1/66
蛇の蛇による蛇のための箴言
――敢えて汝を蛇とする。
汝、穢徳に塗れた左眼を捧げよ。
左腕を捧げよ。
左肋を捧げよ。
左脚を捧げよ。
血肉を擲ち、以てその身で左道を塞げ。
汚れのたうつ片輪の蛇へと、見返りなくかかるを望め。
他者の汝が如く堕つることなかれかし。
尾を嚙み捨てた蛇に告ぐ。
原罪を、この世に顕せ。
然る後、汝、僅か罪を免るべし。
汝に連なる者、罪雪がるるべし。
汝に触れる者、救わるるべし。
他者の罪を背負て己の罪を拭い、以て己の罪を増やし、故に僅か。
……汝とは、欠けながらにして具えたる者。
贖う者。
伸ばされた手を震える口で咥う者。
伸ばされぬ手をも欠けた牙で浚い攫う者。
四苦八苦に喘ぎ、二苦三苦のままに。
救い難き者をも救い、赦されざる者をも赦せ。
汝とは、赦されぬままに赦す者。
そのように生きて死ね。