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短編・詩 恋愛

信号が変わる時

作者: 些稚 絃羽

信号が赤に変わる。



あと一歩で 横断歩道に乗るとこだった右足を

苦々しい気持ちで左足の隣へと戻した。

向こうで赤い小人が、立ち尽くしているのを見上げる。

思わず舌打ちしそうになって、唇を緩く噛む。

カツッと右手の傘がアスファルトにぶつかる。

ここの信号が長いのは知っている。

それでもこの道を使うのは、一番の近道だからだ。

一つ向こうの横断歩道も回り道にしかならない。

それなら、と毎日この道を使っている。

いつもならかからないのに。

そう思って、今にも泣きそうな重い雲を睨み付ける。

雨は嫌いだ。

傘を持たなくてはいけないから。

別にいいって言ったのに、持っていけって五月蝿いから

仕方なく傘を受け取るために二、三歩戻ったせいで、

ここの信号にかかったんだ。

やっぱり雨は嫌いだ。

あ、あの子。友達と一緒だ。

あの子もこの辺に住んでるんだ。

クラスメイトだけど、あんまり話した事ないから

知らなかったな。

今日は髪下ろしてる。そっちの方が似合うのに、

どうしていつもポニーテールなんだろう。

あ、笑った。やっぱり下ろしてる方が似合う。

近くで車が停まる。

見上げると赤い小人が点滅中。

その向こうで、厚い雲の隙間から青色が見えた。



信号が青に変わる。

赤い小人は姿を消し、青い小人が歩き出す。

少し気持ちが軽くなった。

あの子の後ろ姿に近付けるように。

一歩、大きく右足を踏み出した。

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