世界を繋ぐ第一歩5
作業着から制服に着替えたリルはキーラに誘われてカフェテリアに来ていた。廊下と同じくガラス張りの窓がキラキラと光って眩しいが今日は雲が多く浮遊城は見えない。
ルーディは魔石の入った木箱をハントに届けに職員室へ向かったのでここにはおらず、リルはキーラと向かい合って楽しくお茶をしていた。
「んー!おいしい!」
向かい座るキーラが幸せそうに笑う。キーラが食べているのはキーラが食べているのは白いスポンジに淡いピンクのクリームとベリー系の果物でデコレーションされた小さくて綺麗なケーキである。
ここのカフェテリアは精神系魔法科3年生の薬学研究専攻クラスによって栽培された薬草から抽出した魔法薬を使って調理した飲食物が販売されている。
授業の一環なので値段が一般よりも安くのだが、味にも定評があるので大変人気がある。生徒だけでなく王立研究院の人間にも解放されているので、いつも繁盛しているそうだがさすがにまだ朝といっていい時間にカフェテリアを利用する人は少ない。
そんな時間にリルたちがこうしてカフェテリアにいるのは理由がある。この学校のシステムとして、実技のあとは魔力が消費することを踏まえて、クラスの魔力の平均値から算出された回復時間分だけの休憩が与えられている。
ほかの授業との兼ね合いもあるので基本1時間以内であるが、お茶をするには十分な時間である。
リルの目の前にも同じケーキが置かれておりフォークを差し入れ口に運ぶ。
「ほんと、おいいしわね」
「でしょー!」
リルの言葉にキーラはまるで自分のことのように誇らしげに笑うのでつられてリルも笑顔になる。なんだかいろいろなことがどうでもよくなるくらい平和を感じる。
「そういえば、今日、特別図書閲覧室に行ったんだよね?マギィちゃん、あ!マギィちゃんていうのはあそこの職員の人の愛称なんだけど、もう会った?」
「うん。利用者登録してもらったわ。優しくて綺麗な人よね」
「ふふ、うちのクラスのファンが多いんだよ。それにしても、よかった。もう来てるんだ」
キーラが安心したようにホッと息を吐いた。リルは首をかしげた。
「どういうこと?」
「私が一昨日行ったとき、ほかの人が臨時で受付にいて、急病でしばらく休むって聞いたから心配だったんだよね」
リルは今日あったマギルタの姿を思い出すが病み上がりといった様子は見られなかった。
「お元気そうに見えたけど」
「そっか、もしかしたらそんなにそんなにひどくなかったのかな?ちょっと今日よってみようかなー?そういえば調べ物って言ってたけど終わったの?今日はもう寄らない?」
キーラは矢継ぎ早にそう訪ねてきたのでリルは諌めながら少し考えた。調べ物は正直に言えば終わっていない。その内容についてキーラのどう説明しようか悩むところであるが、どうせ行かなくてはならないだろうから素直に頷くことにした。
「一緒に行くわ」
「やった!じゃ、今から行こうか!」
「いまから?時間大丈夫かしら?」
「平気!平気!次の時間は閲覧室からすぐそこだし!」
そうと決まればと言ってキーラは立ち上がってリルの腕を引き出口までやってくると、なにか思い出したかのように立ち止まる。
「ちょっと待っててね!」
閃いたといった表情でカウンターまで駆け寄った。何をするのかと思えば直ぐに袋を下げて帰ってきた。
「それは?」
「差し入れのパンケーキ!じゃ、行こっか!」
明るく子供っぽい仕草でそう言ったキーラに再びリルは手を引かれた。思いのほか力強い手に驚きながらリルは微笑んで頷いた。
そして、マギルタのいる特別図書閲覧室を目指して二人で駆け出した。




