世界を繋ぐ第一歩7
竜人族とはこの世界では名の知れた一族である。外見はジェミクスのように、みな赤い髪と猛禽のような瞳をしている。
肉体の基本的な造りは人であるが、人よりも丈夫で魔力が群を抜いて強い。さらにドラゴンの持つ特殊能力を持っており、その最たるものが”魔眼”である。
”魔眼”というのは瞳そのもののことではなくその奥にある魔力を感知する器官のことである。こに相当する器官は人にもあるがドラゴンと比べるとだいぶ貧弱である。
多くのドラゴンは視力が低いため、代わりに魔力を細かく分類し、物質の形や色を感知する能力が発達したのだと言われている。
そのため、竜人族は先天的に魔力の感知や操作能力が非常に高く、ほとんどの竜人族はどの機関でも高い地位についている。
そういう背景もあり、キーラは疑問を口にした。
「竜人族で学校に勤めてるのって珍しいね。ギル隊長とか親戚だったりするの?」
「すみません。わたし見た目竜人族ですが中身は人と変わらないんです。それにギル隊長と親戚なんて恐れ多いですよ」
オロオロとしながらジェミクスは首を振って否定した。
ギル・ダーク。
彼は竜人族の出で、王立騎士団第3部隊の隊長である。王立騎士団第3部隊は昔から王都周辺の警備を任されているため、ほかの騎士団により国民と直接関わることが多い部隊である。
ギル・ダークは非常に豪快で陽気な性格で市民からの人気が高い。マーティアとまた違って身近なヒーローとして支持されている。特に子どもや男から兄貴的なあこがれを抱かれる存在である。
ジェミクスは同じ竜人族として劣等感があるのか、あまり顔色がさえなかった。だが、キーラはそれに気づいていないのか、むしろ思い至らない様子だった。
「そうなんだ。でもここも就職するの結構大変らしいって聞くから充分すごいんじゃないの?」
あっけらかんとした様子でそう言ったキーラにジェミクスは少し驚いた様子で瞬きを繰り返した。
「そ、そうですか?」
「うん。特別図書閲覧室は代々才色兼備しか募集してないって聞くし」
「そんなことはないかと・・・マギルダさんは確かにそうかもしれませんがわたしはそんなことないです」
「そう?でも赤い髪と金の目ってすごく綺麗で可愛いから早々にファンクラブができると思うよー?」
キーラはからかうでもなく、当たり前な様子でそう言った。なんのてらいもない褒め言葉の数々にジェミクスの顔は真っ赤に染まり、恥ずかしげに視線を揺らした。
そんな様子にキーラは不思議そうに首をかしげた、褒めている自覚もないらしい。
「どうしたの?」
「な、何でもないです」
ジェミクスはか細い声で恥ずかしげにそう答えた。
ニコニコと笑うキーラと顔を赤くしたまま少し嬉しそうに微笑むジェミクスにリルは苦笑を浮かべた。
キーラは人を垂らす才能がある。
竜人族であるということは普通以上の能力を持っているのが一般的な認識である。
ジェミクスの容姿は受け継いでいるが力はそれに比例しなかった。それは多分謙遜ではないのだろう。見るからに自身のなさそうな様子で、褒められ慣れていないのがよくわかる。
たぶんそのせいで周りからいろいろ言われてきたのだろう。
そこになんの裏もないキーラの褒め殺しである。とても恥ずかしいが悪い気はしないだろう。
和やかな雰囲気の中、キーラが声を上げた。
「あ、そうだ名前言ってなかったね!私、キーラ・ジェイル!」
そう言って元気良く自己紹介した。リルもすっかり失念していたことを思い出しキーラに続いて名乗ることにした。
「私はリル・リトルです」
少し目を見開いてこちらを見た。一瞬その瞳が揺れ何かに驚いているように見えた。それをリルは不思議に思ったが、問いかける前にジェミクスは微笑みを浮かべた。
「キーラさんとリルさんですね。どうぞよろしくお願いします」
ジェミクスがお辞儀をすると耳元で声が聞こえる。
『授業10分前です』
姿は見えないがウィルの声である。
「あ、もうそんな時間?」
「もう教室に戻ったほうがいいわね。ジェミクスさん、また来ますね」
「あ、はい、ご利用お待ちしてますね」
「んじゃ、ジェミィちゃんはマギィちゃんとこれ食べて頑張ってね!」
キーラはジェミクスに紙袋を押し付けて駆け出した。それはカフェテリアで買った差し入れである。
驚いてオロオロしているジェミクスにリルは「キーラからの差し入れです」と言葉を添えてそのあとを追った。
追いついた先にいたキーラはいたずらの成功した子どものように笑っていた。




