ルーメンの料理
僕は陛下の言うまま馬車でスラム街に向かった。
スラム街に着くと、陛下の乗っている馬車に気づいて、子供たちが「陛下ー!」っと、寄ってきた。
「陛下!今日は何作ってくれるの?!」
「今日は肉が沢山手に入ったから肉たっぷりの料理だ。」
それを聞いた子供たちはそれぞれ目を合し「やったー!」と喜んだ。
「料理するからちょっと待っててくれ。ヨル、手伝ってくれないか?今回は肉が多い。」
「はい、分かりました。何をすればいいんですか?」
「うむ……。まずは……―――」
僕が、ルーメン陛下の言うことを聞いているうちに料理はあっという間に完成した。野菜や肉が沢山入った具たっぷりのスープだ。栄養バランスも良さそうだった。
「出来たな。では、これを皆に配ってくれ、私は少し休憩する。」
「「「はっ!」」」と言い、騎士達はスラム街の人たちにスープを配っていた。
僕は、休んでいる陛下の隣に座った。
「手伝いながら驚きましたよ。まさか陛下がこんなに料理がお上手なんて……。王族は料理しないと思ってました。」と言うと、ルーメン陛下は、笑って答えた。
「ほっほっほ。そうだろう。だが、私も二年前はここまで上手くはできなんだ。初めの頃はそりゃ、不味いのなんの、だが…何回も料理を作るうちにだんだん上達してな…。今では、スキル【料理人】を持ってな。そこからこうやって国民の笑顔を見るためにスラム街に来ているのじゃ。自分のした事でこうやって笑顔になってくれる。国王として本望じゃな…。ほっほ。」
「ルーメン陛下……。」夜はそう言いながら笑がこぼれた。
そんな話をしているといつの間にか大人子供が大勢、ルーメン陛下たちが作った料理を食べていた。
ご飯を食べた後、スラム街の人たちは、ルナが持っているマジックバックに、皿を入れていった。
遠くで眺めていた僕は、隣にいる陛下に尋ねた。
「こんなことして大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だろう。まぁ、他の貴族や国には王らしくないと非難されていがのぅ。ほっほっほ。」
それ、大丈夫か……?
「私はこの国を統べる者じゃ、国民を助けるのは当たり前じゃろ?」
「うん、そうだね。」
全く、流石賢王の子孫だね…。と心の中で呟きながら笑った。
すると、スープを飲み終えた人達が騒ぎ出した。
陛下が異変に気づいて、「何事だ!」とその集まりの中へ入っていった。
スラム街にいる人たちはほとんどが怪我や病気で仕事を失った人達だ。
『その者と偉大な王に敬意を持って、祝福をあげよ〜。』
この前作ったリオの母親のペンダントに入れたヤツとは違う特上回復薬があったからこっそり1瓶ほど入れてみたんだよね。
「こ、これは一体!」腕を失ったものは腕が生え、脚を失ったものは脚が生えた。その光景を見た僕は「まぁ、そりゃいきなり生えたら驚くよね。」と言った。
「お主、何かしたのか?」
「うん、試作品だけど、一番効果が高いポーションをスープの中に入れたんだ。害はないから大丈夫だよ。神様の気まぐれ的な……?あはは……。」と苦笑いをすると、ルーメン陛下は目を見開いて僕を見た。次に、手足が治り喜んでいるスラム街の人たちを見た。
「奇跡だ!」
「俺の足が!」
「古傷が!」
そう言いながら歓喜し、泣いているスラム街の人たちを見て、陛下は喜び笑顔を向け小声で僕にこう言った。
「ありがとう!ヨルっ……!」
僕は満面の笑みを浮かべて「どういたしましてっ……!」と、小声で言った。この会話は陛下と僕だけしか聞いていないし見ていなかった。怪我が治った嬉しさでそんな些細なこと気に停めなかったからだ。
そして改めて僕は思った。
この国は良い王を持った……。っと………。
しばらくして、スラム街の人たちは気持ちが落ち着いてなぜ?という疑問を持った。「何故、怪我が治ったのか…。」料理を食べたあと怪我は治った。料理を作った本人に聞けばわかる事だ。
聞く相手は一人しかいない。陛下だ。
「陛下!何故俺たち怪我が治ったんだ!?」
「教えてください!ルーメン陛下!!」
「「陛下!」」
げっ!やばい。でも、ここは正直に言わないとだめか…?いやでも……。
「あっ、ある知人から薬を貰ってな…。そ、それをスープにいれたんだよ。皆の驚いた顔が見たくてなぁ。いや、驚かせてすまなんだ。」
(!?)
陛下が咄嗟に言った言葉に僕は驚いた。そして思った。
(ナイス!陛下!)
この国の人達は単純であっさり信じてくれた。
「そうだったんですかー!」
「「陛下!ありがとうございます!」」
「ありがとうございます!」
と次々陛下にお礼を言っている。いつの間にか陛下の周りは沢山の人が押し寄せていた。
もうすぐ昼かーって、あっ!リーシアに解体頼んでたんだった。早く戻らないと……。それに薬草も採取出来てないし!
「陛下!すぐ戻るので先に、ギルド行ってください!では!」
「ちょっ!おい待て!ヨル!」
夜はルーメンの言葉を無視して路地裏に行き人目がないのを確認してテレポートを使った。まず最初に飛んだのは、薬草を採るために飛んだ場所だ。朝と同じように、【探査】のマップで《薬草》を検索する。
「今は時間ないから、これでやるか…。本当はのんびり採取したいのに………。」よるはそういいながら出てきた青ピンをポチポチと押していった。
こんぐらいあれば、当分は大丈夫だろう…。
青ピンを押すのを止め、右の列の1番上にある《採取》と言うボタンを押した。夜は大きなバスケットをアイテムボックスから出し、自分の前に出した。すると、バスケットの真上に薬草の山が現れた。
「ちょっと多すぎたか?」そう言いながら、薬草が入ったバスケットをアイテムボックスにしまった。
そして、僕はまたテレポートを使った。
テレポートした先は家の前だった。
「リーシア、解体できたー?」
「はい、終わってますよ。素材はこっちです。」
そう言われリーシアについて行くと、そこには丁寧に剥ぎ取られた素材と肉があった。
「うわぁ……。すごい綺麗に剥ぎ取ったね。」
「はい!3分の1が貰えるとのことでしたので、気合い入っちゃいました!」
「リーシア、3分の1はもう取った?」
「はい!ちゃんと取りました!」
(なら、いいか。)
「冷蔵庫にお弁当の残りがあるから、お昼はそれ食べてくれ。」
と言いながら、僕は素早く素材と肉をアイテムボックスにしまった。
「何かあったんですか?」
「それが、――――――――すぐ戻らないといけないんだ。」
話をかいつまんでリーシアに説明をした。
「そうですか、では、早く戻らないといけませんね。」
「うん、夕方までには戻るから!」そう言い残して夜はラージア国へ向かった。
(陛下の元へ!)そう念じた為、いきなり馬車の中に移動してしまったので、ルーメン陛下とルナ王女は驚いていた。
「た、ただいま?」
「ヨル、さっきは逃げよって、どこに行ってたんだ。」
「自分の家。ちょっと頼み事してたから、1回テレポートで家に帰ってたんだ。」
「ん?テレポートも使えるのか?やはり、夜は凄いのぅ。」
「あはは……。所であの後、どうなったの?」
「それは…。」
「みんなに讃えられてたよ。お父様、照れてた。」
「こらっ、ルナ、あんまり私をからかわないでおくれ…。」
「ふふふっ…。」
「だが、困った。」
「何がです?」
「いや、あの場では上手くいったが、今回の話を聞いてほかの貴族や国に何か言われるじゃろうな…。まぁ、上手くやるが…ほっほっ。」
(そうだ…、この人は王様だ、僕のした事で面倒事を招いてしまうのか…。)
「……悪かった…。今回の件は僕が招いたことだね…。」
「大丈夫じゃよ。今回聞かれるのは、怪我を治した薬は誰に貰ったのか…。その事だけじゃろう。うまく誤魔化すから安心せい。ヨルが神という事も誰にも話さん。」
「ありがとう陛下……。」
「うむ!」
「ふふっ…。」
(でも、もし2人が今日のことで襲われたりでもしたら……。)
その事を考え、夜は血の気が引いた。
「2人とも!僕から2人へスキルをあげるよ。」
「なに!?そんなことできるのか!?」
「うん。僕のスキルを使ったらできるよ。」
「ねぇねぇ。そのくれるスキルって何?」
「【完全防御】だよ。」
「どんなスキルなの?」
「えーっと、どんな攻撃も無効化にするスキルかな、物理や精神、魔法とか。敵意がある攻撃を無効化できるスキル。あっ、でも、自然環境は無効化できないけどね。」
「そんなスキル…貰ってもいいのか?」
「うん、いいよ。君たちが今日みたいに襲われる事あるかも知れないし…。君たちに死んで欲しくないからね…。死ぬんならちゃんと寿命で死んで欲しいし!……っほい出来た…っと。」
「そんな簡単に付くもんなんじゃなぁ。」
「これは僕の特権だからね。ルナ王女、陛下を鑑定してみな?」
「うんっ……、おぉ!ほんとだスキル欄に【完全防御】ってついてる!」
「ホントか!すごいな!」
「ふふっ…。あっ、着いたようだね。」
僕達は早速ギルドの倉庫に向かった。そこにはギルマスがいた。
「おう来たか!まず、陛下の方は、40体分の肉と、オークの上位種が何匹かいたから金貨21枚と銀貨6枚だ。」
「いつも助かる。」
「おうよ!次は夜だな…着いてきな。俺の部屋に、話はそこでた。陛下も来ますかい?」
「うむ、ルナも来るか?」
「うん!」
ギルマスの部屋はギルドの2階の部屋にあるらしい。
「おおー!結構高いですねぇ。」
「1階が2階分の高さだからな。」
(あぁ、なるほどっ!)
部屋の真ん中には横に少し長いテーブルとソファーが置いてあった。
「さっ、ここに座って、早速しようか!」
そう言いながら、銀のカードをテーブルに置いた。「まず、ギルドカードの発行だな。初めから銀なんてそうそう無いぞっ!夜、ここに血を落としてくれ…。」血か、嫌だなー。怖い。でも仕方ないか………。僕は横に置いてあったナイフで、指を切り血をカードに落とした。すると、カードの表面に彫られていた文字が浮き出ですぐ消えた。
「おし!これでギルドカードの発行は完了した!次は売却金だが………。悪いが買い取れない……。2匹ともランクが高すぎる。キマイラとコカトリスなんて、魔物図鑑に載っているだけで売却されたことが無いんだ。相場の値段が分からないから引き取れねぇ。悪かったな…。解体だけしといたから、武器や防具でも作ってもらえ……。」
「そうですか……。ありがとうございました。」
「薬草とかなら買い取れるが、ヒール草や、マナ草持ってるか?」
「はい!それならあります!」
夜はアイテムボックスから、先程採取した薬草を出した。
「ヒール草が20本にマナ草が15本…。?これはもしかしてセッカか?4本あるな…。これも買い取るか?」
「はい!お願いします!」
「ヒールが20、マナが15、セッカが4、金貨2枚と銀貨8枚だな。ほらよ。」麻袋に入れ、夜に渡した。
「ありがとうございました。」
「おう!」
そのあと、僕は解体された2匹を回収して、陛下と一緒に王城に向かった。
そして、夜は貴族達に睨まれ、ただ耐えていた。
(なぜ、こうなった…。)
いやぁ、何故こうなったのでしょう。あはは…・・・・・。