有効恋愛倍率
先生や両親がとめるのを振り切り、地元から飛行機の距離のこの学校に進学した。
その理由は男女比。
全校生徒1200人中男性は200人。
その差はなんと6倍!圧倒的である。
この男女比なら根暗な俺にも彼女ができ、バラ色の高校生活が送れるはずだ。
本当にそう思っていた。
やはり最強はイケメン。
やつらは入学早々に活動を開始、そして5月になる頃にはすでにクラスの中心となり、主要美女達は抑えられていた。
やつらは顔が良いだけで女にもてる、同じ事をやっても俺がやると「キモイ」、やつらがやると「可愛い」だ。
その理不尽さを俺はよく知っている。
しかし、やつらに付き纏うのは大抵ギャル系だ。もともと俺の彼女選択肢には入っていないのでくれてやろう。
そして次にスポーツマン。
やつらは部活を頑張るスポーツ少女やマネージャー達を体育会系のノリで次々と落としていった。
同じスポーツをやっているという連帯意識に恋愛感情が芽生えるのは至極当然だ。
まあスポーツ少女では俺とは話が合わない、レギュラーとマネージャー等の王道カップリングでせいぜい青春を謳歌するがよい。
んでヤンキー。
なんで他校生と喧嘩したり、バイク乗ったり、タバコ吸ったりしてるともてるの?
だいたいが俺の彼女選択肢外のヤンキー同士でくっついて問題ないのだが、なんで委員長タイプとくっついちゃうのがいるの?ねえなんで?
俺みたいな根暗タイプと唯一相性が良さそうな貴重な委員長タイプもってかないでよ。
でもヤンキーの暴力が怖いので戦略的撤退。断腸の思いで委員長タイプもくれてやる。だからいじめないでね。
問題が同姓カップル。
ホモなら良い、好きにやれ。
しかし先輩方、貴重な美女枠を潰す「百合カップル」あれはダメです。
お姉さまってなんですか。せっかくの男女比おかしくしないでくださいよ。
そんなこんなでもう12月、彼女いない歴=年齢の俺は焦っていた。
ここで1度冷静に問題を整理してみる。
仮にうちの男子生徒が俺以外全員に彼女ができ、それが全て校内恋愛だったと定義しよう。
全校生徒1200人から男子数199人を引く。
イコールは1001人、簡単な算数の問題だ。
つまり仮説として考えても俺1人に対して現在1001人の恋愛可能な女性がいる。
それがこの学校内の現状と考えてもいいだろう。
しかし、現実には1001人もの女性が余っているのに俺には誰からもアプローチがかからない。
それはおかしい。
そこで仮説②だ。
まずは先にも述べた同姓カップル。この数がだいたい200としよう。
次に他校、幼馴染、会社員等の学校外からの侵略者。これを300くらいとする。
そして家柄、家庭の事情、傷病、疾病等の理由で彼氏を作れないというレアパターンの女性。
これも少し多く見積もって300とする。
最後に倫理的・道徳的問題になるが、世の中には二股というものが存在する。
これが暴論となるが最悪の展開で予想し、男子生徒全てが二股していると仮定しよう。
そうすると398となる。
さあ計算だ
【1200-(200+300+300+398)= 】
「やべえ・・・2人しか残らねえ・・・」
これなら現状に納得できる。
しかし由々しき問題だ。
「な~にやってんの♪」
不意に背後から声がかかると、そこには少女が立っていた。
こいつは俺の数少ない女友達だ。
俺がさっきまでの壮大な計算式を説明すると、彼女は大笑いした。
「あははっそりゃ君の計算が間違ってるよ。」
彼女は紙とペンを取り出して言った。
「1200人の女子生徒に対して君は1人、つまり計算式は1200÷1でこれが有効恋愛倍率だね。」
「君の間違いはここに期待値をかけなかったところかな。」
彼女は紙になにかを書き出した。
「では期待値の質問です。正直に答えてください」
彼女はニヤニヤしながら俺を見る。
「お顔に自信は?」
「ない。」
「成績は?」
「ぼちぼち。」
「運動は?」
「苦手。」
「恋愛経験は?」
「ない。」
「じゃあなにか自信のある事は?」
「とくにない。」
最後に彼女はいたずらっぽい笑顔で聞いた。
「じゃあ君の期待値を数字で考えると現実的にいくつかな~?」
「ゼロじゃねえか。」
俺はふてくされたように答えた。
彼女は俺に紙を渡す。
「じゃあ今の話を式にしたから、その計算解いてみてね」
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【1200÷(1×0)= 】
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俺は少し考えてこう答えた。
「んっ・・・最終的に0で割るから、答えは解なしか?」
彼女は笑った。
「そう、恋愛に答えなんかないのよ」




