品階のお話
今まで皆様、このエッセイや、執筆中の『仁祖反正』などを読んでいて、「?」と思ったことがありませんか?
『仁嬪』とか『宜嬪』とか『恭嬪』『禧嬪』etc。時々『正五品』なんて単語も出てくるし……一体何だろう、と。
……あ、思ったことがない?
こりゃまた、失礼しました。
じゃあまあ、話の種に一つ聞き流し宜しくお願いしますよ(何)。
上記に出てくるのは、『●嬪』が側室の位、『正五品』が品階です。
側室の位には、八つの品階があります。
その中で『嬪』は最高位、『正一品』相当の位です。王妃のすぐ下ですね。
蘊蓄サイトによっては、『禧嬪=側室最高位』とか、あたかも『禧嬪』という位があるかのような解説してる所もありますけど、あれは明らかに間違いです。
『嬪』は一文字だけにすると読み方は史料によって違います。『ピン』と読む史料があれば、『ビン』とする史料、『ヒン』とする史料もありますね。
で、『嬪』の場合、その前に尊称を付けます。それが、『“禧”嬪』とか『“淑”嬪』とか言う呼び名になる訳です。
余談ですが『淑嬪』は複数います。違う王様の側室なんですけど、同じ名前……紛らわしいですね。ちなみに、読み方も複数ありまして(しかも、同じ人物に対して)、『スクピン』『スッピン』『スクビン』など。
漢字が違って発音が同じ、ということもありますが(中宗の側室に煕嬪がいますorz。もっとも、『煕嬪』の場合『フィビン』と表記する人もいますが……個人的にはこっちの方が好みかなぁ←マテ)。
まあ、『嬪』ならまだしも、その下の位で、同じ王様の側室で、位も姓も同じとか言ったら、紛らわしいじゃ済みませんが。いや、いるんですよ、例えば中宗の側室の中に『淑媛イ氏』って人が二人!orz(生んだ子供の記述によって同姓の別人だというのが分かりますけど)
さて、話を戻しましょう。
『嬪』より下については、
従一品 貴人
正二品 昭儀
従二品 淑儀
正三品 昭容
従三品 淑容
正四品 昭媛
従四品 淑媛
と続きます。ここまでが側室で、正五品から下が宮女、つまり女官の品階になります。
淑媛というのはどこかで聞いたことがありませんか?
そう、『チャングム』でヨンセンがそうだったり、トンイも「淑媛様」と呼ばれていた時がありましたよね。
淑媛は側室の最下位なので、大体は承恩尚宮が懐妊した時に昇格する位であったようです。
ついでなので言いますと、以上は『王』の側室の品階及び位です。
世子の側室は、従二品の『良娣』が最高位で、以下『従三品・良媛』、『従四品・承徽』と続き、『従五品・昭訓』が最下位です。
余談ですが、執筆中の作中に『昭訓』が登場します。良娣の『娣』の字がポメラでは打てないので、昭訓で良かった、と思ってるのは内緒(何)。
それと、品階の方は、別に側室だけに当てはめるものではありません。
朝廷の臣下の位でも使います。
例えば、領議政(※)なら正一品相当です。
時代劇の武官の地位でよく聞く『従事官』は、従六品相当ですから、実はそれほど高い地位ではなかったということでしょうかね(苦笑)。
ちなみに、王妃や王子・王女は品階の外にいる存在だったので、『無階』と言って品階はありませんでした。
同じ無階でも庶民とは違う無階で、どうにもややこしいのではありますけれど。
©️和倉 眞吹2018.
※領議政…現代で言うところの首相。
ちなみに、左議政・右議政は副首相。
これらも、正一品相当です。
【参考資料】※敬称略
・朝鮮王朝実録【改訂版】 朴永圭著、神田聡・尹淑姫訳