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マギィちゃんファンクラブ-クラブ活動ファイル

本編ではありません。番外編です。

主要キャラは出てきません。

プロローグ



 誰が始めたのは定かではない。表立った活動もなく、また学校から正式にも認められているわけでもない。けれど魔法学院の人間の間では誰もが認識しているクラブが存在した。


 そのクラブは“マギィちゃんファンクラブ”。

 別名マギルタ・スノーを陰ながら見守る会である。


 知らないのは一部の新入生とマギルタ本人ばかりである。


 非公式にして確固たる形を持たないそのクラブは自称すれば誰でもなれるもの。

それ故にまとめる人間はいない。けれど、暴走する人間はおらずマギルタの周りは驚く程平和である。

 なぜなのか。それに気がついているものいない。


 物質系魔法科3年生グラン・ディルダードは誰もいない空き教室である手紙を読んでいた。

 グランはその手紙の一文に目を開いた。


「なんだと?!」


 グランはそう叫び、その手紙手に慌てて教室を飛び出した。











1.お見合いの前日、ふたりの会話



 やってきたのは写真クラブの備品室。グランはその扉をためらいなく開けた。


「ルシア!ここにいるか!?」


 狭い部屋の戸棚の前に、金色の長い髪を左右の高い位置に結った少女が座っている。

 少女は膝の上カメラを載せ布でレンズを磨いていた。少女は驚く様子もなくただ視線だけグランの方にずらす。


「グラン。扉は静かに開けて頂戴、で、何?」


 エメラルドの瞳でグランを冷たく一瞥した。少女の名前はルシア・ピリカ。精神系魔法科3年生で、グランとは赤ん坊の頃から一緒の幼馴染である。写真クラブの代表をしている。


「これを見てくれ!」


 前置きもなく差し出された手紙にルシアは眉をひそめる。

 文句のひとつでもいいたいところだ。だがグランの深刻そうな表情を見てカメラを横にある台の上において素直にそれを受け取って目を通す。


 そこにはなんだか丸っこい字体でこう書かれている


“我らが女神、父神の命によりとある男と相まみえる。”


 それ以外は暗号のような文章で読めなかった。ルシアはものすごくバカにした顔でグランを見た。


「なにこれ?」


「密書だ!」


 真面目な顔でそう返されてルシアはしばし沈黙した。そして思い当いいたって顔をしかめた。


「・・・もしかして例のクラブのやつ?」


「そうだ!我らが女神の最新情報を記されている!」


「で、なんて書いてあるの」


「要約すると我らの女神が明日見合いするということで、その詳細が書かれている!」


「それって犯罪じゃない?」


 ルシアが胡乱な眼差しを向けるが、グランはきっぱりと否定する。


「我らは彼女を見守ることを目的としている!我らは決して彼女の不利益になることはしない!」


 堂々と言ったからとしてルシアとして犯罪予備軍である。だが言ったところでこの男は理解しないだろうということは長年の付き合いで分かっている。

 ルシアはその先を促した。


「で、見守る人はこの情報を私に見せてどうしようって言うの?」


 手紙を返しながらそう言うとグランは真剣な顔で語りだした。


「我らの活動はあくまで見守ることにある。だが、必要とあらば力を振るうことをじさない!この情報が他の物に漏れたとき、しかるべき対応を取るために、俺は今回の件の詳細を知っておく必要がある!」


 グランは高らかにそう演説する。

 一見頭のおかしな人のようだが、一応言っていることは筋が通っている。

 確かに今回の件を放っておくのはあまり得策ではない。


 マギルタの人気は異様とも言えるもので、学院の一職員という範囲を軽く超えている。


 これについてはある出来度に起因するのだが、長い話になるので割愛するが、とにかく人気が高い。

 その人気は純粋な憧れ親しみもあれば、並々ならぬ情熱やちょっと歪んだ想いを抱く人もそれなりにいるわけである。


 このグランという人間は意外にもそういう心理に敏感で、幾度と危険を察知しては食わぬ顔でそれ

を未然に防いできた。

 そしてマギルタについても本人のことだ通り、あくまで一ファンであり、恋愛的な感情はないようである。


 マギルタの周囲で何事もなく過ごせるのはグランのおかげといっても過言ではない。これまでの実績により教員たちからも信頼は厚く、この件はグランに一任されている。


 それゆえにこの件はこれまで理想的に保たれている状況が一気に崩れる要因である、熱狂的なファンが何をするのかわからない。

 だが、ルシアとしてはそんなことはどうでもよかった。


「で、私にどうしろと?」


「お見合い会場に潜入する!だが場所が場所ゆえにひとりで行くとかなり浮くだろう。だからお前にもついてきてほしいのだ!」


 グランが真摯な顔ですっと手を差し出された。誘われたのにルシアとしては全く嬉しくない。


 だが多分断ったところでこの男は不思議そうな顔で「なぜだ?」など返してくるのだろう。腹の立つことだ。ルシアはどうにかこらえて眉間のしわを揉みほぐしながらため息をついた。


「無理だと思ったらすぐ帰るから。それといっとくけど、貸しだからね」


「さすが、わが友!そうと決まれば手はずを整えて置かなければ!!」


 グランはルシア親指をビシッと立てて爽やかな笑顔で備品室を去っていく。過ぎ去った嵐の後ろ姿が見えなくなって、ルシアは再びため息をこぼした。

 


 明日ちょっとした騒動に巻き込まれることになることは、ルシアは知らない。










2.ドレスアップと華麗なる変身



 グランとルシアはロージー記念庭園というところにやってきた。

 先代の王妃の婚姻の際一族が作った場所で、魔法で常に一定の温度を保って一年中美しい花を咲かせている。


 庭園の中央にはレストランがあり、お見合いやデートによく用いられる場所の一つである。

 格式の高い場所で、ここではドレスコードがある。


 ドレスコードはフォーマルでそれを守らないと入らない。


 今のルシアは瞳と同じエメラルドのドレスに身を包み、白いかかとの高いヒールを履いている。左右にくくった髪は今複雑な編みこみを施されて左右に白い花が飾られている。


 薄化粧を施された面差しは良家の子女と言われても違和感もないものになっていた。


 全て貸衣装で揃え髪や化粧はグランが施した。


 なぜそのようなことができるのかは、“グランだから”ということで自己完結するルシアである。


 グラン自身もグレーのシンプルな礼服で、いつもなんの手も加えていない黒髪をサイドに流すように固めている。言われなければ十代とは気がつかれない大人っぽい雰囲気である。


「女神を発見!ルシア、このままとなりの空いているテーブルを陣取るぞ!」


 店に入って席を見渡すとグランがすぐにそう声を上げた。


 見てくれをよくしても発言で台無しである。だが付き合いの長いルシアはため息を吐く。


「声がでかいわよ。もっと抑えて頂戴」


 ルシアの注意にグランも素直に頷く。ふたりはマギルタの座っている隣のテーブルにつく。一応簡易的な仕切りがあり姿はちゃんと見えないが声はちゃんと聞こえてきた。


「ここのパンはとても美味しいですね。つい食べすぎてしまいそう」


 マギルタの柔らかい声聞こえた。


「そうですね。柔らかくておいしいです。濃いめのスープにすごく合いますね。マギルタさんは普段どのくらいの頻度でお食事をされますか?」


 これはこちら相手の男性だろう。優しそうな声だ。


「そうですね。基本としてあまり魔力を使うお仕事ではないので、二日に一度くらいで大丈夫です。でもお料理が好きなので作りたいときに作って学院の生徒さんたちに配ったりしますわ」


「そうなんですか。僕はあまり器用な方ではありませんがスープだけは自信があります」


「まぁ!それは飲んでみたいですね。もしよろしければ一緒にお料理しませんか?それで、お父様たちを呼んで食事会をするのはどうでしょう?」


「それはいいですね!うちのおじい様も呼んでいいでしょうか?」


「もちろんです!きっと楽しいです」


 和やかで、お互い打ち解けた会話にグランとルシアは互の顔を見合わせた。


「これは」


「ふむ、これはもう決まったようだな」


 顔は見えないがもうカップルと言われても疑わない会話に見合いが成功していることを察する。


「で、どうするの?」


「ふむ、会話からして身内同士の付き合いもありそうだ。お互いよしとすれば、比較的早くに結婚という流れになるだろう」


「それが分かればもうあとは何もしようがなくない?これ以上ここにいる意味あるの?」


 少し考える素振りをしているとマギルタが席を立つ。いつものみつあみを解いて水色のドレスをきこなしたマギルタは誰が見ても魅力的な女性だ。


 ルシアは相手の顔が少し見てみたかったがルシアが座った席からでは見えない。

 多分、グランからは見えているのだろう。視線がずっと隣の席のほうに向いている。流石に見過ぎじゃないかと諌めようとすると、唐突にグランがルシアに視線を向けた。


「ルシアよ!」


「・・・なによ」


 ルシアは嫌な予感がした。


「急遽任務が入った!協力を頼むぞ!」


 そう言ってグランは手を掲げ、魔力を貯める。


「投影魔法グラン・グラス!」


 止めるまもなく放たれたグランの固有魔法にルシアが驚いていると、グランが満面の笑みで親指を立てた。


「よし、ルシア。お前は今から30分間は女神だ。女神の足止めは任された!」


 そう言ってグランは足早のその場を去っていった。


「ちょっと!グラン!?」


 唖然としたルシアが叫んで立ち上がると後ろから声がかかった。


「あれ、そんなところでどうしたんですか?」


 そう呼んだのは青年。

 声から察するにマギルタの見合い相手だ。ルシアは思わず自分の体を見下ろした。そこには水色のドレスに包まれた自分よりもだいぶ豊満な胸。そしてその上にかかった亜麻色の髪。鏡がないからわからないその必要もない。


「どうかしましたか?マギルタさん」


 青年の目には自分がマギルタに見えるという。グランのかけた魔法はそういう魔法のようだ。











3.身代わりと乱入する残念な男



 グランのやつ、絞め殺す!


 物騒な内心をよそに、ルシアはその顔に上品な微笑みを浮かべる。


「何でもありません」


「そうですか。食事も終わりましたし少し外を散歩しませんか?」


「は、えっと」


「先月から庭園に新種の青い花が植えられたらしいですよ。マギルタさんは青がお好きと言っていったので、見に行きませんか?」


 人好きのする控えめな笑顔に否を答えるすべもなくルシアはうなずいた。


 言い訳するならグレンが30分といえば絶対30分足止めをする。その間見合い相手の青年をほうっておいて万が一見合いがご破産になったら責任を取れない。


 内心冷や汗をかきながら散歩に行くことが決定してしまった瞬間である。



 庭園に出れば美しい花が目に入る。ルシアはそれどころではない。

 ルシアの隣を横目で盗み見る。


 マギルタの見合い相手の名前はフェオル。グランに事前に聞いていたのはその名前だけである。

 中肉中背で、容姿が飛び抜けていいわけではない。だが大抵の人間は彼と合えば好意的な印象を受けるだろう思われる青年だった。

 一言で表するのであれば癒し系である。


 けれど今のルシアはそれどころではない。フェオルはルシアの方を見て微笑んだ。


「とても綺麗ですね。そういえばここにいらしたことはありますか?」


「いいえ」


「そうなんですか。僕は子どもの頃に一度連れてきてもらったことがあるんです」


「そうなんですか」


「小さかったので花の迷路みたいで迷子になって叱られました」


「そうですか」


 ルシアのそっけない言葉にフェオルは少し寂しそうな顔をする。


「僕は、なにか失礼なことをしてしまったでしょうか?よく友人に鈍いと言われるのでもし不快させてしまったのであれば遠慮せずに言ってくださいね」


「そ、そんなことないですよ?ふふふ」


 ルシアは自分のボキャブラリーの貧困さをなげきつつ、ごまかすように笑った。グラン相手ならいいがそうじゃないので無愛想ではいられない。普段使わない部分の表情筋がつりそうだ。

 

「マギルタさん!」


 後方からまた声がする。

 二人で振り向けばその視線の先の人物に目を見開いた。


 そこに立っていたのは白い礼服に身を包んだ、長身痩躯の金髪碧眼の美形だった。

 男は満面の笑みでルシアに向かってくる。


「マギルタさん!こんなところにいたんですね。さぁ僕と行きましょう!」


 そう言ってルシアの手を取ろうとする男の手をフェオルが阻む。そしてマギルタを庇うように前に立ち口を目の前に人物の方を見上げる。


「どなたか存じませんが、彼女は僕と見合い中です。どうかお引取りを」


 ピンと背筋を伸ばして青年にやんわりと釘を刺す。

 ふわふわしているようで意外に芯はしっかりしているようだ。


 ルシア混乱していると男が嘲るように笑った。


「僕のお父様は王家に使える大貴族だ。調べたところ君は大した家柄ではないみたいじゃないか。僕の邪魔をするなんて身の程を知るといい」


 この男は馬鹿なのだろうか。とうに成人していそうな男の発言はまるで子どもだ。ルシアは胡乱な目で青年を見た。

 誰だか知らないが見た目が良くてもこれではどうしようもない。だが世の中には権力に屈してしまう人もいる。


 そう思いながらルシアが様子を見守っていると、フェイルはうろたえることなく静かにはり返す。


「もう一度言います。お引取りを。でなければしかるべき行動を足らせていただきます」


 フェオルの言葉を青年は鼻で笑った。


「どうする気だ。なにも持たない凡人が」


「親の権力を振るわないと何もできないあなたのは言われたくはありませんね」


 にこりと笑ってフェオルがいう。見た目の割にやるなと思っていると一拍遅れてその言葉を理解したらし青年が怒りを顕に手を振りあげる。魔力がその手に収束する。


「下民が!」


 その手が振り下ろされたその瞬間、魔力激しくぶつかる音が聞こえた。ルシアが思わずつぶった目を再び開けば土煙が広がっていた。

 唖然としていると、目の前にいたフェオルが何事もなかったかのように微笑んでいる。


「大丈夫ですか?」


「は、はい。でもあの人は?」


 そう言って視線をずらせば、5メートルほど先に吹っ飛んだ青年がいた。白い服はもちろんボロボロである。

 ルシアの様子にフェオルは笑みを浮かべる。


「大丈夫ですよ。ただ魔法を相殺しただけですから、数分もすれば目が覚めるでしょう」


「はぁ」


 生返事をしたルシアにフェオルはまた笑う。


「君たちのおかげでマギルタさんを巻き込まずにことを終えられました。どうもありがとう」


「・・・は?」


 何の話だろうかとフェオルの顔を見上げる。


「グランくんはお礼はいらないといっていたけど、ささやかなお礼を用意してあるんです。ぜひ楽しんでいってください」


「は?え?」


 ルシアが混乱していると後ろから呼び声がかかる。


「すみません。部下が呼んでいるので行かなくては」


 そう言って駆け出したフェオルがす、少し先で振り向いた。フェオルの周囲の魔力が揺らぎ、その姿は別人になる。

 そして先程とは全く違う色を備えていた。


 そこにあるのは赤。燃えるような紅い髪だ。

 そして輝く猛禽の瞳に笑みを浮かべてルシアに告げた。


「名乗るのを忘れていましたね、僕の本当の名前はヴァル・ダークです!結婚式にはお呼びしますね、ルシアさん!」


 去っていく後ろ姿と、吹っ飛んだ青年を担いで運んでいく男たち。


「・・・どういうこと?」


 取り残されたルシアは呆然としながら呟いた。ルシアの疑問に答えてくれる人物との再会はもう少し後のことである。

 










4.お礼の食事はは良い食事、結果よければ全てよし



 ルシアはふてくされた顔でグランと向かい合って席に座っていた。二人ともまだドレス姿のままである。


 テーブルの上には食べ終わった料理の皿があり、給仕の女性が慣れた手つきでその皿を下げていく。


「まだ怒っているのか?女神の邪魔者は消えて二人は結ばれ、そしてファンクラブの人間たちには相手がヴァル殿だと知れば下手に何かする人間はいない。いい事づくしだろう?」


「そういうことじゃないってのよ」


 分かっていないグランにルシアは睨む。

 ヴァル・ダークとは王国騎士団第3部隊隊長ギル・ダークの兄にして竜人族の純血種の家の当主である。彼を知らない人間は世界の端っこの方に住む人間くらいである。


 マギルタの父とは旧友で、あの男がマギルタの周囲をうろついてあの男のことを相談しに来たそうだ。


 なんでも直接手を出さず後をつけたり、写真を撮ったりしているようで、気味が悪いがマギルタ自身は警戒心が薄く父としては心配だったそうである。


 ならばおびき寄せようという話になり、お見合い話を持ち出した。外見と名を偽ったのは相手が出てきやすいようにということらしい。流石に貴族と言えど、竜神族の長に手を出す人間はいない。


「つまるところ私を身代わりにしたってことでしょう?殴っていい?」


「殴られるのは嫌だな。だが、ヴァル殿は身の安全は保証するといっておられたからな。そう怒らなくてもいいだろ?」


「事前に行ってもらえれば私だって怒らなかったわよ」


 冷やかに、見やればグランが肩をすくめた。


「俺もこの話を持ちかけられたのは会場についてからだからな」


 グランの言葉にルシアは眉を寄せた。


「どうやって?」


「ヴァル殿が魔法で俺にだけ話しかけてきてな。竜人族の一部だけ持っている魔法能力だそうだ。その時に詳細を聞いたのだ。だからお前に話す時間はなかった。それからヴァル殿は我々ファンクラブのことをご存じだったようでな。知られていることには驚きはしたが竜人族のおさなら知るすべもあるだろうとおもってな。それに、女神のことを思うならどうか協力してくれないか、といわれて断るという選択肢はないだろう?」


 それを聞いてルシアは渋面をつくった。

 あの時グランの視線がずっと隣の席のほうに向いていたのはそのせいかと思い至る。


 言っていることは筋が通っているがグランの独断に巻き込まれたのには変わりない。そしてヴァルも散歩中に説明してくれても良かったのではないかと思う。

 特にヴァルは知っていてああ話しかけてきた事を考えると、明らかに戸惑うルシアを面白がっていた。

 腹立たしい。


 だが、さすがにレストランでなおかつドレス姿で暴れることはしない。


 今ここにいるのは、先程ヴァルが言っていた今回のお礼である。運ばれて来た料理は確かに美味しかった。

 そして直ぐにデザートが運ばれてきてテーブルの上に並べられる。


「ヴァル殿のお心遣いだ。そんな顔しないで目の前の食事を楽しもうではないか!」


「どの口が言うの。・・・まぁ、食べ物には罪はないけど」


 目の前に置かれたのは色とりどりのミニケーキ。美味しそうなケーキの罪はない。クリームたっぷりのすケーキを取り皿にとって、フォーク切って口に運ぶ。

 思わず口がほころぶ。


「うまいか?」


「・・・うまいわよ。でも許したわけじゃないわよ」


 ルシアがやけくそのように言えばグランが頷いた。


「ああ分かっている。ルシア。なんでも言ってくれ俺ができることなら何でもするぞ」


 ほほ笑みをたたえてでそう返された。真面目な顔をされると今日の格好も相まってなんんだかちょっと直視しにくかった。

 ルシアはグランを見ずに拗ねた口調で告げた。


「こき使ってやるから覚悟しなさい!」


「おお、任された!」


 気持ちのいい返事にルシアはひっそり苦笑する。




“惚れた方の負け”まさに今のルシアにふさわしい言葉だった。






 後日マギルタの結婚が正式に決まり、その事実は学院内に瞬く間に駆け巡った。


 反応はそれぞれだったが、至っては平和に祝福された。


 その情報を流したのが誰なのか。知っているのは流した人物たちだけである。


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