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思い出に変わる日常3

教室からでて一番近い階段を下まで降りていけば扉があり、そこを開ければホールにつながっている。

入口のそばにいた少女がこちらを見た。


「こんにちは。公開対戦訓練をご観覧ですか?」


「こんにちわ」


「こんにちは!そうです、観覧に来ました!」


「では2階の観覧席にどうぞ」


 少女はそう言って扉を開く。リルたちは言われた通り階段を登って2階に上がる。

 2階から見下ろすとホール全体が見渡せる。広さはバスケットコート4つ分くらいで造りは体育館に似ている。

 普段ここではクラブ活動の一環として、定期的に演奏会や演劇発表会を行っている。


 キーラはあたりをきょろきょろと見回している。

 2階には手すりがあり、それに寄りかかるように下をみおろしている人間がちらほらいる。


「あれ?なんか意外に人少ないね」


「でもすいてる方が見やすくていいでしょう?」


「それもそうだね!」


 リルの言葉に納得したようでキーラが笑い、ほかの観客と同じように手すりにもたれてホールを望む。

 そんな様子にリルはほっと胸をなで下ろす。


 人が少ないのは当然だ。これは公開対戦訓練ではない。本当は騎士入隊試験対策というものだという。


 物質系魔法学科の3年生のうち、騎士試験を受けることが決まっている人間のために設けられた魔法による対戦試合で関係者以外は知らない。

 この2階にいるのは今回の来年この試合に参加する可能性のある人間だけだ。


 リルたちが入れたのは入口の女性がビルズ側の人間で、レオからキーラと一緒に見に来るよう頼まれたからだ。


 ホール内に目をやると戦闘衣に身を包む人間が数人いる。戦闘衣は黒と白の2色で右と左に分かれて集まっている。みな訓練の参加者なのだろう。入念に柔軟運動をしている。


 しばらくキーラと話し待っていればホールにベルの音が鳴り響く。


『これより試合を開始します。試験番号1番―』


 アナウンスが入り二人の生徒の名前を呼ぶ。白と黒が左右一人ずつホールの中央に歩み寄る。

 5メートルほど距離をあけてその場で互いに礼をする。


 リルにとってそれは知らない名前である。だがそこで対峙しているのは名前とは別の人間である事を知っている。


 そこにいるのはダイランとルーディ。


 ダイランは黒、ルーディは白の戦闘衣に身を包み対峙していた。


 リルは隣にいるキーラを見た。キーラは驚くこともなくワクワクした様子でただ試合開始を待っている。


 ここにいる人間にはホール上の二人がルーディとダイランには見えていない。投影魔法によって名前通りの人物に見えているのだ。

 そして名前の人物当人は逆に透過魔法をかけられており、他から認識できないようにしている。


 見た目はその場に2人しかいないように見えるが実際4人いるが見えるのは2人だけ。ペンダントは攻撃性のないものは弾かないようでリルから見ても別人だ。


 マオベリスタの柔軟性と許容範囲を考慮した結果、これが最良と判断されたという。

 なぜそのような面倒なことをしたのか。


 それは”ルーディ”とダイランに最後の決着の場を与えるためだ。


 マオの宣言後、穏やかに日々が過ぎていった。それ確かである。だがそれはそれ以前との比較であって何もなかったわけではない。


 ダイランがレオのところに乗り込んだ日一週間。ダイランとは毎日顔を合わせることになった。

 それはビルズが様子を見に行くよう指示したからであり、ダイラン本人の意思ではない。本人の言い分である。


 その度にレオもこちらに顔を出し、挨拶のように口喧嘩をしていた。

 あくまで口喧嘩で直接攻撃はしてこないのである意味平和であった。その理由としては喧嘩の仲裁に手段を選ばないウィリアの存在が大きかったとも言える。


 リルとして二人の間には何かある。互いに嫌いではないがわだかまりのようなものが存在し、それはキーラの存在が関係しているということがは見ていてわかったいた。

 それについてウィリアはこう言った。


『二人とも頑固ですからね。”対話”では終着点が見えないとわかっているからほかの終着点を探しているんでしょう。場所さえ考えてくれれば文句は言わないんですがね』


 

 慣れた調子でため息を吐いた。マオベリスタであった人間の中で一番年下のはずなのになんだかんだで一番苦労していそうだ。当然小鳥姿なのでなんだか余計に物悲しい。


 リルはウィリアの言葉の真意がよくわからなかった。でもきっとリルには見えなくてウィリアに見えるものがあるのだろう。リルはそう思って彼らの様子を見守ることにした。


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