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熊猫の糞  作者: 八尺熊猫
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リマインダーいつの日か

時間を守って規則正しい生活を送るのは社会人としての基本である。朝起きて顔を洗って朝食をとって歯を磨いて出勤して働いて昼食をとって働いて帰宅して夕食をとって歯を磨いて入浴して寝る。そしてまた朝が来る。私はこれらのサイクルを円滑に進めるためにリマインダーを活用することとした。


朝昼晩、毎日毎週毎月毎年、やるべき事が表示されて私を責めたてる。忘れるなよ。必ずやるのだ。週末には家族をどこかに連れていく。繁忙期には休日出勤をして残業も欠かさない。母の日、父の日、敬老の日、子供の日、誕生日、バレンタインデークリスマスハロウィンイースターオクトーバーフェストラマダンエトセトラエトセトラ.......


人は自ら時間を作り出して、それを管理して、タスクを管理して、社会を管理した。今じゃ果たしてどっちがどっちなんだかわかったものではないのだが、仕方の無い事を定めると煩わしい自意識を黙らせる事が出来ると学んでしまったから、もう自由になることは出来ない。なんて素晴らしい檻なんだと思うしかない。こんなことを書きながら私は明日の準備をしている。


リマインダーに明日の予定を打ち込んだ。

週末の予定を打ち込んだ。月末の予定を打ち込んだ。今日終えたタスクをタップした。

そして、日付指定なしのタスク欄に






「死ぬ」


と打ち込んだ。





何の意味もない。何も変わることは無いし、そもそもこのタスクをタップする日など来るはずがない。


それでも少しだけ心が軽くなる気がした。

私はいつだって死ぬことが出来る。管理される日々の中にあってなお、その終わりだけは自由であるのだ。


背伸びして布団に潜り込む。また新しい朝が来る。それは確かに希望の朝だ。

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