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10月8日、感想にてご意見いただいた部分を修正しました。
あまり手を加えてしまうと収集つかなくなりそうだったので白露の両親が他界した時系列だけ変更させていただきました。あまり変わらないかもしれませんが…
あと、それに伴い少しだけ主人公の独白を追加。
(ちなみに、声を大にしては言えませんが私のお恥ずかしい凡ミスの部分も修正しました)
皆さま、貴重なご意見やご感想をありがとうございます!
それは、遡ること数日前。
授業が終わった学校帰り、いつものように保育園へ鏡花を迎えに行った日のことである。
5歳になった鏡花は、ふっくらした桜色の頬に唇、エメラルドグリーン色の瞳もぱっちり二重のまんまるおめめ。母から譲り受けたふわふわ猫毛を肩まで伸ばしているとっても可愛い美幼女に成長していた。顔の造形は父似なので、一見冷たい印象を与えてしまうがそこは私の教育の賜物だ。表情のくるくる変わるとっても素直な良い子に育っています。私の妹まじ天使!
ああ!うちの妹本当に可愛すぎっ!!
誘拐されちゃわないかお兄ちゃんは心配です。
…おっと。つい妹が可愛すぎて話が脱線してしまった。
まぁ、妹の可愛さは後日原稿用紙10枚程に纏めておくとして、今は東雲白露のことだった。
なんと、私が迎えに行ったその日、東雲白露が私の可愛い妹と保育園の砂場で楽しそうに遊んでいたのである。
何で?今まで貴方達一緒に遊んでなかったでしょ?
鏡花のお迎えをこなすこと2年が経過するが、未だに園児の交友関係が全く掴めない。
それにね、確かにゲームで鏡花と白露は幼馴染という設定だったよ。でもね、気の強い鏡花が一方的に白露にちょっかいをかけていただけだと白露がヒロインに話していた様な気がするんだ。
あれ?これはもしかして…フラグ折り成功してたりする?
フラグクラッシャーの称号手に入れられちゃう?
なんて一人で唸っていたら、私の姿に気付いた鏡花がこちらに走ってくるではないか。
「お兄ちゃーんっ!!!」
あぁ!急いできてくれるのは嬉しいけどそんなに走ると転んじゃう!!
案の定、躓き転びそうになる鏡花を寸での所で抱きとめる。
…ふぅ、間に合った。
「…鏡花。急いできてくれるのは嬉しいですが、鏡花が怪我をしてしまうのは嫌ですよ?」
頭を撫でながらそう言うと鏡花はごめんなさいと嬉しそうに言いながらぎゅっと私を抱きしめる。
鏡花超可愛い!!このままお家に連れて帰りたい…けど、お兄ちゃんはもう一つ鏡花を叱らなければなりません。
「それと、鏡花は今砂場でお友達と遊んでいませんでしたか?こちらに来る前にきちんとさようならはしましたか?」
挨拶は良い人間関係を作るための基本だからね、厳しめに鏡花に言う。
ごめんね、でもこれも鏡花のためなんだ。
私の言葉を聞いた鏡花は私の胸に埋めていた顔をあげると「そうだった!はくろ君たちにまださようならしてない!!」と言い私から離れる。
そして、急いで砂場に戻り白露たちに別れを告げると、再び私の元へ来て再び抱きついてきた。
戻ってくるのが早すぎるよ、鏡花。
はぁ、しかたがないなぁ…。
私は白露達の方へ近づき声をかける。
「こんにちは、私は鏡花の兄の潮と言います。今日は鏡花と遊んでくれてありがとう」
にっこり笑って告げたあと、きちんと鏡花に挨拶させて手を振りながら別れを告げる。
その後、帰り支度をする前に先生たちにも挨拶をし、二人で手を繋いで帰路についた。
「今日はねぇ、お絵かきと、ねんどあそびと、あとすなばではくろ君たちとお山をつくってあそんだの!」
「そうですか。…鏡花はお絵かきで何を書いたんですか?」
「お兄ちゃんとお父さん!!」
「ちょっとまってね」と言い私から手を離して鞄から絵を出そうとする鏡花。私は苦笑しつつも「お家でゆっくり見せて下さい」と言って再び手を繋いだ。
「あと、はくろ君のことなんだけどね…」
言いづらそうに鏡花が白露のことを口に出す。
も、もしかして白露のことを好きになっちゃったとかそういうの!?
なんて、ドキドキハラハラしながら話を聞いていくとどうやらそういうことではないらしい。
ゲームにおける白露の家庭は少し複雑なのだ。
もし、仮にゲーム通りシナリオが進んでいるならば白露の両親は白露が4歳の時、今から約1年前に事故で他界しているはず。すなわち、このifが私達のいるこの世界で起きているのであれば、白露は伯父の家に引き取られている線が高い。
たしか伯父夫婦は妻の体質上、子どもを産むことができないため白露の引き取りに夫婦揃って賛成していた。しかし、実際に白露が家に来ると、子育ての経験がないためどう接していいのかわからず互いによそよそしい態度を取ってしまうのだった。
特に白露は表情のあまり変わらない子どもである。そのため余計に何を考えているのかわからずに打ち解けられない状態が続く。白露のストーリーではヒロインが持ち前の明るさでそんな東雲家のすれ違いを正すものだったと記憶している。
そう考えると白露はうちの父と同じ匂いがする、が、父の方は口下手でもあるので白露の方がまだましだと思う。
鏡花が悲しそうに言った「はくろ君、おじさんとおばさんと仲良くないんだって。きょうかはお兄ちゃんともお父さんとも仲良しなのにね」という言葉に母が他界した直後の我が家を思い出した。
「…白露君は何か言っていましたか?」
「えっと、自分はいらない子だからって。きょうかにいいなぁって言ってた」
うーん、なんだか変な具合に拗れてるなぁ。
たぶんお互いの気持ちを伝えるべき会話が圧倒的に足りてないせいで思い違いをしてるだけだとは思うんだけど。
本当に我が家の残念な父を思い出す…
「…いつも白露君のお迎えはどの位にくるかわかりますか?」
「お兄ちゃんとおんなじくらいだよ?きょうかが先に帰ったりはくろ君が先に帰ったりするもん」
「では、明日もしも白露君のお迎えが私より遅ければ少し待ってみましょうか?」
「?」
さっきまでしょんぼりしていた鏡花だったが、どうやら話の流れについていけないようで頭にはてなマークを浮かべていた。
ふむ、なにやら鏡花は色恋沙汰まではいかなくとも白露のことを気にしているようだ。
…それなら白露には鏡花と仲良くしてもらうことでフラグ折りに勤しむのが吉かな。
そうと決まれば可愛い妹の悪役化阻止のため、お兄ちゃんが一肌脱ぎますか。
すみません、これが私の精一杯です!