暗行御吏《アメンオサ》と体探人《チェタミン》の違い
今回は表題の通り、暗行御吏と体探人の違いについて、調べたことをお話しします。
◆暗行御吏とは
暗行御吏は一言で言うと、ズバリ地方官吏の取り締まり官です。
抜き打ちチェックというか、地方の役人が悪いことをしてないか、民をいじめてないかをチェックしに行くんです。
そして、不正を働く役人がいたら、それを罰して正す……尚、不正だけでなく、調べた結果、冤罪事件とかもあればこの時に再審し、解決します。
本来ならこの辺は司憲府の管轄なんですが、流石に都にいたら地方までは目が届きません。
なので、王様が直々に任命して、地方へ派遣する訳です。権限としては、観察使と同等のモノが与えられます(この『観察使』については詳細は未調査なので、また後日ということで、何卒ご容赦下さいませ)。
ただこれ、事前にバレたら、調査対象は当然身構えます。
悪いことやってる人に限って、自分の素行チェックにきた人にはいい顔しか見せないのはまあ、古今東西似たようなモノですよね。
だから、暗行御吏となった者は、バレないようにボロを着たり、通りすがりの旅人を装ったりするわけです。通りすがりの旅人で、しかもその人が乞食寸前のカッコでうろうろしてたら、悪い金持ちは大抵気にも留めませんから、そうやって相手の目を誤魔化しつつ水面下で色々調べて、これはヤバいとなったら逮捕というか、解雇通告に行く訳です。
観察使も似たような仕事なのですが、暗行御吏は臨時役職で、急を要するケースが多かったらしいです。建前上は、まず王様に報告・お伺いを立ててから調査対象の罷免、となる訳ですが、実際は暗行御吏の独断で罷免しといて、王様には事後報告という事例がほとんどだったよう。
そんな仕事の内容柄、任命は人格重視。かなり慎重が期されたということです。
ちなみに、制度的には高宗時代まで続いていたそうですが、粛宗代になると党争の影響で、暗行御吏が味方政党に不利な報告をしたら、その時の暗行御史の任に就いた人を陥れたり、最初から暗行御吏になった人を抱き込んだりも横行したとか。
◆体探人とは
一方、体探人は(ピクミンではありません、チェタミンです念の為。いえ、言う人が身近にいるんで/笑)暗行御吏とはまったく性質の違う仕事です。
隠密業務という点では一緒ですけど。
一言で言えば国境諜報員で、活動期間は四代王・世宗~九代王・成宗までです。
ドラマ『オクニョ』でしれっと登場していますし(『オクニョ』は十三代王・明宗治世が舞台)、ドラマ解説では朝鮮王朝版CIAと紹介されていますが、史実のそれは役割がちょっと違うようです。
体探人が創設された当初、つまり世宗の時代ですが、朝鮮は女真族と呼ばれる民族の侵略に頭を痛めていました。
そこで世宗が考えたのが、女真族の動向を探る役目をする体探人です。
この体探人を配置してからは、女真族の動向は事前にキャッチでき、彼らの侵攻を防ぐことが可能になったようです。
しかし、九代目の成宗が何を思ったか、この体探人を廃止してからは、朝鮮は再度女真族の侵略に悩まされることになったということです。
つまり、対女真族の為の諜報員、ということですね。
ただ、そもそもが極秘任務を負った職業であったことから、残された(というか、記録された)史料は少ないようです。
その為、定説としては上記の通り、世宗代~成宗代にあった対女真族諜報部隊なのですが、オクニョのドラマにあるように、その後も別の性質を帯びて続いていたのでは、という説もなくはないそう。
創作世界に脚色として入れるには、かなり都合のいいというか、萌えるファクターですよね(何)。
追記。
現在、光海君日記を漁っているのですが、その中にも体探人の記述がありました。やっぱり国境密偵任務、及び対明国工作が主な仕事のように推測できました。
©️和倉 眞吹2019.
【参考資料】
韓国語版ウィキペディア+sillokwiki+Web翻訳機
その他、ネット上の史料




