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変わらない日常2

 柚姫は身なりを整え、階段を降りて洗面所に向かう。

 両親共働きで昼間に家にいることは殆どなく、いるとしたら家政婦だが休みなので柚姫しかおらず、ひどく静かである。洗面所に備え付けられている鏡に写る顔はいつもながら暗い。


  理由は明白である。それは自分が持つある特殊な記憶のせいである。

それは他人に言えばもれなく引かれる確率の高い絵空事のような記憶。それは今と違う姿形で、ここではないどこかで過ごした記憶。


 所謂前世と呼ぶものなのだろう。その全容はぼんやりとしたものだが、それを自分の妄想だとは思わない。むしろ確信があった。

 なぜといわれても返答に困るが自分の中に揺らぐものはない。


 目蓋を閉じれは馴染み深い顔を脳裏に浮かぶ。なんの変哲もない長い黒髪に同じく黒い瞳。かつてその身に宿していた色は混じりない黒。 

 

 そして再び目蓋を開けて鏡を見る。そこに黒はない。あるのは栗色。そこに映るのは栗毛のセミロングに同じ色の瞳の少女である。


それに不満があるわけではない。だか、この憂鬱な気持ちは晴れることはないのだとなんとなく思う。


かつての記憶は眩しくて、それでいて苦しく苦い。後ろ向きに考えているわけでなくても気持ちは引きずられる。

柚姫は大きく息を吐き蛇口に手をかける。そして思いきり捻り思いきり顔を洗った。

それが柚姫の憂鬱な朝を少しでもましにするための日課であった。

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