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短編集

捧げるは永遠の純愛

作者: うぃんてる

皇軍大本営はラジオ放送にて皇国が数日後には誇りを持って滅亡する事を放送し、子供から老人まで皇国の臣民は最後の一人まで臣民の誇りを持って抵抗し死ぬ。それが皇国臣民のあるべき姿だと。

拝啓、あなたさまへ


お元気ですか。こちらは相変わらずの空模様です。


あなたさまがそちらに赴かれてから、かなりの月日が流れてしまいましたが、わたくしもあなたさまのお言いつけを心に秘めて心静かに過ごしております。変わったことも特にはなく……そうですね、あなたさまがこちらにいらっしゃった頃にはどんなに頑張ってもできなかったダイエットに成功してほっそりとした身体をようやく手に入れることができました。


そちらへ行かれた健一さんや健二さん。陣八さんはお元気ですか。こちらに便りの届かない方々はきっとどこかで頑張っているのだと思いますが……あなたさまのいつかいらっしゃる時の為にとわたくしがお守りしているお屋敷も、とうとうわたくし一人となってしまいました。こんな時代ですもの、皆さんも家族の元にいらっしゃった方が良いと思いましたの。

あなたさまがこちらにいらっしゃったらきっとそうなさると思いましたし。


ねぇ。覚えていらっしゃいますでしょうか。あなたさまとともに初めての旅行でもありました、婚儀のあとに訪れた温泉の宿を。静かで……安らぎを、あなたさまとの最初で最後の想い出の旅行でしたね。

そして不安に震えるわたくしをあなたさまはその大きな優しい心でゆっくりと包んでくださいました。


わたくしはあの日からいついかなる時もあなたさまにだけ、わたくしの愛を誓い一心に捧げて参りました。そしてそれは……あなたさまがそちらに赴かれた今でも想いに変わりはございません。

わたくしには、わたくしが、愛を捧げるべき方は。あなたさま以外にはおりません。

わたくしには、あなたさまと幼い頃に誓い合ったあの小さな約束からずっと……あなたさまだけなのです。わたくしが永久に誓いあった、純愛を、想いを、そして幸せを捧げられる事ができるのは……あなたさましか……………いないのです。


先ほど……皇軍大本営よりラジオによる放送が……ございました。

あなたさま。

…………この美しい自然に溢れたこの国は……滅ぶのだそうです。

…………数日後にはこの国を破壊し尽くすために畜生にも劣るような極悪非道な鬼たちがやってくるそうです。皇軍は最後まで誇りを持って徹底抗戦を宣言致しました。

子供から老人まで……皇国の臣民の最後の一人まで戦うのだと、それこそが皇国の臣民としての誇りを守る唯一の術だと…………。


あなたさま。

あの日、最後のお別れをいたしました際にあなたさまはわたくしが幸せになるまで生き抜いて欲しいと願われましたね。わたくしはあなたさまへの想いを胸に抱いたまま最後まで生きるつもりで本日まで生きてきました。


あなたさま。わたくしの愛する、たった一人の、生涯ずっと変わらぬ想いを、純愛を捧げるべきあなたさま。わたくしは…………あなたさまとともに長い時を歩み、共に笑い、悲しみ、悩み、そして想いを遂げることができて、ひとつになれて…………本当に幸せでございました。


願わくば……次の世があると言うのであれば……。

わたくしは、再びあなたさまにだけ、わたくしの永久の純愛を捧げたい。

そうおもうのです。


あなたさまのいらっしゃる安らかな平穏の庭へ……わたくしもまもなく参ります。

わたくしとあなたさまを育てて、引き合わせてくださったこの皇国へのささやかなご恩を数日後返したのちに…………あなたさまに会いにいってもよろしいでしょうか。


愛するわたくしのあなたさま。

わたくしに最後まで幸せを与えてくださって本当に、本当に……ありがとうございました。

次は安園の庭で……お会い致しましょう……。


あなたさまだけの里奈より


安園の庭であなたさまにようやく会うことができる。その喜びを胸に、ただ一人愛する事が出来、それはこの後どのような結末になろうとも私はあなたさまにしか愛を捧げることができないだと。それがわたくしの幸せなのだから。

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