ひとつの現実3
たどり着いた研究室の扉をそっと開く。その先には懐かしい人達がいた。
「お父様、お母様」
震えそうな声をどうにかこらえて笑顔を向けると同じく笑顔が返ってくる。
「リル、おはよう。おや、少し顔色が悪いね」
「本当だわ。大丈夫かしら熱は?」
父のテオはリルの顔に目を見張り、母のサラサは心配そうな顔でリルの熱を測ろうと、その手を額に持っていった。
そっと触れられたてはひんやりと冷たい。懐かしい母の手だ。しばらくして離れていく手が少し名残惜しい。
「熱はないみたいね。今日から初めての学校だから緊張し眠れなかったの?」
ホッと息を吐いて優しくそう語りかける母にうまく言葉が返せずリルはただ頷いた。するとサラサはリルの頭を撫ぜた。
「ふふ、安心なさい。普段人付き合いを嫌うお父様が楽しんでらっしゃるくらいですもの。きっと楽しわ」
「おや、サラサ。僕は人付き合いが嫌いなわけではないよ」
「でも、進んで交流はなさらないでしょう?出来るなら避けたいと思っていらっしゃるのでしょう?」
「どうだろうね?」
意地の悪い笑みを浮かべて追求するサラサにテオは何のことかと惚けてみせる。懐かしい掛け合いにホッと肩の力が抜ける。すると耳の横でウィルが鳴く。
『後35分です』
その声に皆一斉にウィルを見る。テオとサラサはそこで初めて存在に気づいたようでウィルをしげしげと見つめた。
「おお、それはリルの“道標”か。随分きっちりしてるみたいだね」
「あら、綺麗な色ね」
『個体識別名“ウィル”です。よろしくお願いします』
挨拶するウィルに二人は頷く。
「おお、よろしく。うん、じゃそろそろ行こうかリル。サラサ行ってくるよ」
「お母さん行ってきます」
「いってらっしゃい。楽しんできてね」
微笑むサラサに別れを告げたリルはテオのあとに続いて研究室をあとにした。




