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星の街  作者: 有明
1/1

その始まり

おはようございます、有明です。

癖でおはようございますをよく使いますが、登校時間は朝ではありません。

突然思いついたので続くかどうかはわからないのですが、とりあえず連載小説に分類いたしました。

ご感想・コメント等をいただければ幸いです。






──────君は見えない。





振り返りその影を探すも、瞬く街の灯にかき消され、君を見つけることはできない。





しかし、君はそこにいた。





遠く遠くの街の中に。





ほんの近くの頭の中に。





この光は有害だ。





この輝きは全て君だ。





見えない君を探すように、僕は今日もまた街を見つめる。









*****








その日も、街は平凡だった。

無駄な電気が街をぎらつかせ、過剰なほどにあたりは活気付き、その様子はまるで昼間のニセモノのようだ。

その日も、この街は贅沢だった。

食べ物は作られては捨てられ、残飯と化し、非常に非効率かつ合理的という矛盾に満ちた理由で淡々と処理され、土に還される。


科学という魔法じみた社会の制約に包まれ、人々は腐っていく。

便利を求めた。

光を求めた。

平和を求めた。

しかし、その結果生まれたものは、科学という名の『商品』。

大国は科学を売り買いし、科学の発展させられない国は滅んでいく無常の世界。


人々は学ばなければ生きられなくなった。


そんな偏屈で当たり障りのない機械のような世界のはずれの、まだ樹々が生い茂り、世界の素顔が息づく場所に、小さな湖が存在した。

蒼く蒼く光を放つ、美しい湖。

その中から、男が一人、現れた。

髪から、額から、頰から雫を滴らせ、湖の中からザプリと姿を見せた彼は、その水の上に、ゆっくりと足裏をつけ、立ち上がった。






その男は、ただ立っていた。

何も言わずに。

何も持たずに。


そこは水の上だった。

波紋も立てずに。

沈みもせずに。






男は、そんな街の外れで、月が現れるのを待っていた。

今宵は満月。

幾つもの見せかけの太陽に囲まれ、空を見上げることを忘れた街の人間には、カケラの興味も湧かない話だろう。

しかし、それを男は待っていた。

湖の上で静かに。

ただひたすらに、天上に月が登り切るまで。






月は徐々に頂を目指す。

ゆっくりと、ゆっくりと。

男は、ただそれを見つめ続ける。


間も無く、月が天上に辿り着いた。

すると、男は静かに片手を伸ばす。

その先には、あの、銀の月。





男は、その手を軽く握る。

それに合わせて真円の月は歪み、ひしゃげてしまう。

それから、円の底部から銀の雫が空を伝って滴り落ちた。

その輝きは、月そのもの。






そして、月の雫が湖に触れたその瞬間に、湖は一面が銀に染まった。

湖が輝きを増す代わりに、夜空の月は色を失い、灰色の岩と化した。

もはやそれは円ですらなく、ただの醜い、歪な小惑星にしか見えない。

湖は、大地の月となったらしい。






男は片手を静かに下ろした。

口元を満足げな笑みで満たし、大地の月となったその湖に、再び静かに沈んでいった。

あと、2日。

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