実感
―――どうしてこんなことになったんだろう
私はそんなことを頭に浮かべ、見たこともない部屋の壁をただ見つめる。
頭は全く働かず、他に考えなきゃいけないこともやるべきこともあるはずなのに体が、頭が言うことを聞かない。その時、
ピロン♪
どこからかそんな音がして、ゆっくりと振り返る。
目に入ったのは、ぐちゃぐちゃになった制服と倒れて中身が出ているカバン、そして何かを表示しているスマホだった。
今度はそれをぼけっと眺めていると、今度は音楽が流れ出した。
しかし、それはすぐに切れる。いや、わからない。実際は長い間流れていたのかもしれない。
私はゆっくりと今いる場所から降り、スマホを手に取りlineを開く。
そこには、大量のメッセージと着信があった。
―――今日、遅くない?
―――帰り何時?
―――今、どこにいるの?
―――いい加減にしなさい。今何時だと思ってるの
―――大丈夫?迎えに行こうか?
―――なつな、返事して
そんなメッセージがずらっと並んでいる。
それを見ていると今まで実感がわかず、ぼんやりしていた頭が覚醒していくのがわかった。
しかし、同時に昨日の光景も頭に浮かぶ。
直後、なつなは喉が裂ける勢いで吠える
その泣き濡れた顔には、
絶望と
憎しみが宿り
その目を暗く暗く濁らせる。
その体には
床に散らばる衣服の変わりに纏うかのように
大量の青いアザと
少しの赤い華が
泣き叫ぶ体にまとわりつく。
それはまるで、心に植え付けられた記憶と同じように
広く、深く、
なつなにまとわり、絡まっていく