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思い出に変わる日常4

 ウィリアの言葉を聞いてから数日後、キーラが治癒魔法の特別講座に行く日のことだ。

 先週同様にギリギリまでおしゃべりに興じ、時間になってキーラたちが去りルーディとリルはその場に残された。

 教室内に残っているものもちらほらいたが、数分もすれば教室も空になるだろう。


 そんな時見知らぬ男がやってきた。


 扉をくぐってきたのは紺色の魔法学院の制服に身を包んだ精悍な顔立ちの男だった。その男はこちらを見つけて迷い内足取りで近づいてきた。そしてニカッとさわやかな笑顔をこちらに向けた。


「やぁ、レオ君!初対面ではないが面と向かう初めてか?そしてリル嬢は完全にはじめましてだな!俺の名前はグラン・ディルダードだ!」


 堂々とと名乗り上げた男はばっと手を差し出した。そしてふたりの手を取って熱い握手を一方的に交わす。いきなりのことにリルは目を瞬かせる。


 隣を見ればレオも少し面食らった様子を見せたあと、ふと思い出したように問いかけた。


「確か、2年前フィフィリを追っていた騎士ですよね?まさか同年代とは思いませんでした」


「ふむ、そうか?」


「同年代に騎士になった人ならキーラやダイランから名前を聞いているはずなので」


「はは!それは当然だ、俺は基本情報収集を主としている!故に名前が表にでることなどありはしない!」


 グランはいい笑顔で断言する。”追っていた”という不穏な言葉が聞こえたが、グランはそんなことは微塵も感じさせない。

 話から察するにビルズ側の人間ということだろうが、何をしに来たのだろうか。リルの警戒をよそにグランはマイペースに話を進めた。


「挨拶も済んだことだし本題に入ろう!これを君に読んでもらいたい!」


 グランは胸ポケットから何かを取り出したレオに差し出す。

 差し出されたのた白い封筒である。レオはそれを押し付けるように渡され受け取った。グランそれを見て満足そうに笑う。


「読んだら返事はジェミクスの方へお願いする!俺の要件はこれで終いだ!それではまた会えたら会おう!」


「は?」


「え?」


 一方的に話を終わらせグランは爽やかな笑顔の後、くるりと背を向けて堂々と去っていく。呼び止めても手を振るだけでそのまま教室から出て行った。


「なんなんだ、あの人」


「悪い人には見えませんが・・・変わった人ですね」


 互いに目を見合わせたあと視線を封筒の方に移す。レオのため息が聞こえる。そして封筒を裏返した。


「ビルズ隊長からだね」


 そこには第3部隊隊長の印が押されていた。レオはためらいなくそれを開けて中に入っていたい一通の手紙を開いた。レオは読み終わるとリルに見せてくれた。


 そこには”ダイランと最後の決着の場を設けるがどうするか”と書いてあった。


「どういうことですか?」


 簡潔すぎて逆に意味がわからない。リルが聞けばレオは少し困ったように笑う。だが直ぐに返事をした。


「差し出し人はビルズ隊長だけど発案は多分ダイラン君だね。”ルーディ”とダイラン仲は別に悪くなかったけど、マオ博士のやったことで色々とこじれて最後までそのままだった。ひどい終わり方だったからダイラン君からしたらたまったものじゃないだろうね。だから俺がここに来たのを利用して決着を付けようと思ったんだと思う。さすがダイラン君だ」


 褒めているようで貶めているようなよくわからない発言である。


「聞いてもいいですか」


「うん?」


「キーラが関係しているんですか?」


 リルの言葉に困ったように笑い肩を落として溜息を吐いた。


「うーん、無関係じゃないね。今思えば恋愛的な展開があっても良さそうな感じなのに、全く望めないのがキーラだなってしみじみ思うよ」


 茶化すようにレオが言う。そして真剣な面持ちで静かに尋ねた。


「聞きたいかい?」


 彼らのスタンスは基本的に聞けば答えるというもので、聞かれなければ詳しくは答えない。それはそこに何かあることを言外に示していた。


 キーラからダイランの事を聞いて、そのあとの成り行きを見ていると関係性はなんとなく想像できる。 けれど彼らの会話には彼女がいなかった。始めの喧嘩騒ぎの時は言い合いになったようだが、リルの前では一度もない。それがどういうことなのか。今更耳をふさぐ気はなかった。

 リルは、レオを見て頷いた。


「聞かせてください」


「わかった」


 そう言ってレオから語られたは2年前の召喚の時の事実だ。



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