシアがいた。
あっ、リーシアが助けたのか。
「リーシア殿、息子を助けて頂き感謝する。」
「ご無事で何よりです。」そう言いながらリーシアは軽くお辞儀をした。
「ついては改めて礼と褒美を渡したいのだが、後日王城に来てもらえないだろうか?」
ルーメン陛下が言ったことを聞いてリーシアは僕を見た。恐らく許可を仰いでいるのだろう…。僕は無言で頷いた。それを見てリーシアは「はい、光栄でございます。」と言いながら服の横をつまみ頭を下げた。
明日会うことが決まった2人は時間などを確認していた。
そのあいだ僕は襲撃のことを見聞きした。ここに集まった人達は何やら調査をしているらしい。王子の証言からよれば訓練場の城壁から矢が飛んできたとの事だった。城から城壁までは400m弱ある今のところ400メートル飛ぶ弓矢は作られていないはずだ。魔法に頼ってる部分が多いから、そこまで武器は進化していない。だとすると魔法を付与したという可能性が大きい。飛んできた弓矢をちらっと見たが先端にはポイズンフロッグの外皮の毒をベースに作られた猛毒が塗ってあった。
ポイズンフロッグはカエルの魔物で皮膚から毒を出してその毒に触れた敵を殺し、口の中の粘液で敵を溶かす毒に特化したBランクの魔物だ。この世界の地形は頭に叩き込まれている。ポイズンフロッグの生息地はここから北東にある沼地のはずだ。確かパージェル国とラージア国の境。王都から300キロほど…。昨日はルーメン陛下が殺されそうになったし。で、今日は第3王子…、何かありそうだよな…。2日続けて王族殺人未遂……。殺そうとした相手は邪魔されてはらわた煮えくり返ってるだろうなぁ。ちょっといい気味だな。
僕がそう考えているとルーメン陛下が僕に声をかけた。リーシアとの話が終わったのだろう。
「ヨル、済まないが、今日はもう帰ってくれ。これから私は家臣と今日の件について至急話さねばならない。調査のためにたくさんの者がここを出入りする。その前に帰った方がいい。」
「分かりました。そうさせていただきます。あ、それと……」僕はほかの人もいるので敬語を使いながら矢の先に塗られていた毒について小声でルーメン陛下に伝えた。リオと合流して僕らは王城を出た。家に帰る前に店が何点かあったので僕らはそれぞれ欲しいものを色々購入した。
家に着いてリオたちは驚いていた。
「大っきい!!」
「凄いですねぇ…。」
「デカい…。」
うん、僕もそう思う。えっと、キッチンにリビング、食堂、寝室、トイレ、物置、図書館…、あっ!肝心なお風呂まだ作って無かった…。僕は3人に説明し家の中で時間を潰してきてと伝えた。
3人は快く承諾して家の中を見に行った。お風呂はせっかく敷地が広いんだからということで露天風呂風にしようと思う。場所は正面から見て左奥。
「やりますか!」
1時間後………。
そこには木の壁で作られた木製の露天風呂が出来上がっていた。壁は縦30m横40mで木の板で囲まれている。男が青、女が赤ののれん付きだ。脱衣場、風呂、サウナも作って男女で分けてある。因みに女湯の脱衣所にはドライヤーや化粧水、乳液、保湿クリーム。女性の髪や肌のお手入れに必要なものを揃えてある。冬も近いから必要だろう。男湯の脱衣所にはドライヤー、保湿クリーム、一応カミソリを揃えた。他にいるものってあるっけ?いや、それにしても…。我ながらいい出来だと思う。でも後で邸にもちゃんとした風呂を作らないと……。冬になったら寒いし。
「あっ!タオル忘れてた!」
僕は備え付けのタオルをつくって男女それぞれあるロッカーに閉まった。お風呂をつくり終えた僕は邸に向かい、リオ達を探した。邸に入るとリビングに繋がるドアが開いており中を見るとリオ達はリビングでそれぞれ過ごしていた。リオは今日の朝渡した魔物の本を読み、リーシアは昨日渡した地竜の素材の鱗を磨いていた。ガーディルは今日の朝食べていたクッキーの残りを美味しそうに食べていた。ドアをノックすると、リオ達は僕に気づいた。
「みんなどう?この家気に入ってくれた??」僕の質問に対しみんなは…。
「うん!とっても!」
「はい!いい家です!」
「うん!いい!」
と2つ返事で答えた。
みんなが気に入ってくれてよかった。それから30分ほどリビングで過ごした。僕はリオの隣に座り時々リオが分からない単語を教えた。そうしてゆっくり過ごしていると「主、もう夕方。」とガーディルが僕の傍まで来て教えてくれた。窓の外を見るともう空がオレンジ色だった。もう夕方か早いなぁ。
「そろそろ家に戻ろう。」そう言った後みんなの準備を確認してアルカナの森の家にテレポートした。家のドアを開けてみんなで
「ただいまー!」といった。「おかえり…。」返事は帰ってこないと思っていたがファーニルが起きていたらしくお出迎えをしてくれた。今日は5人で夕食だ!その前にファーニルにお土産を渡した。ファーニルは後で食べるとアイテムボックスが付与されている冷蔵庫に閉まっていた。
さて、今日の夕食は何にしよう。ファーニルも今日は食べるし!あっ!地竜とコカトリスのお肉まだ使ってなかったな…。キメラも…でも、キメラは食べられないことは無いけどそこまで味は美味しくないんだよねぇ…。栄養は良いけど…。唯一美味しく食べれる方法はお粥とかリゾット系……まぁ、キメラは一旦保留にしとこう。と、なれば地竜か、コカトリスだよなぁ。でも、ドラゴンに竜を食べらすってなんか嫌だな…共食いだからか?んー、よし!今日はコカトリスにしよう!
まず、一口サイズにしたコカトリスの肉をコバの実と寒胡椒を少々コカトリスの肉にふりかけそれを揉む。
コバの実は肉を柔らかくしてくれるので食べた時、肉がかみきりやすくなる。そのあと色々調味料で味をつけて焼いたらコカトリス焼きの出来上がりだ。味はお好みでサラダとパン、スープを作って夕食完成!魔物のお肉は初めてのだったけどとても美味かった。みんな美味しそうに食べてくれました。夕食が終わり家事を片付け僕はシーフェがいるあの空間へ向かった。向かった先では、オルフェスとラルフェスが正座をしていてシーフェが何か言っていた。近くまで行き。僕は「シーフェどうしたの?」と聞いた。
「主!この度は申し訳ありません。僕の監視ミスです!」シーフェは僕に何度も頭を下げ事情を説明した。事の発端は、僕が2人にあげたお菓子をオルフェスが全部食べたことが原因らしい。あの量を1人で食べたって凄いな…。僕は呆れながら話の続きを聞いた。オルフェスがラルフェスの分まで食べてしまいラルフェスがそれに怒って喧嘩になったらしいそれでオルフェスが人界まで逃げその後をラルフェスが追ってあの騒動が起こったらしいのだ。これは両方悪いな。僕は2人の前に行きデコピンをした。
「痛っ!」
「痛いです…。」
「大袈裟だよ!そんな痛く無いでしょ?!」額を押さえてる2人に続けて言った。
「そもそもなんでラルフェスの分までたべちゃったの?2人分ちゃんとあったでしょ?」
「美味しくてつい?」オルフェスの答えに僕は呆れて「ついじゃないよ…。」とため息混じりで言った。
「オルフェスは人の物まで食べちゃダメ!ラルフェスは怒りであんな事しない。もし街に当たったら沢山の人が大怪我をするかもしれなかったんだから。ちゃんと反省してね!それからオルフェスはしばらくお菓子禁止!ラルフェスは、はい、オルフェスに食べられた分のお菓子。後はシーフェに任せるよ。この後用事もあるし…。」
「分かりました。」
「じゃぁ、よろしくね。」はぁ、オルフェスとラルフェスの性格ちゃんと把握しないといけないな…。戻る時僕はそう思いながら人界に戻った。
とある夜。街の闇オークション開始直前にたくさんの宝石や装飾品がオークションに出された。その宝石や装飾品はどれも見事なものでそこに来た来客たちの目を釘付けにした。バラバラにオークションに出されたので皆それぞれが欲しいものを競り落としていった。一番高額なもので17cmのブルーダイヤモンドがオークションに出された。その値段はなんと白金貨1000枚…。ブルーダイヤモンド以外にもその出品者の宝石や装飾品はとても品質がよく綺麗で全部売れたらしい。そのブルーダイヤモンドとたくさんの宝石や装飾品合わせての金額は何と、大白金貨105枚分だそうだ。そしてその出品者は後に一夜の宝石の王と呼ばれるのだった…。
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第3王子・ノアティルス視点……。
ある日の秋晴れのこと、僕は侍女のエミリーと一緒に散歩をしていた。場内で穴場の庭に向かっている途中だった。鍛錬場前の通路を歩いていると、城壁の壁側が一瞬光り、ヒュンと音を立てて僕の方へ向かってきた。それは矢だった。その矢はとても速く、城壁からこの通路までは400mはあるのにスピードを落とさず真っ直ぐこちらに向かってきた。「嘘…っ!これは避けられない…っ!!」そう思い僕は目をつぶった。離れた矢は強風と共に僕の元へ来る。その強風で尻もちをついた。砂埃が僕の前で立つのがわかったが一向に僕に痛みはない…。何故だと思いながら目を開けると僕の目の前に女の子が立っていた。そして矢はその女性が止めていた。茶色の髪は日の光で輝き淡い金色のように光り、紫色の瞳はアメジストのようでとても綺麗だった。立つことも忘れ僕はその人のことを見入ってしまっていた。
「大丈夫ですか?」
「あっ、はい…。ありがとうございました。」僕は立ち上がりお礼を言った。「いえ、無事で良かったです。」そう言って女性は微笑んだ。その瞬間僕は急に胸が苦しくなった。ドクドクと心音が身体に響く。僕はその女性から目が離せなくなった。「あの、どうかしましたか?」その言葉で僕は我に返った。「いえ、なんでもありません。」
「ノアティルス様大丈夫ですか!?」後ろから声がしたので振り返ると侍女のエミリーが不安そうにこちらを見ていた。
「うん、大丈夫だよ。エミリー。」 僕はエミリーを安心させるために微笑んだ。安心したのかエミリーはホッと胸を撫で下ろしこの先の角に居るはずの衛兵に事情を話に言った。ちょっとして、いつの間にかいろんな人が僕の所に集まってきた。騎士や医者、衛兵や、調査のため派遣された人達。しばらくして父上が来てくれた。後ろには伝えに行ったと思われる兵士と見知らぬ青年が2人いた。誰だろう?
「ノア大丈夫か!?」着いた途端父上は僕に駆け寄った。
「…はい。父上大丈夫です。そこにいる方に助けて頂いたので…。」そう言いながら僕は女性に顔を向けた。
「リーシア殿、息子を助けて頂き感謝する。」なるほど、リーシア様と言うのか。
「ご無事で何よりです。」そう言いながらリーシア様は軽くお辞儀をした。
「ついては改めて礼と褒美を渡したいのだが、後日王城に来てもらえないだろうか?」
リーシア様は「はい、光栄でございます。」と言いながら服の横をつまみ頭を下げた。明日会うことが決まった2人は時間などを確認していた。
それから僕はずっと蚊帳の外だった。話が終わりリーシア様達が帰ったあと僕は父上に尋ねた。直ぐにでもリーシア様の事が知りたかった。
「さっきの方々は何者なのですか?どういう関係ですか?」
「簡単に言ったら偉大な方とその家族だな。関係はご飯を食べる関係だぞ?そんな事よりノアこれを指にはめてくれ。」そう言って父上は透明な石がはまったシンプルな指輪を僕に渡した。そんな事って…。王族より偉大って誰だろう?同じ王族か、教皇の親族だろうか?そう思いながら僕は父上の言った通り左手の人差し指に指輪をはめた。その瞬間指輪に着いていた透明な石は紫色に変わった。まるであの人の瞳の様な色だった。すごく綺麗だと思った。
「なんですか?これ…。」
「ノア、お前を守る指輪だ。肌身離さず持っていなさい。私はこれから話し合いがある。お前はもう部屋に戻るんだ。」これ以上は聞くなと言うように父上は言った。僕は父上に従いエミリーと一緒に部屋に戻った。
僕は部屋に戻り紫色に変わった石を見た。その紫とおなじ瞳を持つリーシア様の事を考えて、とてもドキドキして顔が熱くなった。この始めての気持ちに戸惑ったが不思議と温かい気持ちになった……。僕がこの気持ちがなんなのか気づくのはもう少し先の話だった。
オルフェスくん意外と悪い子です。(*^^*)
ショタって良いですね(*´∀`*)
金髪碧眼!ノアくん頑張って!!
今のところ一応ノアくんが主人公の小説も考えてます。
あ!因みにオークションの買取金額は合計で10億5000万円ですね。