変わらない日常7
「柚と話してると年上と話しているみたいだわ。姉さんとも義兄さんとも違うし、誰に似たのかね?」
柚姫は何とも言えず苦笑を浮かべる。その言葉は的を射ている。
けれど、それは利保が相手だからであり誰に対してというわけでもない。
利保からすると頼りになる妹のような感覚らしいが、それは人によって大きく印象が違う。
柚姫は誰に対しても反応が平坦なので一見わかりにくいが、かなり排他的な性格で懐に入れるものとそうでないものがはっきりしている。
昔から自他共に認める反応の鈍さで、ふと口に出す言葉は子どもらしくないと言われ、祖父母からはあまり可愛がれる方ではなかった。
柚姫自身は特別嫌いというわけではなかったが、思い入れが少ないとでも言えばいいのだろうか。
それ故に祖父母か利保どちらに味方するかといえば断然利保を選ぶ。
そして、利保することに対しても甘い。
利保自身もそれを感じているのだろう。昔から割と心の内を柚姫にさらけ出して話すことが多かった。この点については姉と妹の立場は逆転していたと言えるだろう。
「そういえば3ヶ月って言うけど、つわりとかは大丈夫なの?」
つわりの時期がいつからいつまでかは柚姫はよく知らないが、さっきからもりもりと食欲旺盛でそんな素振りは全く見られない。
「ああ、先月までは、しょっちゅうトイレに駆け込んでもう吐くは吐くは大変で、もうヘロヘロだったけどね。今は落ち着いてるみたい」
「そっか、大変だったんだね」
「そうなのよ!もうその間全然食べられなくて体重5キロも減ったわよ。今までの人生で食べたくないなんて思ったこと一度もなかったから衝撃だったわ」
確かに過去を省みて利保の食欲が衰えたところを見たことがなかった。ある意味貴重な体験だったのだろう。利保は感慨深いといった様子でそう語る。
「食べられるようになってよかったね」
「ふふ、最高よ!」
そう言ってニコニコ笑う利保は幸せそうだで柚姫も嬉しい気持ちになった。
「ふぅー。いやー、なんか安心したわ。いろいろ相談したくせに何も言わずに出てっちゃったからさ。余計な心配をかけたなと思ったし、流石に怒ってるかなとも思ってたんだけど全然なんだもん。かなわないわ」
ふっと肩の力を抜いて困ったように利保が言う。はじめからずっと笑っていたが、実は気を張っていたらしい。
「心配はしたけど怒ったりしないよ。ただなんとなくそんな予感はあったかな。結構煮詰まってたみたいだからそのうち爆発するかもって。でも、止める理由も思いつかなかったから」
「そこまで、お見通しだったのか。ホントかなわないわ」