第五話 勝負
遅くなってすみませんでした。
では、どうぞ。
「あ、あの本当にごめんなさい。」
土下座しながら友紀ちゃんが涙目で謝罪してくる。
「いいよ別に。もう大丈夫だから、ね?」
今、俺達は1階のリビングにいる。
さっきから、こんな感じである。もういいと言っても、友紀ちゃんは頭を上げない。上げるどころか、余計ひどくなっている。
さて、困ったぞ。この場をどう乗り切ればいいのだろうか。すると、真紀ちゃんが、
「友紀、いい加減にしろ。真が困ってるじゃないか。あんまりしつこいと、真に嫌われるぞ。」
すると、友紀ちゃんが、恐る恐る頭を上げた。
「怒ってない?」
と、涙目で震えながら言ってきた。
不覚にも、ドキッとしてしまった。
「あ、あぁ。怒ってないよ。」
( 涙目はずるいよぉ。あぁ、もう可愛いなぁ。)
すると、後ろから硬い物体が、俺めがけて投げられ、後頭部に直撃した。
「痛っ!何すんだよ真紀ちゃん!」
「別に、なんでもないし。」
プイッとそっぽ向いてしまった。よく見ると、投げられた物体は、俺のスマホだった。
「えっと、真紀ちゃん。なんで俺の携帯を持ってるのかな?」
なんとなく電源を入れると、ロック番号が、変更されていた。
「なんで、俺のロック番号変わってんの!てかよく俺のロック番号わかったな!」
「真の考えそうな番号なんか、すぐに分かる。」
すごいドヤ顔だった。
「いや、だからってロック番号変えんなよ!」
「・・・だめ?」
「だめだからね!そんな可愛い顔してもだめだよ!てか、番号なに?」
「真が、私のこと可愛いって言ってくれた♥」
顔を真っ赤にしながら、クネクネしている。
「いや、確かに言ったけど、って話をそらすな!ロック番号なに?」
「?私の誕生日だよ?」
えっ、なんでそんな当然でしょ?みたいな顔してんの。
「ちなみに聞くけど、中見た?」
サッと視線をそらした。
見やがった。完全に見やがった。
「べ、別にメールとか電話履歴は見てないから。あと、私のメアドと電話番号しか入れてないから。」
「うそ!マジで!」
急いで確認しようとしたが、肝心なことを忘れていた。
「あのさ、真紀ちゃんの誕生日っていつ?」
「あれ?言ってなかったっけ?そうかー、でもただじゃ教えられないなぁ。」
悪戯っぽく微笑む。
「そうだなぁ、じゃあ、何か1つ言う事を聞くこと。」
とてつもなく嫌な予感がした。
「ち、ちなみに聞くけど、なに?」
「そ、そんなの決まってるじゃん。わ、私と初夜を迎え「ちょっと待ったー!」
声の主はもちろん友紀ちゃんだった。そして何故か俺の携帯を握り締めていた。
「えっと、友紀ちゃん?なんで俺の携帯を持ってるの?」
「そんなことはどうでもいいよ真君!」
どうでもいいって言われた。
「それより、真紀!さっきの話、どういうこと!」
「どういうことって、友紀には関係ないでしょ!これは、私と真の話なんだから。」
「関係あります!私だって許嫁なんだから。」
すごい迫力だった。そして、俺の携帯を返してくれた。
「ロック番号は、0619だよ。」
微笑んでいった。あぁ、神はここにいたのか。
「ありがとう友紀ちゃん。」
俺はすぐに中を確認した。
すると、連絡先が1つではなく、2つ増えていた。
「?誰の連絡先だ?」
すると、友紀ちゃんが笑顔で、
「もちろん、私のだよ。」
やっぱりでしたか。
「ちょっと友紀!余計なことしないでよ!」
「真紀には言われたくありません~。」
双子の姉妹が睨み合っている。止めに入ろうとしたが、俺の話は聞いてくれなかった。
「なら、真に決めてもらおう。」
「望むところよ。」
なにやら、知らぬ間に話が進んでいた。
「 真!」
「は、はいっ!」
急に呼ばれたのでびっくりした。
「これから、私と友紀。どっちが真にふさわしいか勝負するから。」
「勝敗はどうやって決めるの?」
真紀ちゃんがニヤッと笑った。
やべっ、聞くんじゃなかった。
「夜、私達が真の部屋に行くから、その時に真が可愛いと思った方の勝ち。私達は何してもいいの。」
なるほど、全ては俺にかかっていると。
「って、ちょっと待て。なんで、俺の部屋でするんだ?」
「んー、なんとなく?」
まじか。特に理由もないのか。
「とりあえず、12時から始めるから。」
「真君は、部屋にいてね。あと、寝ないでね。」
「えっ、俺って今日、寝れないの?」
『当たり前でしょ。』
まさかのハモリ。
「大丈夫だよ。勝負が終われば、すぐ寝れるから。」
「そうだぞ。痛くないから大丈夫だ。」
「俺何されるの!?」
俺は恐ろしくなって、後ずさりした。
逃げようとしたら、両腕を掴まれた。
『今夜は、寝かせないぞ♪』
あぁ、今夜は長くなりそうだ。
真の叫び声は、夜の空に消えていった。