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 結論から言いますと、次の日無事に東雲家の和解を成功させました。

 まぁ、こういうのは時間の流れによって余計に拗れていくものだし対処が早ければ誤解もすぐに解けるよね。それに、何より私がまだ小学生なのと、鏡花が白露と同じクラスなのが話を聞いてもらえた一番の理由だと思う。


そんなこんなで東雲家の信頼を勝ち取り、いつの間にかに東雲家でお茶をいただくほど親しくなりました。白露にも懐かれたしね。


 …フラグをボキボキしていくのは順調だけど代わりに別のフラグをジャンジャン立ててしまっているのは私の気のせいだろうか?






「あら~、潮君じゃない!今日はお迎え時間一緒みたいね!!」


 いつものように鏡花を保育園に迎えに来た所で白露の伯父の妻である東雲しののめ 文代ふみよさんに声をかけられた。

 文代さんは見た目普通の三十代女性であるが、話してみるととても茶目っ気のある甥っ子想いの可愛らしい人だった。

 こういう時には、やはりゲームと現実は違うのだなと実感する。私を含め、モブだろうがライバルキャラだろうがきちんと個を持つ一人の人間なんだから。



「こんにちは、文代さん。…今日は先生に呼びとめられてしまって。少し遅くなってしまいました」


「それでも毎日鏡花ちゃんを迎えに来ているのだもの…まだ小学生なのに妹の面倒をみて偉いわねぇ。イケメンでイクメンなんて潮君は将来お嫁さん貰い放題ね!」


 貰い放題って…


 文代さんはよく面白いジョークを言ってくる。

 この手のジョークはこの体になってからよくいろんな人から言われるようになった。イクメンはまぁまぁ同意できるが私がイケメンって…ないでしょ。やはり妹の面倒を見ていると何割か増しで良く見られるのだろうか。

 だとしたらすごいな、妹効果。


「ははは。いえ、そんなことないですよ。父の負担が少しでも減ればいいなと思ってのことですし。それに、自分が鏡花のお迎えに来たいだけなので。そういえば、文代さんはパートの帰りですか?」


「そうなの!今日はお店が空いてたから少し早めに上がらせてもらっちゃったの」


 保育園前で文代さんと話しこんでいると保育園の先生がこちらに気づいたようで声をかけてくれた。


「あ!白露君と鏡花ちゃんのお迎えですか?」


「こんにちは、いつも白露がお世話になってます」


「鏡花がお世話になってます」


「いえいえ!二人とも良い子達で!!今も他の子たちと中遊びしてるのでどうぞ!」


 文代さんと二人で軽く会釈をすると先生はにこやかに言い園内に迎えてくれた。

 先生は二人の所属する組の部屋に私達を案内すると楽しそうに遊ぶ二人に声をかける。


「白露君に鏡花ちゃん!!お迎えが来たよ~」


 その声に素早く反応したのは鏡花だった。

 いつものように「お兄ちゃん!」と駆け寄ってきては私に抱きつく。

 そんな鏡花の後ろをやや駆け足で白露がついてくると鏡花を羨ましそうに見つめる。


「白露君?どうかしましたか??」


 不思議に思って私が声をかけると白露は小さく「いいなぁ」と呟いた。

 その言葉を耳に拾った文代さんは何かに気付いたのか、しゃがみこむと白露に向かって両手を広げる。


「白露!さぁ、おいで!!」


 ノリ良く嬉しそうに白露を迎えようとする文代さんに白露は頭を振った。

 フラれた文代さんは広げていた腕を下ろすと恨みがましそうに私を見つめる。


 いや、そんな目で見られましても…

 

 最初は何がしたいのか良くわからなかったのだがもしかすると、と思い未だに抱きつている鏡花に帰り支度をするよう声をかけてロッカーに向かわせる。

 そして私は鏡花がいなくなったことにより空いた体を白露へ向けた。


「白露君も来ますか?」


 控えめに白露へ声をかける。するといつもはあまり変化のない表情を少し和らげた後、おずおずと私に近づきぎゅっと抱きついてくるではないか。

 なにこの子可愛い!!

 妹も可愛いけれどやっぱり弟も可愛いなぁと白露のサラサラな髪を撫でていると横から負のオーラが…


「潮君は白露に好かれてて良いなぁ…」


 隣で拗ねる文代さんに苦笑し白露にも帰り支度をするよう促す。

 白露はするりと私から離れロッカーへ向かって行く。その際、文代さんに抱きついていくのも忘れずに。

 白露はすぐに文代さんから離れて行ってしまったが、今まで白露の方からスキンシップを求めてきたことはなかったようで感極まっていた。




 鞄を持った鏡花と白露が戻って来た所で途中まで一緒に帰ることになった。


 4人で今日は保育園で何をして遊んだか等を話しながら歩いていると文代さんが何かを思い出したのか声を上げた。


「いけない!おばさん、今日までに提出するお手紙渡すの忘れてたわ!!」


 そう言うと文代さんは鞄から見覚えのある薄ピンク色の紙を出してきた。


「あぁ、遠足の参加申し込みのプリントですね」


「そうなのよ!今日中に出さないと不味いわよねぇ…今から戻って渡してこようかしら」


 幸いここはまだ保育園の近くなので5分程道を戻れば保育園に着く。…大人の足でだが。


「なら、この近くの公園で白露君見ながら待ってましょうか?」


 私がそう提案すると初めは遠慮していたが鏡花も遊び足りないでしょうしと言えば「そうかしら…、じゃあ潮君にお願いするわ。すぐに戻るから~」と言い駆け足で保育園へ向かって行った。


 不思議そうに私を見つめる二人に「白露君の叔母さんは用事があって保育園に戻ったから公園で遊んで待ってましょうか」と声をかけると二人は大喜びで近くにある公園へ我先にと駆けて行く。



 子どもは元気でいいなぁ…って今は私も十分子どもか。

 私は公園の砂場へと走り出す保育園児二人の後ろを追いかけるようにして砂場へ向かった。


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